記憶
夢の中に潜る
リスは両親に妖精の愛し子の件について話をした後、眠りについた。夢の世界に入ったリス。
「…ここは?」
そこには幼い頃のリスと知らない男の子がいた。
「リス、私とお友達になってくれるかい?」
男の子はリスに手を差し出す。
「ふんっ、仕方がないわね。特別よ?」
傲慢な態度を取りつつもしっかりと握手を交わしたリス。
「リス、もしも大きくなっても独りぼっちなら、妖精國に来ると良い。私達はリスを歓迎するよ」
「…それもいいかも知れないわね。けど、ロゼッタとラヴァンドを一人にするわけにはいかないし、ソールだって心配するわ」
「なら、もしも彼らが君の側からいなくなったらその時はおいで?」
「な、なによ縁起が悪いわね…まあ、ええ。その時には行ってあげてもいいわよ」
「そうか。ありがとう、リス。約束だからね」
リスはそこまで夢を見て目を覚ました。頭が痛い。割れるような痛みを伴った記憶の復元。しかしそのおかげで全ての記憶を思い出した。
「ああ、そっか、私…あの時夢の中であの男の子…妖精さんと約束したんだ」
幼い頃のラヴァンドやロゼッタ、ソールとの何気ないやり取りも、父と母からの冷たい目線も、使用人達からのぞんざいな扱いも、なにもかも思い出した。妖精との約束も。しかしその記憶に性格が引っ張られることはなかったようだ。リスは今のリスのままだった。
「…。ロゼッタには今護衛がついてるし、ラヴァンドとソールなら自分の身は自分で守れるし、大丈夫だよね」
リスはもう一度眠りについた。今度は夢も見ずに熟睡出来た。
「おはようございます、リス様」
「おはよう、オレガノさん。なんだか部屋の外が騒がしいね?」
「昨日、シャルドンという暗殺者がロゼッタ様の元に現れたそうなのです。護衛達がなんとかお護りしたようですが、怪我人が続出しまして」
「え?シャルドンってそんなに強いの?」
「なかなかの手練れのようですが、なにか?」
「ふーん…じゃあ、私ってなかなか強いのかな?」
「え?」
「なんでもない。シャルドン捕まった?」
「いえ、捕まえられなかったそうです」
「そっか。まあ仕方がないよね」
そして朝の支度をすると、今日から一緒に食事をすることになった両親とロゼッタの元へ向かう。
「おはようございます、お姉様」
「おはよう、ロゼッタ!怪我はない?大丈夫?」
「はい。護衛達のおかげです」
「よかった」
「おはよう、リス」
「おはようございます。お父様、お母様」
「おはよう、リス」
リスは両親やロゼッタと一緒に朝食を楽しむ。
「あの、昨日何故か妖精さんと約束した時の夢を見て、その後記憶が戻りました」
「…そうか」
「お姉様、記憶が戻ったんですね!よかった!」
「よかったわ、リス」
「ありがとうございます。…えっと、それだけです」
「そうか。よかったな、リス」
伝えることも伝えて、リスは両親やロゼッタとの会話を楽しんだ。
部屋に戻ると、リスは記憶が無くなる前の自分を思い出してみる。我が儘放題で、意地っ張り。けれども本当は、誰よりも寂しがりやで甘えん坊。妹と婚約者、幼馴染が大好きで…本当は両親にもっと関心を寄せて欲しかった。むしろ、少しでも両親に構って欲しくて我が儘を言っていたところがあった。両親はそんなリスを余計に嫌ってしまい、関心を更に失う結果になっていたけれど。
記憶を無くしてからの自分は、自然体でいられた。両親からの関心や、使用人達から嫌われていることなど、どうでもよかったからだ。それに、大好きな三人がいつもそばに居てくれたから。何も不自由などなかった。記憶を無くす前の自分も、三人がいてくれるだけで満足出来ていれば両親や使用人達とも上手くやれていたのかも知れないが…戻った記憶が両親から嫌われる寂しさを伝えてくるので、幼かった私にそれを求めるのは酷だろうと思う。
色々悩むところはあるけれど、記憶が戻ってよかった。記憶を無くしてから、両親を半分どうでもいいと思っていた節がある。それが、今は両親から関心を持ってもらえて…嬉しいという程でもないが、まあ満足している。大好きな三人のこともより大好きになった。使用人達にも、あれだけ迷惑をかけていたなら嫌われていてもまあしょうがないと、元々怒ってはいなかったが理解もできるようになった。
記憶が戻ってからリスは家族や婚約者、幼馴染をより大切にするようになった。
さて次回魔法使いが来ます




