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俺の周りは絶望ばかりだ  作者: キノコ二等兵
日南休直史の周りは絶望ばかりだ
39/202

次の日〜3

やばいやばい!落ちるううぅう!!!!!二階からなのに、少しの高さなのになんでこんなに勢いがあるんだよぉ!


「ふぎゃああ!!!!!」


あたふたと指や足や腕を動かすがそんなことで身体の体勢が変わるわけがない。頭を下に落ちていく。このままじゃ首が折れるんだろうか?どこかの漫画みたいにポーンと跳ねてくれれば良いんだけどなぁ・・・。


勢いは落ちることはなく地面に近づく。諦めるしかないな。


「アンカーナイフ!」


リーリャさんの声が聞こえるが、何をするつもりなんだろうか?アンカーってことはいかりか?何を固定するんだ?


ガクンっという揺れと右足に痛みが同時に来る。それのおかげで地面に僅か数ミリ単位で触れはしたが、直撃は免れた。まあ,身体をぶつける場所が変わっただけで多少の怪我はすることにはなったわけだが。


「げっふっ・・・」


「ナオフミ君大丈夫〜!」


「顔は打ちましたけど、何とか大丈夫です・・・。出来たら引き上げてもらえますか。逆さまだと頭に血が上って・・・・・・」


「分かった〜あんまり動かないでね〜」


罠に掛かった動物のように引き上げてもらうと、リーリャさんの叱咤が飛んできた。


「イサリビ君に聞いたけど、キミなんてことしでかしたの!」


ああ・・・・・・この感じだとイサリビが俺を刺したってことは言ってなさそうだな・・・。痴漢紛いなことはしたのは事実だし、これは素直に謝るべきだよな。


「朝部屋を出たら、自分の足に引っ掛けてしまってそれで。殺されると思ったんで逃げたって訳です。これに関しては反論する言葉はありません。如何様(いかよう)の罰も受ける所存です。はい」


「私に言っても意味ないでしょ。連れて来てるからしっかり謝ってね」


逆さまになって上っていた血が降りて来たので、少しふらつきは残ってはいるものの立ち上がり扉を開けるとその先にはシラヌイとイサリビが立っていた。


シラヌイは俺を貶す様な目で、イサリビは俺に殺意の目で一斉にプレッシャーを与えてくる。同時に来ると胃が痛くなるからやめてくれ。シラヌイがそういう目をするということはやはり痴漢したことだけを伝えたんだろう。なら、本当のことを言ったところで意味がないな。


「その・・・逃げて悪かった——————っ!」


シラヌイに引っ叩かれる。当然だ、どの様な事情があるとは言っても、俺がイサリビに手を出したことには変わらない。刺されてもしょうがない。


「足を引っ掛けたからやったのなら、逃げずにただ謝れば済む話だろう?キュウはなぜ逃げたんだ?」


「そんなことも頭に浮かばなくて逃げたんだよ。本当にすまん!」


ちらりとイサリビを見ると、意外な顔をしていた。俺が言う言葉が予想と違ったとかか?向こうから刺してきたのは事実だけど、それと痴漢行為は話は別だしそれをしなくたって逃げる手段はいくらでもあった筈なんだ。あの時は浮かばなかったが。


「イサリビ、すぐに謝ればこんな大事にはならなかったのにな。すまない」


「え、ああ、うん。そうやって謝れるならさっさと謝ればよかったじゃん」


「そうだな。本当にすまん・・・・・・」


数日は皆から白い目で見られるだろうが、元々俺はそういう目で見られていたんだ。これは日本での話だが、またそういう目で見られるのは嫌だが、気にしない。


一応は解決ということになり、イサリビやシラヌイはリーリャさんに連れられて別の所へ行ってしまった。あのー朝飯は?やっぱああいうことした訳だし飯抜きになってもおかしくないよなぁ。悲しいなぁ・・・・・・。


部屋に戻ろうとすると、後ろから声をかけられる。男性の声だが、マスターの声でも窓原の声でもない。振り返ると、シラヌイとイサリビの知り合いの青年であるリーダーさんだった。


この感じだとあの時———初めてBOWと戦った時———に車に乗っていたメンバーは全員ここに集められたって感じだな。というか、大丈夫なのか?武器を全部奪っているとはいえ、テロリストだぞ?こんな放置して・・・・・・ってシラヌイも元はテロリストだが、襲ったのはあの夜1回だけだし、それ以前に運輸活動にも協力してくれてるんだから、本当のところは人殺しを許容しているだけで自分からするような人たちじゃないのかもしれないな。


「お前、何故嘘をついた?殺されかけているんだぞ」


「まあ、イサリビからすれば俺は誘拐犯みたいなもんだからなぁ。例えテロリストでも人並みに心があることを知れたわけだし、安いもんだ」


「・・・・・・怖くないのか?」


「怖い」


即答で青年に返す。いやマジでなんであの時殺されてもいいやって思ったのか全然わからん。ヒナがいるのにそう思った自分が怖い。


「それにお前刺されたばかりだろう?何故そう軽々しくいられるんだ?イサリビが刺し方を間違えたとは思えない。奴はシラヌイと同じく刃物を使う事に関しては我々の中でも1、2を争う。そんな彼女らが1人残らず失敗しているのはお前側に何かがあるんじゃないのか?」


