北の魔法使い
さて対価は?
その後も何度もロゼッタ暗殺のためにシャルドンの襲撃があったものの、リスとラヴァンドとソール、護衛達の手によって追い返される形となっていた。そして今日、いよいよ北の魔法使いがスリジエ家にやってきた。
「やあやあ!初めまして、ご機嫌よう。君がリスだね?いやー、大変だったね!妖精の愛し子に生まれてくるなんて実についていない!けれどももう大丈夫。私がその力をもらってあげようじゃないか!」
「えっと…初めまして?」
北の魔法使いは実にお喋りな男であった。リスは多少気後れしつつもなんとか挨拶する。
「さて、リス。私は聖女の力を奪うことが出来る。この水晶に妖精の愛し子としての力を奪って私はそれをコレクションの一つにすることができるし、君はもう大切な人の身を心配することもない。ウィンウィンじゃないか!ねえ?」
「そ、そうですね」
ねえと言われても反応に困るリス。
「ああ、ロゼッタ、ラヴァンド、ソールは君たちだね。うんうん、実にいいね。リスのことを心から心配している。優しい愛情を感じるよ。だけれどごめんね。対価を支払うことが出来るのは願い事をする本人だけなんだ。君達からは何も受け取れない。そこで黙って見ていなさい」
「えっ、そんな!」
「リス…大丈夫か?」
「大丈夫」
「リス、無理はするなよ。断ることだって出来るんだ」
「わかった」
そんなリスとラヴァンド、ロゼッタとソールの様子を見て北の魔法使いは満足そうだ。
「うんうん、美しい愛情だね。さて、対価はどうしようかな。…うーん、そうだ!ねえ、リス。君はほとんどの記憶を失っている間も、ラヴァンドとロゼッタ、ソールのことはうろ覚えながらも忘れていなかったんだろう?まあ、細かな思い出は忘れてたみたいだけど、大切な人達と認識していた。そうだね?」
「は、はい。でもその話をどこで…」
「なあに、君の記憶を読んだだけさ。それでね、リス。君の払う対価が決まった。ラヴァンドとソール、ロゼッタとの全ての記憶が対価だ。君はもう彼らとの今までの思い出は一生思い出せない。新しい思い出はもちろん作れるけれどね。そして私はその記憶を水晶に閉じ込めてコレクションにさせてもらう。どうかな?」
「えっ…そんな!」
「リス、断れ。そんな対価を払う必要があるか?ないだろう」
「リス、なんで黙ってるんだ?断ろう、な?」
「…わかりました。それでロゼッタに危険が及ばなくなるなら」
「お姉様!?」
「リス!?」
「なんでっ!」
「うんうん。実に妹思いなお姉様だね。さあ、この水晶に手を乗せて?まずは妖精の愛し子としての力を奪うよ」
「はい」
リスが水晶に手を乗せると、光が水晶から溢れ出す。そして水晶は幻想的な虹色の光を閉じ込めていた。
「これでもう君も君の大切な人達も妖精やら暗殺者やらから狙われることはないよ」
「ありがとうございます」
北の魔法使いは満足そうに頷き、妖精の愛し子としての力を奪った水晶を大切そうに保管した。
「さあ、次はこちらの水晶に手を乗せて?」
「はい」
「お姉様!嫌です、やめてください!」
「リス、頼むからやめてくれ…。他の対価はないのか!」
「いいや。私はこの対価が欲しい」
「…っ、リス…」
「みんな、今までありがとう。もう一度、記憶がなくなっても仲良くしてね」
リスは水晶に手を乗せる。光が水晶から溢れ出す。そして水晶は幻想的な桜色の光を閉じ込めていた。瞬間リスが倒れる。
「お姉様!?」
「リス!しっかりしろ!」
「リス、どうした!?」
「対価は確かにいただいたよ」
北の魔法使いは水晶を大切に保管する。
「時間が経てば眼が覚めるさ。ただ、その時には君たちのことは覚えていないけれども」
ロゼッタ、ラヴァンド、ソールは北の魔法使いを睨みつける。
「あはは。契約なんだから、仕方がないだろう?命を対価にしないだけ感謝して欲しいくらいさ。じゃあね」
そうして北の魔法使いは北の森に帰って行った。
次回最終回です!




