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第17話 異世界魔王、美少女二人と昼食を食べる


 美術の時間が終わり、昼休みとなった。

 教室まで澄香と千歳と共に帰る。



「それにしても、魔王君は個性的な絵を描くんだね」


「当たり前だ。俺は魔王だからな」


「あれ? 理由になってる?」


「なっているぞ。魔王である俺は、他の者には計り知れない価値観をもっているのだ。その価値観が、絵に現れたというだけのこと」


「ああ、それもそうだね。魔王君が独特な価値観をしているっていうのはわかるな。でも価値観はおいといても、絵はとても上手だったよね」


「ほう。わかるか?」


「うん。私も絵にあんまり詳しいわけじゃないけど、あんなに恐ろしい絵は、技術がなかったら描けないと思うよ。もしかして昔描いていたの?」


「ああ。教養の一つとしてな」


「わっ。さすが魔王だ」


「当時もあのような恐ろしい絵を描いていたのですか?」


「別に恐ろしい絵が専門というわけではないぞ。いろんなものを描いていた。ペットだけではなく、風景や建造物もいろいろとな」


「へー、魔王君の絵みたいなー」

「私も魔王様がお描きになったものを見たいです」


「残念だが、今は見ることはできない」


「失くしちゃったの?」


「ああ。芸術というものは、失われるときは一瞬だ。はかないが、それもあるいみ芸術の特徴なのだろうよ」


 俺の作った絵は魔王城に保管されていたのだが、勇者が攻めてきたときに城ごと焼かれてしまった。

 とはいえ、焼かれていなかったとしても、この地球に当時の絵を持ってくることなどできない。

 だから結局見せることはかなわなかったろう。

 




 美術室から教室に帰って来た。

 俺が昼食を食べようとしたとき、澄香と千歳が俺の机の方に来る。


「魔王君。いっしょにたべよー」

「ご一緒してもよろしいでしょうか」


「かまわん。俺の机を使うがいい」


「ありがと」


「ありがとうございます! この思い出は一生忘れません!」


「それはいいすぎじゃないかなぁ」


 千歳の言葉に、澄香が苦笑する。


 二人は俺の机で弁当を広げる。


「魔王君は今日も妹ちゃんにつくってもらったのかな?」


「ああ」


「やっぱり? 美味しそうだね。芦野さんは――」


 と、澄香が千歳の弁当を見た時に固まった。


「あれ? 魔王君のお弁当とおかずが同じ?」


 澄香の顔が少しこわばっている。

 どうしたというのだろうか。


「どうして同じなの!?」


「愛華が千歳のぶんの弁当もつくったからだ」


 そう。

 今朝、愛華が俺の弁当をつくるとき、千歳のぶんの弁当も追加で作っていたのだ。

 愛華曰く、2人分も3人分も同じとのこと。


 千歳は普段購買でパンを買って食べているので、弁当を持ってきていないらしいからな。



「芦野さん。それは本当?」


「はい。大変光栄なことです。大切に食べさせていただきます」


「いやなんで魔王君の妹ちゃんが芦野さんのお弁当を!? どうしてそんな事態になっているの?」


「それを言うならば今朝のことから説明しないといけないのだが……。千歳、説明してやれ」


「はい」


 今朝のことについて千歳は説明する。

 彼女が俺の家に来たこと、朝食を共に食べたこと、愛華がお弁当を用意したこと、一緒に登校してきたこと。


「ということです」


「……ねえ、魔王君。二人って本当に付き合ってないんだよね?」


「何度も同じことを言わせるな。付き合ってない」


「ふーーーーーん。魔王君は付き合ってない女子でも、朝おうちに招いて一緒にご飯食べて登校しちゃうんだね」


 澄香はどこか拗ねたような言い方をする。

 何か言いたいことでもあるのだろうか。


「ああ。何か問題でも?」


「問題は……あると思うけど、魔王君だしなあ。あってもなくても同じことするよね、たぶん」


「ああ。他人がどう思おうが、俺の行動は変わらない。よくわかっているじゃないか。さすがは俺の配下だ」


「魔王君はそういうタイプなら、私も遠慮しないよ。付き合ってなくても朝おうちにいってご飯食べてもいいっていうなら、明日の朝、私も魔王君のおうちに行っちゃうからね。いいよね?」


「構わんぞ」


 俺の配下ならば、むしろ朝俺の出迎えをするのは当たり前だ。


「住所は千歳にきくといい」


 昨日の帰り際、千歳に俺の家の住所を教えている。

 俺が呼べばすぐ来れるようにと教えたものだ。


「昨日魔王様にお聞きしましたので。あとで弓村さんにも教えますね」


「あ、いいんだ……。断られるかもと思ってたんだけど。いいならお言葉に甘えちゃうね。芦野さん、あとじゃなくていまでもいい? クラスラインからたどって私に送って」


「は、はい」


 千歳はスマホをいじって澄香に俺の住所を教える。


「あ、来た。ありがと」


 と言ったあと、澄香は千歳に対して言う。


「ねね、芦野さん。いつまでも名字呼びっていうのはなんかよそよそしくない?」


「ふぇ?」


「私たちはもう魔王君の配下だよ? たった二人しかいない同僚なんだから、もっと仲良くした方がよくない? 具体的には、名字じゃなくて名前で呼び合いましょうってこと」


「な、名前ですか……」


「そそ。私のことは澄香ってよんで。私も千歳って呼ぶから」


「……い、いいの?」


「ぜんぜんオッケー!」


「わかった。ありがとう……澄香ちゃん」


 嬉しそうに微笑みながら、千歳は澄香の名前を呼んだ。


「あははっ。どうしてありがとうなの? 別にいいけど。よろしくね、千歳ちゃん」



 どうやら、千歳と澄香は仲良くすることにしたらしい。

 配下同士が仲いいというのは、俺としても悪いことではない。



 前世では、配下同士の仲は最悪だったからな。

 顔を合わせれば喧嘩をしたり罵倒したり。

 中には殺し合いする奴らもいた。


 幹部同士が殺し合った結果、戦力が減ったことすらある。


 この世界での俺の配下は、そういうのがないように願いたいものだ。

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