第7話_不気味な城とまっすぐな道
「はあ......ホントに今日は疲れるわね......」
そうため息を落とすと、カーターは椅子に座りなおした。
「なんでだよ。すぐに助けに行こうぜ。鉄は熱いうちに打てっていうだろ」
カーターは誇らしげにそういい椅子を、まだ顔が青ざめて咳をしていながらもため息をつくリーンのほうに向けた。
「その鉄の構造を先に知らないでどこをどうやって打つのよ。まずは城のことを知らないといけないわ。
侵入するといってもどうやって侵入するかを考えましょうよ。そうしないと格好の獲物になるわよ。
カーター、あなた城の守衛だったって言ったわよね。その時には、城に侵入した人はどれくらいいたの?」
リーンは胸元を軽く抑えながら聞くと、カーターは過去を思い出すように答えた。
「そうだなあ......ほかの城のことは知らねえけど、月に1回くらいは侵入者がいたな。それも昼夜問わずな」
その発言を聞いたリーンは、少し考えてから、カーターにあるお願いをした。
(おかしい。この国は知略の国のはずなのに、月一回の侵入を許すなんて非効率だわ。普通そんなに入られるものなの?)
「まあいいわ。過去のものでも構わないんだけど、城の間取り図って持ってない?」
カーターは少し考えて、思い出したかのようにこう言った。
「おお。持ってるぜ。んで後は誰がどのあたりを警備してたかもざっくりとな」
リーンは続けさまに再集合の場所と時間を伝えた。
「じゃあ、それをここに持ってきて、3時間後に再度、訪れてくれる?」
「分かった。じゃあいったん帰るな。まだ病み上がりなんだから無理はするなよ?」
そう言いながらカーターはドアを開けて、出ていった。
カーターがドアを閉めると、リーンは小さくつぶやいた。
「......打つ場所を間違えれば、壊れるのは鉄じゃなくて、私の命ってとこかな?」
「みゃう」
ミアが悲しそうに鳴いた。
3時間後
「来たわね。」
リーンはドアの外に覚悟を決めたようなまっすぐなノイズが聞こえる。
コンコン。ドアを優しく開けるカーターがそこにいた。
「持ってきたぞ!あとほしいもも。栄養入れとけ!」
そう言うとがさつに袋に入れていたほしいもと図面をテーブルの上に拡げだした。
「あら、気が利くのね。ありがとう」
リーンも覚悟を決めたように広げた図面をじっと見つめていた。
(基本的に東棟へ行く道は2通り、一つは、草の茂みから進んで、東棟の1階の階段をひたすら降りていく道。そしてもう一つは、西棟の一般開放されているエリアの橋の下の入り口から東棟への直線。)
「ねえ、守衛の場所を聞く前に、この図面はいつの段階の図面?落成した時のかしら?」
「そうだな、5年前くらいかな」
続けてカーターは、持ってきていた水を一気に飲むと続けてこう答えた。
「5年くらい前なんだがよ、当時俺が守衛していた場所とかところどころ違うんだよな。なんか都度工事してたみたいでよ......」
そう言うとリーンは、再び図面に目を通し始めた。
「それで守衛の位置はな......」
カーターが説明をした守衛の位置を図面と見比べてリーンはまた、黙り込んだ。
(やっぱりおかしい。東棟の地下に行く道だけ、守衛の配置が少ない。それに比べて西棟の守衛が多いわね。それになんかこの配置、きれいに配置されすぎていて気持ち悪い。まるで数字が整列しているよう。例えるなら、データの一元管理に近いわね。)
「もう一つ教えて。侵入者は”どこで”捕まることが多かったの?」
そうリーンが問いかけると、カーターはめんどくさそうに答えた。
「そうだな......東棟が多かったかな。なんせお宝が東棟にあるって知ってる侵入者が多くてよ......」
リーンはハッとして、カーターに加えてこう聞いた。
「その侵入者たちって”東棟に警備が少ないって聞いていた”なんてことはないわよね?」
「おお。その通りだよ。なんでわかったんだ?どこかから情報が洩れてたみたいでよ......」
リーンは確信した。
(間違いない。意図的に東棟に侵入させるように守衛を配置している。それで、侵入された場合もマニュアル化されている)
「......最後に一つ。その侵入者たちは、”いつ”捕まったの? 入る時? それとも、宝を手にした後?」
そうリーンは尋ねると、カーターは即答した。
「ほぼ脱出時だ。なぜか侵入時に捕まることはないんだよな。侵入者が気が緩んだタイミングでどっと守衛が出てくるんだ。運がないよな。」
(違う。間違いなく、この城は脱出時に捕まるように計算し尽くされている。まるで侵入者の深層心理を逆手に取っているように見えるけど、それだけじゃない。”秘密”も関係しているのかしらね)
「そう。ありがとう。分かったわ。じゃあ作戦を説明するわね」
「まず前提として侵入経路と同じ脱出経路はダメね。脱出するときに捕まえる前提の守衛の動きになっているからよ。ということで侵入するのは西棟の橋の下の入り口から入るわ。」
すかさずカーターが質問する。
「なんでわざわざ守衛の多いところから入るんだよ。」
リーンは首を横に振りながら答えた。
「さっきも言った通り、脱出時に捕まえる前提の守衛の動きだって言ったわよね。東棟から入っても東棟以外に逃げ道がないことが1点。あとは西側に守衛が多いけど、あくまでブラフで設置しているだけだと思うのよ。侵入者が脱出するときにすべて東側に集まるようにおそらくマニュアル化しているわね。」
カーターはなるほどと理解したと思ったが、ふとあることに気が付いた。
「おいおい、じゃあ西側から入ったら、東棟側に守衛が集まるってことじゃねえか。それだと東棟の茂みから逃げられないだろ?」
リーンは落ち着いて言葉を紡いだ。
「まあ、最後まで聞いて、カーターさっきずっと工事をしているって言ってたわよね......ということは工事している人はどこか別の道から出入りしていると思わない?私たちはその道を使おうと思うわ。それがあるのはおそらく、東棟と西棟の中間あたりのどこかにあるはず。そこを私の”秘密”で見破ってそこからの脱出をするわ。」
「あ......後よ、レオンは監禁されているんだろ?なら鍵はどうするんだよ......」
カーターの質問にリーンは笑いながら答えた。
「あなたが自分で言っていたじゃない。お宝を持った後に捕まっているって、それが事実なら、レオンの部屋にも鍵は付いていないわ。多分内側からは開けられないようになっているだけだと思う。」
「いいわね。じゃあ決行は明日の昼、西棟から入るわよ」
リーンがそう言うと、カーターは慌てながらこう答えた。
「おいおい、白昼堂々やるってのかよ......」
続く
次回更新:7月19日(日)18:30




