再戦BOW
開ける音がセステムと聞こえる扉を通り抜けると、そこではスザクと前に見たBOWが争っていた。いや微妙に違う。興味のないものを見た時に実際は違うのだが、同じようなものに見える時というやつかもしれない。
2人———BOWを人と数えていいのかどうか分からないが、人のように二足歩行出来るのだから人計算でもいいだろ———は一瞬でも気を抜けば死に直結するような戦いだった。俺には微かに見える程度だ。戦っていると分かるのは2人の戦闘による音が重なるように聞こえるからだ。音が重なるってことは音速は超えてるってことだろうか?あまりそういうのには詳しくないから分からないが。
こんな場所にいたら不味い。何故なら死ぬ物狂いで戦っているスザクの視線内に入ることになる。だが逃げる所がない。外に出てもシラヌイの邪魔になるだけだし・・・。
どうするか考えていると、戦闘の音が消えた。スザクが勝ったのか負けたのか?それを確認しようと顔を上げてみたら、スザクが俺の方へと飛んで来ていた。
身体の体勢は横になっていることからすると投げ飛ばされたか・・・って考えている場合じゃないだろ!このままだとぶつかる!
立つので精一杯の俺では、飛んできたスザクを避けれる筈もなく激突し、俺はその勢いのまま倒れ込む。その上スザクの身体が俺の両足に乗った事で、バキバキと嫌な音を立ててしまう。
「がっ———!!!!!っっっっっっっっ!」
ぐうぅぅぅぅう!!!!!
だがこの痛みはまるでどこかで味わった事のあるものだった。ああぁ・・・そうだ。夢の中で何故か両足がなかった時と同じような痛みだ。だからか。
けどその時とは状況が違う。あの時は狂学者がいたからその後に義足を付けることが出来たが、それは夢の中での話だ。現実ではない。それにあの時は足自体がなかった。所々が違う。
こんな身体では何も出来ない。スザクを引っ張って退けて角にでも逃げようか・・・?
BOWは勝ち誇ったかのように雄叫びを挙げると、俺が傷を負わせたBOWの入ったカプセルの方に向かって行く。多分助けだそうとしているんだろう。
「ゴフッゴフッ・・・」
「スザ———」
『気にするな。お前はここにいろ』
思考内通信か。なら・・・・・・。
待てよ、2対1に勝てるわけないだろ!現にここに吹き飛ばされてるわけだし。
『立つこともまともに出来ねぇ奴が一丁前の口を利くな!』
そう言うお前だってその鉄塊みたいなのないと立つことさえまともに出来ないじゃないか!人のこと言えねぇよ。
少し力を入れるだけで痛みが足全体に広がるが、夢の中の方が痛かった。これぐらいで・・・足を痛めたぐらいで止まるわけには行かないんだよ。そういや、いつも俺は夢のことって覚えていないんだよな・・・?それってなんでなんだ・・・?
逆に考えろ。記憶があるということはあいつらと話せるってことだ。前にBOWと争った時に俺の1人が力を貸してくれた。つまりは向こうからは俺に話しかけることが出来たわけだ。俺が出来なかったのは俺の中に憤怒達のことが頭になかったからだ。ならダメ元で話しかけてみよう。
———狂学者、聞こえているのなら反応してくれ———
・・・・・・反応はない。やっぱり夢のことだし当然か。あの声だってインが言っていたのを俺が俺の中から聴いたと思い込んだだけなのかもしれないし。
スザクは足を産まれたばかりの子鹿のように震わせながらも立ち上がるが、それ以上の行動は取れそうになく、一度でも身体を支えている鉄塊を地面から抜くとそれと共に倒れそうだ。
次にBOWの方を見ると、カプセルを割りその中にいるBOWを床に落とした。意識があるのならそこからでも運ぶのは楽だろうけど、何故床に落とす必要があるんだ?意識がないだろうから、かなり重い筈だ。
カプセルを割ったBOWはその大きな右腕を振り上げると床に倒れているBOWに叩きつけた。
「・・・あ、あいつ自分の仲間を・・・」
『情報をこれ以上漏らすわけにはいかないということだろうな。キュウ、協力するなら俺が壁に向かって走るから、俺がやれと言ったら叫べ』
囮になれってことか・・・いいぜ受けてやらぁただ叫び方については俺のやりたいようにさせてもらうぜ。
スザクは足に黄色い液体の入った注射器を足に刺してまた動かす。強心剤のような無理やり動かす薬だろうか?
