第10話 異世界魔王、変態教師に鉄槌を与える
俺の邪魔をする小野田という教師を、痛みで教育することにした。
「教育ぅ? それは教師の俺が生徒のお前にすることなんだよ! 生意気なこと言ってんじゃねえ。つうかてめえ、さっきからなんだその口の利き方は。教師にむかって失礼だと思わねえのか、このゴミカスがああああ!」
小野田は俺に向かって速足で来て、拳で殴りつけようと振りかぶった。
「てめえら二人とも、この学校からいられなくしてやるよお!」
「黙れ」
言いつつ、俺は魔法を発動させる。
その魔術は簡単な攻撃魔法だ。
魔力で作った弾丸を相手に飛ばすという技。
威力はかなり弱めにしているから、死ぬことはない。
「ご、はぁ……」
でっぷりとした腹に魔術を放たれて、小野田はその場に跪いて悶絶する。
威力は弱めにしているから即死することはない。
しかし攻撃魔法により出血はしているから、このまま治療せず放置すれば死ぬだろう。
寛大な俺は、治療を施してやることにした。
治癒魔法によって出血を止める。
これで、こいつが死ぬことはない。
ん?
死ぬことはない?
なら、もっと撃ってもよいな。
というわけで、死ぬ危険がなくなった小野田に向けて、俺は攻撃魔法を放ち続ける。
「が、はぁっ。ぐがあああああ!」
俺の攻撃魔法により、汚い悲鳴を上げ続けた。
なかなか悪くない……。
なぜだろうな。
悲鳴というのは、相手がクズなほどに気持ちがいいものだ。
「い、いったい。なにが……」
痛みの中、小野田は己の体に突如起こった痛みに疑問を呈する。
「魔法だよ」
その質問に、寛大な俺は答えてやった。
「俺は魔法が使えるのでな。魔法でお前の体に攻撃して、魔法で治療してやっている」
「ふ、ふざける、な……」
「やれやれ。こうして実際にその身におこっていることなのに、理解できないとは。ほんとうに頭が悪いのだな」
まあいい。
この男にまともな知性など期待してはいない。
だからこそ、痛みによって己の立場をわからせてやっているのだからな。
「細かい理屈は理解せずともよい。お前が理解すべきことは、俺に逆らうと痛みを味わうということだ」
「ふ、ふざけ――」
「少し威力を強めてやろう」
「があああああああ!!」
威力の強い魔法を使うと、悲鳴が大きくなる。
魔法の回数を増やすと、悲鳴が長くなる。
「まるで楽器だな……」
調子が分かってきたところだ。
こいつの悲鳴でもって音楽を奏でてやろう。
およそまともな精神の人間が聞けばドン引きするような音楽だろうが、俺にとってはクラシックのように心地の良いものだ。
教師の腹に穴をあけ、その口から洩れる悲鳴で作った音楽が資料室に響き渡る。
そして少しの時間が過ぎ、小野田が半死半生となったところで演奏をやめた。
もとい、攻撃魔法を与えるのをやめた。
「ふふ。なかなか楽しめたな……。ああ、いかん。そもそも俺の目的は、演奏ではなくこいつを教育する予定なんだった。楽しみにふけって本来の目的をわすれてはだめだな」
しかし、これでこいつも理解したことだろう。
俺に対して不敬を働けば、相応の痛みとなって帰ってくるということを。
「おい。意識はギリギリ残っているはずだ」
ボロボロの状態の小野田の元へ向かい、話しかける。
「今回の件で、お前が理解することは一つ。それはなんだ? 言ってみろ」
「は、はい……。もう、悪いことはしません」
「なんだ。なにも理解していないじゃないか。これは再教育か?」
「ひ、ひぃっ! も、申し訳ございません。申し訳ございません」
俺の言葉を聞いた小野田は、恐怖に襲われて何度も何度も謝罪する。
哀れだな……。
「謝るくらいならば、まず頭を回せ。俺は一言も悪事をするななど言っていない」
そもそも俺は魔王。
悪事など、日常の動作の一つとして行ってきた。
そんな俺が悪事をするななどと他人に対して言うわけがない。
「俺の言っていることは一つだけだ。さあ答えろ。お前が理解すべきことはなんだ?」
「そ、それは……。もうあなたには逆らいません。あなたに対して失礼な言動をしません。なるべく視界に入らず、なるべく意識されるようなことをせず、矮小な虫のように生きていきます……」
「そうだ。それでいいんだ。よく理解したな」
俺の教育を理解した小野田に対して褒め言葉を贈る。
理解を示した者は褒める。
それは、他人を教育することに必要なことだ。
「さて、小野田も俺の教育が行き届いたことだし。最後に一発いれて今回は許してやろう」
「さ、最後……?」
「ああ。最後にな。おまえの《《それ》》を使い物にならなくするだけだ。ああ、安心しろ。ショック死しないよう、ちゃんと治癒魔法はしてやるから」
痛みに寝転がっている小野田の、股間に向けて俺は手を掲げる。
俺が何をしようとしているのか理解した小野田は、ただでさえ青い顔面をさらに青くした。
「待って。待ってください。もうわかりました。もうあなたの言いたいことはすべて理解しました。もうあなたに迷惑はかけません。だからどうかそれだけは許してください」
「ダメだ」
俺はニコリとほほ笑み、小野田に対して言う。
「なあ、小野田。こうは思わないか? 自分の通う学校で、女に発情して盛る男がいたら、気持ち悪いとな」
「待って待って待ってお願いします許してくださいそれだけはやめてくださいおねがいしますこの学校もやめます引っ越してこの街からも去りますだからどうかそれだけは許して許して許して――」
小野田の股間に向けて、魔法を放った。
「ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
小野田は、最後に特大の悲鳴を上げて気絶した。
「ふっ。なかなかいい悲鳴だったぞ」
まるで先ほどの演奏にたいする拍手のように、小野田の悲鳴は資料室に響き渡った。
小野田の股間からは血が流れている。
その出血は治癒魔法で止めておく。
しかし、潰れた玉については治療しない。
理由?
その方が楽しいからだ。
人が苦しむさまというのはなかなかに楽しい。
なにせ俺は魔王だからな。