あの異常な回復速度は伝えないほうがいいだろう。どんな回復力でも、即死だったら意味がない。それに俺はシラヌイのことは約束したけれど、2人のボスである彼のことは知らない。変に情報は渡さない方が俺のためにもなる。どういう理由付けしようか・・・・・・。


悪寒と共に、微かな風が俺の胸元を通り過ぎる。窓から入ってくるような風じゃないなこれ、イメージ的には走る人の横を通った時の感じだ。ということはこの風は・・・・・・。


俺は意識よりも早く身体が動き、声のした方に向かって走り出していた。そして青年を薙ぎ払うように蹴り飛ばす。流石テロリストだ。ほぼ不意打ちのようなものだったのにもかかわらず、しっかりと防御体勢をとって俺の蹴りを受けた。だがその受けたことで僅かにズレたことで彼を狙った攻撃は外れた。その後ろには大きな穴がいていたところからすると、掠れただけでこりゃダメだってなるような穴の空き方だった。


「お前っ・・・!他にも伝える方法はあっただろう!」


「あんたみたいに運動神経良くないんだよっ—————————!?」


穴を開けた何かが即座に壁から抜けると俺の左肩に突き刺さる。その勢いは俺に刺さっても止まることを知らずに、暴れまわる。


「がっ!!!!!?」


刺さっただけでどこかにぶつけられる訳でもなく、ただ空中を浮き続ける状態だった。


身体を揺らされるのも相まって、頭から血が抜けていく。気分が悪くなる。車酔いというよりかは貧血になった時の感覚だ。


その何かはだんだんと色が付いてくる。真っ赤な赤色だ。どちらかというと血の色にも見える。血が抜けていく感じは本当に血が抜けているのが原因なのか?


ある一定量を吸われると、もう満足なのか俺の肩から刺したものを抜き取り地面へ落とす。肩からは蚊が人の血を吸う時のように、血は流れてはいなかったが、周りの景色は歪んで見える。やばい吐きそう・・・・・・。


頭を動かすことも思うように出来ず、視界だけを何とか動かすと、これまでも何度か見てきた、何と言えばいいのか分からない景色が、俺がいた部屋の窓から見えた。


今までも確かにこんな景色は見てはいたが、こんなのには会ったことがない。いやもしかして今までも出てはいたが、俺の近くには出ていなかっただけなのか?


だが、そんなことは後で考えようか。今はとりあえず、視界外にいる蚊みたいに血を吸った何かがどんな姿をしているのかを確認しないと。


重い身体を何とかひっくり返してボスのいた方向を見てみると、その近くにはこれまた何と言えばいいのか分からない形状の化け物だが、一番近いといえば、ゾウの鼻を持った四足歩行生物という感じか。


「ボ・・・・・・ボス・・・」


歪んだ視界で正しい大きさは分からないが、少なくともそのゾウの大きさはボスの二周り、いや三周り大きさをもっていた。一回りならまだしもこの大きさの差じゃあ勝てるわけがない。ボスも俺のように地面に這いつくばることになる。それはまずい。逃げろと言いたかったが、口が寒さで思うように声にならない。


ならどうすればいい・・・?どうやったらいい?逃げてくれるか?


俺の身が危なくなるのはしょうがないが、ボスに向けてイサリビの刃物をボスに目掛けて投げるしかない。動けない以上、俺があんたの敵だと一瞬でも思わせれば逃げてくれるだろう。



出血と損傷で動きが鈍る左腕だが、今の体勢で投げるとしたら右腕じゃ届かない。ただ敵意を感じ取ってくれればいいのだから、当たるか当たらないかは問題じゃない。


食いしばれない歯を食いしばる動作で補いながら、何とか刃物に手をつける。それをボスの姿がある方に投げ飛ばした。


ボスは待っていたとばかりにそれを簡単に逆手で掴み取ると、ゾウの鼻にその刃物を差し込んだ。


「ナイスタイミングだな、流石シラヌイが見込んだだけのことはある」


俺が投げるのを予測していたのか?どこにも俺が投げるそぶりなんて見せてないはずなのに・・・・・・


ボスは差し込んだ刃物をゾウの身体本体に向けて二枚おろしのように押し切る。ゾウも痛みで雄叫びをあげるが、そんなことは知らんとばかりに、鼻から抜き取り今度は身体にザクシュと差し込む。一度だけじゃない。何度も何度も何度も何度も何度も何度も——————動きは止まるまで刺し続ける。


運が良かった・・・・・・もし視界がしっかりとしていたら、多分吐いていたと思う。だって歪んだ視界でもどうなっているかが分かる程の状態だったのだから。


ゾウが完全に動きを止めると、ボスもその血に染まった手を止めた。

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