なんの薬か考えている間にスザクは鉄塊を背負って走り出した。俺はどうする?このまま言われた通りにスザクが言ったら叫ぶだけでいいのか?スザクは無理をして立ち上がったんだ。俺だって・・・・・・俺だって・・・!
スザクが使った注射器は、本人もそこまで意識を集中出来なかったのか床に落としたままだった。あれが少しでも残っていれば俺にも使えるんじゃないのか?けど危険な薬かもしれない。違法薬物みたいなのかもしれないが、そんなのは後で分かる。今は少しでも戦力を追加できるようにするだけだ・・・!
身体を引きずって注射器の所に向かい俺はそれを躊躇なく足に打ち込む。
ちゅうううとストローで飲み物を飲んだ時の感覚が足から広がりそして、痛みが和らいだ。これならいける走れる後で筋肉痛みたいな負荷が来ても関係ない。スザクのサポート、そして俺が右目を奪ったBOWも助けにいける。そして最後は———
狂学者!お前も俺だろ!?なら俺に力を貸せ!今だけでも・・・数秒だけでもいい!人の苦しみが分かるのなら!こぉぉおい!!!!!
『———脚部ユニット装着完了。チャンスは平凡さんが投与した薬の時間の三十秒です。それ以上は身体が持ちません———』
それだけありゃ充分だぜ!!!!!奇跡を見せてやろうじゃねえか!てかもっと早く反応しろよ。反応できたのなら。
『———現実にその脚部ユニットを持って来るのに手間取ったんですよ!死ぬ物狂いで行っていたので反応出来なかったんです!後はよろしくお願いしますよ———』
スザクの指示が来る前に俺は一気に走り出していく。
『キュウ!なんのつもりだ!一人じゃ無理だと言ったのはお前だろ!』
俺はその言葉に聞かずに一気にBOWへと走っていく。その間に近くに倒れていた人から刃物を頂戴し両手に構えていく。
奴らの一撃は重い。擦ればそれだけでも俺にとって十分なダメージになる。なら擦らないように立ち回ればいけるはずだ。
こっちを見ている方のBOWには手を出さないで後ろにいるもう一体の方に向かう。何故なら俺の速度は早いと言ってもそれは不意打ちとしては早いだけなのであって、元から見ている者からすれば一般の人よりもちょっとだけ早い程度だろう。
手前のBOWを踏み台にしていくと思わせて、そいつの横をすり抜けるようにして後ろのBOWの左腕の二の腕部に先程拾った刃物を差し込む。表側だったら筋肉で弾かれて返り討ちに合う所だが、肘の裏側ならそう簡単に硬くは出来ないだろうと思っての一撃だが、なんとか成功してBOWは痛みで俺ごと上に打ち上げる。
『———残り十五秒———』
「スザク!!!!!」
打ち上げられて空中で勢いがなくなるところで俺はスザクに声をかける。この体勢で俺はまともな攻撃は出来ない。だが、スザクと同時に攻撃を行えばどうなるか。俺を避ければスザクの鉄塊が、スザクを避ければ狂学者が脚部ユニットの中に用意してくれたナイフで相手の目を奪う。そうすれば今度は逃げられない。積みセーブだ。
と思ったのだが、スザクが向かったのは俺が刺した方のBOWではなく、カプセルを割った方のBOWの方に向かっていた。
スザク!そっちじゃねぇ!その奥だ!
『お前も俺の指示に従わなかっただろうが!聞くと思うか!?』
ああもういい!!!!!全部パーだよ全くよお!
『———残り七秒———』
しゃねえ、脚部ユニットからナイフを一本取り出して投げる。それを囮にもう一本のナイフを右手にしっかりと握りしめて、更に左手を支えに使って,落ちていく。
五・・・
先に投げたナイフが弾かれる。
四・・・
相手の目に狙いを定める。
三・・・
BOWは俺を返り討ちにしようとこちらを見上げて腕を構える。
二・・・
覚悟は決めた。
一・・・
俺のナイフを振り下ろすのと同時に相手の左腕の掌底が飛んできた。
『———リミッター限界時間だよ———』
BOWの腕は確かに俺に当たった。だが、その一撃では狂学者の作った脚部ユニットを壊すことは出来ず弾かれて,俺のナイフがギリギリ刺すことが出来た。




