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第18話 異世界魔王、呼び出しを食らう


 放課後になった。


 家に帰ろうとしていると、千歳と澄香がこちらへ来る。



「魔王様。本日はお家までお供いたします」


「構わんぞ。澄香はどうする?」


「あ、ごめん。今日は部活あるから、一緒には帰れないかも」


「何部に入っているんだ?」


「料理部。といっても作ってるのはお菓子だけどね。明日作って持ってくるから楽しみにしてて!」


「魔王への貢ぎ物か。楽しみにしていよう」


「楽しみにしててね、じゃあね。二人とも。また明日!」


「ではな」


「またね……」


 澄香はぶんぶんと大きく手を振り、それに対して千歳は小さく手を振り返した。



「では俺たちは帰ろう――」


「おーい、王真。お前呼ばれてるぞ」



 帰ろうとしたとき、クラスメイトの一人が俺に話しかけてきた。


「ほら、あそこ」

 

 指さした方向は教室の入口。

 そこにはどこかで見たような男が立っていた。


 はて、どこで見たかな?

 ああ、今朝見た男だ。

 確か高野という男だったか。


「魔王様に用事でしょうか?」


「どうせくだらない用事だろう」


「じゃ、俺は伝えたからなー」


「ご苦労だった」


 クラスメイトは俺に伝えた後、自分の席に戻っていった。

 

「魔王様、どうしますか?」


「話くらいは聞いてもいいだろう。どうせ帰るためにはあそこを通ることだしな」


 ということで、俺たちは鞄を持って、教室の入口へと向かって高野の元へと行く。

 

 そこにいたのは高野だけではなく、他にも数人の男子生徒が立っていた。

 どいつもこいつもがたいがよく、それでいて剣呑な雰囲気を漂わせていた。



「やあ、王真君だっけ。呼び出してわるいね」



 高野は俺の顔を見て話し始める。


「別にお前に呼び出されたからわけじゃない。単に帰るためにはここを通らなければいけないだけだ」


「ははは、面白いことを言うね。強がっちゃってまあ」


 高野は余裕の笑みを浮かべる。


「君に用事があるんだ。ちょっと来てくれないかな」


「断る。用があるならこの場で言え」


 俺が高野の言葉を断ると、横にいた男の一人が「ああ?」とまゆをひそめた。


「てめえ後輩のくせになに生意気言ってんだ? 俺らが来いって言ったら大人しく来るんだよ」


 男が凄んで言うと、まあまあと高野が抑えた。


「女の子もいるんだ。そういうのはよそう」


「ケッ。どうせこの女もお前が食うんだろ。なら一緒に連れてってパコればいいだけじゃねえか」


「おい。そういうのはここでは言うなよ。教室の真ん前だぞ? 俺のイメージが悪くなる」


「チッ」


 男は舌打ちをした後、引きさがった。


「いやー、悪いね。今のは冗談だよ。彼はこういうブラックジョークを言うのが好きでさ。ごめんごめん」


 高野は軽薄に笑いながら告げた。


「でも、どうしても君に用事があってさ。君が来てくれないと、ちょっと無理矢理になっちゃうんだけど」


「それは脅しか?」


「いやいや、脅しってほどじゃないんだけどね」


「今の言葉は脅し以外の何物でもないが……いや、面白いな。興が乗った。お前らの用事とやらに付き合ってやってもいいぞ」


 この魔王を脅すとはな。

 面白い人間もいたものだ。


 興味がわいた。

 高野という男の用事に付き合ってやるのもいいだろう。


 どうせ家に帰ったところで暇を持て余すだけだしな。



「俺はこいつらと用事とやらを済ませてくる。千歳は帰れ」


「し、しかし。魔王様。この人たちはどう考えても魔王様に危害を加えようとしています」


「そのぐらい気づいている。どのように俺に危害を加えようとするのか興味を持っただけだ」


 高野が考えていることはわかる。

 どうせ俺を呼びつけて、暴力で脅すつもりなのだろう。


「魔王様がお強いことは知っています。しかし別に彼らについていく必要はないかと」


「ふん。どうせここで断っても明日また来るだけだぞ? 明日で無理なら明後日に来る。こういう奴らは、あきらめが悪いからな。毎日相手するのも面倒だ。今日中に片付けておいた方がいい」



 普通ならば教師に相談するという手段もあるだろうが。


 しかし、先輩から用事があると呼び出されただけで対応してくれる教師がいるとは思えない。

 仮に教師が来たとしたら、高野はその暴力性を抑えてにこやかに教師に対応するだけだ。


 それに、いま教師たちはそれどころではないだろうしな。


 昨日小野田を処してやったおかげで、教師たちはいま忙しいのだ。


 小野田はどうやらあの後、見回りをしていた教師に見つかったらしい。

 発見された小野田は病院に行くことになった。


 金玉がつぶされているのだから当たり前だな。


 魔法によって治療は済ませていたから命には問題なかった。

 だが小野田は痛みと恐怖により精神的におかしくなってしまったらしい。

 今は普通の病院にいるが、後ほど精神病院に移されるとか。

 

 この話は、今朝ホームルームで小野田の代わりに来た教師が言っていたことだ。

 全て事実とはいえ、ずいぶんとおしゃべりな教師だったな。

 さすがに金玉のことについては言っていなかったが。



「俺が対応するのが最も手短だろう。なに、心配ない。俺は魔王だぞ。それともお前は俺の力に不安があるというのか?」


「いえそんな! 魔王様は誰よりもお強いと私は知っています」


「そうだろう。であるならば、不安となる要素などあるまい。お前はさっさと帰っていろ」


「いえ、私は魔王様を待ちます。何時間でも、何年でも、いつまでもあなたをお待ちしています……」


「何年も待つ必要はない。そうだな、30分で用を済ませるから、図書室で待っておけ」


「わかりました」


 千歳は俺から離れて、図書室の方へ向かった。


 俺は高野たちの方に向き直る。


「さて、待たせたな。それでいったいどこに連れて行くんだ? 30分で帰るから、さっさとすませろ」


「……生意気だな」


 高野は不快そうに顔をゆがめながら言う。


「おいおい、さっきまでの仮面はどうした? 女が離れたとたんにそれか?」


「……チッ。心配しなくてもさっさと済ませてやるよ。来い」



 高野とその取り巻き達は俺を囲むような位置どりをして歩き始める。

 俺を逃がさないようにするためだろうが……ご苦労なことだな。


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