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episode6 黎夫婦との接点

いよいよ、濱田たちが黎蓮会と関わるぞ

1週間後


____都内の高級ホテル


今日は黎蓮会の先代総帥、黎 浩然(レイ ハオラン)の生誕祭が

開催されている。

政治家や経営者など、この国の重鎮たちが次々とホテルに到着する。


「おい、江崎さん。本当に俺ここに来てよかったのか?」


大物たちをみて気が引けてしまった濱田。

それをみて江崎は何も気にしない様子で答える。


「大丈夫だよ濱ちゃん。…それにこうでもしないと黎 凌雅には近づけねぇだろうよ」


「んまぁ、そうだけどよぅ」


うじうじとする濱田をみて江崎は、いつもの穏やかな顔から

重鎮らしい表情へと変わる。


「妹さん、救いたいんだろう。覚悟決めろ。男だろ」


「ッ…」


濱田はその言葉に大事な妹、理世の顔を思い出す。

そして、情けない自分に喝を入れるように

両手で自分の頬を打つ。

そして、それを見ていた江崎は吸っていた煙草を消す。


「良い表情じゃねぇか。濱ちゃん」


覚悟の決めた男の表情。

江崎は濱田のこの表情が好きだった。

その表情をするとこの男はきちんとやりきるからだ。



「江崎さん。ありがとうございます。そしてよろしくお願いします」


「あぁ。こちらこそ頼むぞ秘書の濱田」



そして、2人を乗せた車がホテルへと入っていった。

車から降りたら、たくさんの案内人たちが側に来て、ホールまで誘導してくれる。

品格のあるホテルに内心、気後れそうになるが、気を引き締めて江崎の後ろをついていく。


ホールに近づくとたくさんの人がホールにいることが確認できた。


「すっげぇ、人数だな」


「黎蓮会の先代は、顔が広いからな」


こそこそと二人で話す。

そして、ホールの扉をくぐると、アナウンスが流れる。


「江崎財閥グループ代表 江崎光雄様とその秘書 濱田 誠様がご到着されました」



「おぉ、江崎さんじゃないですか」



そのアナウンスとともに、次々と江崎の周りには人が集まってくる。

江崎は手慣れた感じで、挨拶をしていく。


「おや?江崎さん、秘書なんか取ったのかい?」


「ん?あぁ、知り合いの子でね。勉強させてやってほしいと頼まれてね。ほら挨拶しなさい。濱田くん」


背筋を正し、濱田はご挨拶をする。


「江崎社長の秘書をしております濱田と申します。不慣れではありますが宜しくお願い致します」


その所作は美しく、周りの社長たちも好印象だった。


「すばらしい所作だ。濱田くん。頑張りたまえ」


「ありがとうございます。木原社長」


「おぉ、名前も覚えているのかい。うれしいね」


この1週間で濱田に、礼儀所作と参加するメンバーを全員覚えさせた江崎。

穏やかな顔で

「きちんと自分の隣に立つにふさわしい者にならないとこの会に参加させない」

と言われた濱田はしっかりと頭や体に必死に叩き込んだ。


話している途中チラッと江崎を見ると、まんざらでもない様子だった。

挨拶が落ち着きそうになると、アナウンスが流れ、会場が静かになる。


【黎蓮会 総帥 黎 凌雅様と奥様の 黎 夏華様がご到着されました】


扉の方をみると、ツーブロのオールバックのイケメンと顔を布で隠している女が入ってきた。

2人が中に入ると拍手が鳴り響く。


「あれが…黎…凌雅」


「あぁ、今の黎蓮会の総帥だ。若いが実力のある青年だな」


「でも、なんで奥さんは顔を隠しているんだ?」


「…お前、もしかして…黎魔の華を知らないのか?」


「えッ…あれが??」


江崎はコクリと首を縦に振り、耳元で小声で話す。


「黎魔の華。その美貌は老若男女問わず魅了する。だからこういう場で出てくるときは顔を隠すんだ。だから、彼女に顔を知っているのは、黎家だけらしい。そして、なにより黎凌雅が彼女を溺愛している。もし彼女を傷つけることがあればそいつはあの世行きだ」


「いやいや、江崎さん。いくら何でもそんなアニメや漫画みたいなことあります?」


「あるから言ってんだろう。それに、間違っても黎魔の華の顔を見ようとするんじゃねぇぞ?そんなことをしたら、黎凌雅の怒りを買うことになるからやめておけ」


「重ッ……めっちゃ奥さん好きすぎません?」


黎凌雅の愛の重さに引く濱田。

それについては江崎も首を縦に振るしかできない。


「つまりだ。黎凌雅と仲良くしたいなら、奥さんに手を出すなってことだ」


遠くから黎夫婦をみていると凌雅が基本的に話している。しかし彼女は一言も話さない。

ただ彼女の腰に凌雅が常に手を回している。そして、何人かの挨拶を終わると彼女に何か声をかけて

そして、彼女は首を横に振ると優しい目で彼女にまた声をかけ、挨拶に戻るを繰り返している。


(でも…なんか…異様だな。あの夫婦。確かにパッと見て、黎凌雅が溺愛しているのは分かるが、でも、どこか距離があるような…。しかも、彼女をみる優しい目がどこか気を遣ってるような気がする。そして何よりも、奥さんが何も話さないのが異様だ)


