安全な場所へ
「いくらなんでも殺す必要はあったのか?お前の仲間だった奴だろ?」
「関係ない。やられているのがお前だったらここまでしないだろうが、妹だからな。家族を見捨てるなんて出来ると思うか?」
そうだな・・・って俺の場合は放っておくんですかいな。悲しいなぁ。まあ家族じゃないからしょうがないか。
「多分敵もこの場所の状況を知っているかもしれない。イサリビのこともあるしあまり行きたくはないがインの所に行こうか。動けるか?キュウ」
「全速力は無理だがいける。俺がイサリビを運ぶからシラヌイ、お前が先行してくれ」
足の震えは止まらない。けどシラヌイの言うことは事実だ。だがああは言ったもののちゃんと動けるか分からない。それにイサリビのこともある。
イサリビにとって俺は敵だ。家族を奪った極悪非道な奴だと思っているに違いない。目が覚めた時に俺が背負っているっていうことが分かったら何をされるかわからない。運が悪ければ、殺されてもおかしくない。だけど俺が戦うことは出来ない。結局のところ殺されるのがイサリビか、他人かって事のだけだ。
シラヌイは弾数や弾倉の残りを確認すると、拳銃を手にとってそれも男から取り外したベルトを腰に巻いてそこに全て収める。
その間に俺はイサリビを背負い自分の持ちやすい形に調整する。頼むからインの所に着くまで起きないでくれ。
「準備は出来たな・・・キュウ、せめてナイフぐらいは持ったほうがいいんじゃないのか?」
今までは割り切る間も無く危険なことがあったからそうやって凶器を持つことが出来た。けど今は違う。今は割り切る時間が多少とはいえある。つまりこれは逆に考えれば自分の意思で人を殺せるか?ということでもある。
俺にはまだそんな覚悟もないし、そんな覚悟のない人間に殺される方も納得できないだろう。殺されるのならせめて覚悟がある人の方がいい。だから今はまだ武器を持たない。持てない。
「いい。入れておく場所も無いしな。よっと・・・よし行こうぜシラヌイ」
部屋を出てまずは十字路まで一気に向かう。地面を踏んでいる感覚はないが走れているみたいだ。ならいいや。このまま行こうか。
シラヌイは右側を見ているので俺は左側を見る。誰も歩いていない。もしいたとしてもすぐに移動すれば気付かれずに行けそうだ。
後ろを振り返りシラヌイにいないと首を横に振り、次のブロックに向かう。このまま行ければあと3回ほど繰り返せばインたちのところに行けるはずだ。無論あの部屋の中にいればの話ではあるが・・・信じるしかない。もしいなかったらあの部屋に籠城するだけだ。
2つ目3つ目も余裕で突破できた。あと1つ、こういう時こそ油断せず行きたいところだ。
「ちょっと待て。私が先行してインがいるかどうか確認してから来てくれ。もし制圧されていたらイサリビを庇いきれないからな」
耳元で呟くように次に行う事を話すと俺はそれを了承する。
よし、いなさそうだ。シラヌイが通路を抜けていく途中で、微かに誰かが近づいて来た。シラヌイか渡りきった後にその誰かが右の1ブロックに堂々と立っていた。見つかったのか・・・?いや、見つかってはいないみたいだな。けどこちらを向いたままだこれじゃあ向こうに渡れない。どうするか?
うーむ・・・しょうがないがここで待つしかない。迂回しようとしても、結局この通路に出なきゃいけないから意味がない。
シラヌイと共に敵を見てはいるが、何もせずただただこっちを見たり後ろを振り返ったりしている。なんか焦らされている感じがして、イライラしてきた。こりゃ確実にバレてるな。バレてないならこんな道見張る必要がない。そんなに見張りたいのなら中央部を制圧するなり監視室を制圧すればいい。けどしない所からすれば、制圧は出来なかったもしくはなかったから、見張りを置いたんだろう。
とはいえこのままじゃジリ貧だ。多少の———いや多大なリスクを無視してでも行かないと危ない。俺は大丈夫でも、背中にはイサリビがいる。彼女だけは守らないと。イサリビを守ることがシラヌイに日常を与えることになると思うから。
逆側を向いた。よし行けるな・・・!足の力を振り絞り通路を横切ろうとするが、その前に後ろから声をかけられる。
「何すんのさ!」
「がっ!?何を!?」
背負っていたイサリビが、俺に背負られていたことに驚いたようで、俺を突き飛ばしてしまった。流石に予想もしていない行動は反応しきれない。
突き飛ばされた事で大きな声を上げてしまい、敵に気づかれる。マズイ・・・本当にマズイ。このままだと俺が地面に頭を付ける前に殺される。ああぁぁあ———。
———この馬鹿が!身体借りるぞ!———
憤怒?なんでこのタイミングで?
———強制的に奪わさせてもらう!歯ぁ食いしばれ!———
身体を後ろに引っ張られるような感覚に襲われた後、目の前に俺の腕が現れ、その腕でくるりとシラヌイの方の通路に飛んだ。それとほぼ同時に弾が床を掠める。あのまま倒れていたら、頭に当たって死んでいただろう。
———そんじゃあな。無茶なことは極力やめてくれ———
あれ?何で今回は憤怒のこと覚えてるんだ?いつもなら覚えていなくて、会ったら思い出すって感じなのに・・・・・・。と言うことは今は関係ない。俺がこっちに来たって事はイサリビは今1人って事だ。向こうもこっちに誰かがいるって分かっている以上、もう抜ける事は出来ない。でも放置していれば増援が来るかもしれない、そうなればおしまいだ。くそっ!どうすりゃいいんだ。
「キュウ。ここは私が何とかする。イサリビもお前に助けられるよりは家族の私の方がいいだろう。部屋にインたちがいるか確認してくれないか?」
「それってお前ら2人を放置して行けって事だろ?何でだよ。そんなの出来るわけ・・・」
「雑兵には雑兵の出来ることがある。武器もないやつがほざくな。さっさと確認に行ってこい!」
確かにここにただただいるだけでは俺にする事は何もない。それに何とかイサリビを通すことが出来ても、この先が安全でなかったら意味がない。
シラヌイが俺の背中を押す。頑張れよと言う意味と取った俺はシラヌイの方を向き頷いて扉を開けた。




