次の日〜4
本当はとても優しい人なんだろう。テロをしているとはいえ、ナイフを受け取った後見捨てればよかったのにも関わらず、逃げもせず、俺を盾にすることもせずに、その化け物を、三周りもある化け物を刺し殺してしまった。力が凄いのもあるだろうが、それでも俺じゃ絶対に出来ないことだ。凄いと賞賛しか出来ない。
化け物を殺すのに力一杯使ったのもあって、ボスも俺とまではいかないが、腰を下ろし壁に背中を付けて身体を休めていた。
それを10分以上すると、肩を少し動かしながら俺に声をかけた。
「大丈夫・・・・・・な訳ないよな」
俺も人を見たり話したりするぐらいには回復したので、その質問に答える。
「蚊みたいに血を吸われただけだから大丈夫だとは思うが、まあ大丈夫だろ。血が増えるものでも食えば解決する問題だろうしな。それとありがとうボス。あんたがいなかったら今頃俺は死んでたと思う。ミイラみたいに萎れてな」
「気にするな。こちらも危険だったから結果的に助けただけだ。ナイフ返すぞ。いい投げだった。もしまたこういうことがあったのなら頼むぜ」
もう一度こんなの味わうのは俺は嫌なんですけどね・・・。苦笑しながらナイフを受け取り、そん時はまたお願いしますと言って俺は這って部屋に戻った。
「・・・・・・・・・・・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」
緊張が一気に解ける。出血による頭の眩みはなくなったと思ったら、ただ緊張で治ってただけだった。近くに誰もいなくなって、借金を返すかのように、視界が歪み、戻してしまった。食事をしていないのもあって出てくるのは胃酸だけだ。
「うっがっぁぁぁ・・・・・・」
動くこともままならない。出来ることはその場で吐くことだけだった。耐えることも出来ない。
ひとしきり吐き続けると、頭の眩みは軽くなって頭の重みも少なくなった。
だが、立とうとすると立ちくらみがまた起きる。身体を休めようにもまず動けないんじゃここで休むしかない。
胃酸のおかげで喉がジリジリギリギリ痛い。イサリビに刺された時と比べれば大したことないが、それでも痛い。
起きたばかりで寝ることも出来ず、吐いたせいで横になることさえ出来ない。後者は気にしなきゃ問題とは言えないが、だからって上に寝るのもなぁというのを続けていると、いつのまにかそのままの体勢で寝ていたようで、もう外は暗くなり始めていた。
カピカピに固まった嘔吐物を気にも止めずに床を這いながら廊下への扉を開ける。吐いてからかなりの時間が経って血の巡りも最低限行われたおかげで、這うぐらいなら出来そうだ。
窓の並ぶところまで行って窓を開ける。風に当たるのなら、俺のいた部屋で当たればいいと思ったが、なぜがここにわざわざ来たかった。吐いた場所に居たくなかったっていうのもあるが。
「ふぅ・・・・・・・・・・・・」
身体の空気を入れ替えながら、朝の化け物について考えていると、後ろから気配を感じる。デジャヴってやつか?朝も同じだった気がする。どうせイサリビが殺し損ねたのに腹を立てて・・・訳がないだろうが。俺は俺の事を非難しつつもそう思った自分に嫌気した。
はあとため息と共に瞼を一瞬閉じて開くと、またあの景色に、なんとも言えない景色になっていた。今日は多いなこの景色になるの。まあこれのおかげで気配がイサリビではなくボスかあの化け物のどちらかってことは確定だろう。
殺意は感じられない。というか戦闘のプロでもない俺が殺意を感じたらもうそれは攻撃される寸前だろうしな。これが普通なんだよな。
途端に身体が引っ張られる。いや、身体は残ってる。意識だけが引っ張られてるのか?
黒いトンネルのような道を引きずられるのなら良かったが、空中をふわふわと浮きながら、どこかにへと飛ばされると、俺は元いた部屋のベッドの上に落ちていた。
眩みもなくなり・・・いやそれ以前よりも身体か軽くなったし身体のあちこちが動かしやすくなった。
「ナオフミ君まだ起きてる〜?」
ノック音と共にリーリャさんの声が部屋に響いた。今朝のことは今朝のことと割り切ってくれたのだろうか?そうじゃなかったとしても、声をかけてくれたのなら返さないとな。
軽くなった身体を確かに感じつつベッドから降りて扉を開ける。カピカピに固まった嘔吐物は誰かが拭き取ってくれたようで残っていない。誰かを入れた記憶はないので気散したのかもしれないが、いま気にすることではないので放置しよう。
「リーリャさん?今朝のことなら反省してるんで、ご勘弁を!」
「ちゃんと反省してるとは思えない言い方だけど・・・ご飯朝から何も食べてないでしょ?あんなこともあったしね」
あんなことというのは、イサリビの件だろう。化け物に関しては俺とボスしか見ていないのだから。もし化け物の方だったら怖いが。
「疲れてるんでそんなには空いてないですけど・・・頂いても?」
「その為に持って来たんだもん。食べなかったら逆に怒る」
「理不尽な・・・」
「食べるんなら理不尽じゃないよね〜」
いやそれはそうだろうが・・・・・・考えてところで持って来てもらった以上、食わないのは悪い。
リーリャさんからありがたく食事を貰い、遅めの朝食兼昼食兼夕食に手を付けた。