濱田は黎夫婦をみて、違和感を感じた。

探偵の勘なのか。

まぁ、今回の妹を助けることと関係ないことだと

濱田は挨拶の順番を江崎とともに待っていた。


30分ほど待ってやっと挨拶の順番になる。


「これは江崎さん。お久しぶり」


江崎さんの方が年上なのに気さくな感じで挨拶をする黎凌雅。

全く気にする様子もなく、江崎は挨拶する。


「こちらこそお世話になっております。凌雅様と夏華様」


その言葉に彼女は軽く会釈をする。

彼女の動きを確認してから江崎は声をかける。


「このようなめでたい日に大変申し訳ありませんが、凌雅様。パーティ後少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか?無理なら近日中でお会いしたいと思っているのですが…」


すると、凌雅の後ろにいたガタイの良い男が止めに入る。


「そういうのは、正式な手順を取ってからにしていただきたい」


「待て、劉。江崎さんが俺に会うって何かあったんですか?」


黎凌雅は劉を制し、話を聞く姿勢を持つ。


「ちょっとお伺いしたいことがありましてね。ここではなんですから…」


(流石、江崎さん)


と感心する濱田。

濱田は、ふっと視線を感じて、視線の先をみると奥方の夏華が布越しに見つめているような気がした。

濱田が夏華をジーっと見つめていたことに気付いた黎凌雅が彼女の前に立つ。


「江崎さん、いいでしょう。ですが、その男はダメです。人の妻を良からぬ目で見る奴を信用できない」


「あっ、違うんです。ただ…」


濱田は慌てて弁明しようとするが、江崎が前に出る。


「これは失礼いたしました。凌雅様。ですが、それは、私が困ります。いくらお話があるにしても、黎蓮会に私が護衛もなしに行って何か巻き込まれでもしたら、均衡は崩れますよ」


流れる沈黙。


凌雅は、どこか狂気を感じるような雰囲気を醸し出し、対する江崎は非合法組織の首領の顔で穏やかなだがどこか圧を感じる。両者とも重たい空気を出す。


すると今までしゃべらなかった彼女が夫の顔をみる。

それに気付いた凌雅は、醸し出していた空気が消え、優しい空気に変わる。


「ん?どうした?」


彼女は携帯を出して何かを彼に見せていた。


「え……」


それをみた凌雅はショックを受けていた。

でも、彼女は急いでスマホを打ち、また彼に見せる。

どこか彼女も申し訳なさそうしているのをみて、凌雅は少し眉間にしわを寄せるが

少し考えてから濱田に謝る。


「……どうやら、妻が君に似ている人に会ったことがあるから、ジッとみてしまったと。変な誤解をしてすまない」


「あぁ…いえ…俺こそ、他人をマジマジとみてしまって申し訳ありませんでした」


「お詫びもかねて、パーティ後、少しなら時間を作れろう。部屋はうちの者に案内させるから2人で来てくれ」


「はい、ありがとうございます」


何とか誤解が解けた濱田は、パーティが終わりに会う約束した。

黎夫婦と別れて、会場の反対側へと歩いていく。


「ふぅ~危なかった~…っ」


「危なかった~じゃない。危うくチャンスを台無しにするところだったんだぞ」


江崎から拳骨される濱田。


「ったく。奥方が何も言わなかったら台無しになるところだったぞ。というか、お前、奥方に会ったことあるのか?本当に美人だったか?」


殴られた頭を押さえながら江崎をみる濱田。


「え…う~ん。会ったことないとかも…」


江崎は露骨に肩を落とす。

濱田は、記憶を探る。

彼女の顔を見れればわかるかもだが、そんなことしたら本当に命が危ない。

しばらく考えていると、彼女がスマホを打っている姿を思い出す。


「あっ!?」


「思い出したのか?」


「不良に絡まれている若いお姉ちゃんがいて、それを助けたときスマホを触ってたような…しかも中国語を打っていたし…あの子かぁ」


「おい、どうなんだ美人なのか?」


「江崎さん、そればっかすね。殴ったので教えません」


確かに美人だった。

だが、まさかあの子が黎魔の華…。


「世の中どこで、どうつながるかわからねぇもんだな」


そう言って、先代の登場を待つ。



いつも読んでくださって、本当にありがとうございます。


思ったより長くなってしまった。。

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