episode7 凌雅の思い
黎凌雅夫婦と話したから20分後、再度アナウンスが流れる。
【黎蓮会、先代統帥、黎 浩然様と奥様の黎 茉里様がご到着いたしました】
濱田は出入り口を見る。
黎浩然は、黎凌雅と比べたらゴリゴリの裏社会の人間で、強面な顔にガタイの良い体。
全然、御年60歳には全然見えない。
そして、隣の奥さんは和風美人。
(黎凌雅は母親似なんだな)
鳴り響く拍手の中、濱田はボーっと考えていた。
先代夫婦は、凌雅夫婦のもとに向かい、なんか声をかけている。
そして、妻の夏華が義父にプレゼントを渡した。
「おぉ!!これは私が最近飲みたいと思っていたドメーヌ・ルロワ じゃないか。さすが…うちの可愛いお嫁は分かっているなぁ」
「当たり前よあなた。可愛い夏だもの~」
そう言って、茉里は夏華に抱きつき、頭をなでる。
なんとも夏華は義父、義母との関係は悪くないようだ。
むしろ、黎凌雅だけではなく、義両親からも溺愛されているのか。
「すごいっすね。愛されてますね…」
濱田は黎家にちやほやされている夏華をみて隣にいる江崎に声をかける。
「あぁ。夏華様の家は、昔から黎家をお支えする家系らしい。だから昔から付き合いがあるそうだが、結婚するまで、夏華様は表舞台には出てなかったからな」
「えっ。なんでですか?」
「ん?さぁな。夏華様の父親、李 泰然は、めっちゃできる男だったが、まさか女、娘がいるなんか誰も思わないような堅物だったからな。さすがにそんな内部のことまでは俺でも知らないね」
江崎は眉間にしわを寄せる。
話を聞いた濱田は意外そうな顔をする。
「へぇ、堅物ねぇ。あん時会った夏華様はむしろ優しそうな子だったからイメージできねぇな」
「…俺は夏華様を知らねぇからわかんねぇけど。父親は仕事第一で、しかも頭も良い。ゴリゴリのインテリ系だな」
「そっちですか?俺のイメージ。ゴリゴリの古い強面のヤクザみたいの思ってました」
「ハハハ、違う違う」
2人は雑談をしていると、気付いたら先代のご挨拶になっていた。
「この度、私の生誕祭にたくさんの方がお越しいただきありがとうございます。ありがたいことに今年で60になりました。黎蓮会も息子の凌雅が継いでくれています。愚息ですが、皆さまに今一度お力を借りながら、成長してくれることを願っています。話が長くなりましたね、どうぞ今宵はお楽しみください。
乾杯」
「乾杯」
会場に響く掛け声。
それからはみな思い思いに話したり、ご飯を食べたりしていた。
________________
【凌雅side】
凌雅は正直、ずっとモヤモヤしていた。
先ほどの江崎の秘書が夏を見つめて俺が怒った時、
夏からのメッセージがとても気になっていた。
『以前、男の人に襲われたところを助けてもらった人に似てたから…見つめちゃった。ごめんなさいお兄ちゃん』
「え…」(襲われたって…そんな報告聞いてねぇ)
護衛の奴らを一瞬だけ睨んだが、夏が慌てたように携帯を打って見せた。
『私が1人になりたいって…わがまま言ったの。だから…護衛の人たちを怒らないでお兄ちゃん』
江崎たちがいるから、我慢したがめっちゃ俺の嫁がかわいすぎる。
布越しだが、最愛の妻のこういう時の顔は俺の知っている顔だ。
「終わったら…詳しく話聞かせてな」
そう言って優しく妻の頭を撫でた。
だが、護衛の奴らには躾はしておこうと心で誓った。
それからは適当に挨拶を済ませて、親父が入場してきた。
相変わらず、夏は親父とお袋からも愛されている。
しかし、スキンシップの激しいお袋をみて静かな嫉妬の炎を燃やす凌雅。
(夏が可愛いのは認めるが、ベタベタしすぎだろう」
親父にワインをプレゼントするのにすごく悩んでたし、喜んでもらえて嬉しそうだ。
「はぁ…」
【どうして俺の嫁はこんなに愛されるんだ?】
という言葉をため息として吐き出す。
それをみていたお袋がニヤニヤしながら声をかけてくる。
「男の嫉妬は見苦しいわよ。凌雅」
「…わかっててやってるだろ」
息子をいじって遊ぶ茉里。
それを理解しているからこそむかつく凌雅。
その後、親父の挨拶して乾杯の掛け声とともに会場が盛り上がる。
しかし、チラッと夏をみるとなんとなく疲れているような気がする。
「夏?ちょっと休憩するか?」
すると、先ほどまで「大丈夫」と首を横に振っていた夏だが、今は首を縦に振った。
「ん。じゃぁ、行こう」
凌雅は夏華をエスコートして泊まるホテルの一室へと向かう。
_____スイートルーム
今日はきっと夏が疲れると思って良い部屋を確保していた。
部屋につくとドアを閉めて振り向くと、布を取って素顔を出す夏華。
布をつけているせいで、顔が紅潮してとてつもなく…エ口…魅力的だ。
そんな下心を押さえながら声をかける。
「ごめんな。夏。本当はこういう会に夏を巻き込まなければ…こんなのつけなくて良いんだけど」
凌雅は夏華のつけていた布をたたみながら話す。
夏華は片手で顔を仰ぎながら携帯を打つ。
『大丈夫だよ。お兄ちゃんが私を守ろうとしてくれているのは分かっているから』
ほら、まただ。
本当はもっと俺に文句を言ってほしいし、責めてほしい。
でも、夏は俺がすることに文句は言わない。
それが俺的には1番つらい。
「…ありがとうな。夏。終わるまでここで休憩してな。終わったら俺もここに帰ってくるから」
『…うん。わかった。ごめんねお兄ちゃん。最後まで参加できなくて…』
申し訳なさそうに見つめる夏華。
頭を撫でてやれば気持ちよさそうに甘える。
(なんだこの可愛い生き物は/////)
「絶対人がノックしても出たらダメだぞ?わかったか夏?」
今すぐに抱きしめたい思いを閉じ込めて、余裕のある男を演じる。
すると、夏華は仰ぐ手を止め、口元に添えてクスクスと笑う。
『お兄ちゃんは相変わらず過保護だなぁ。大丈夫。わかっているよ。頑張って』
凌雅は夏華の額にキスを落とす。
(いつか自分の思いと夏華の思いが一緒になってほしい)
と思いながら。
そして部屋を出る前にもう一度、夏華をみると顔の赤みが治まっていたのに
さらに赤くして恥ずかしそうに手を振っている。
軽く手を挙げて俺は部屋を出た。
いつも読んでくださって、本当にありがとうございます。
皆さんのおかげで、今日も楽しく書けています。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。




