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世界中の能力を喰らい尽くす偽りの遊戯~とある終末の観測者より~  作者: 古谷 怜
第一部_第一章_リーン編

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30/31

【第一章完】第30話_セプテム・コルウスの狙いとわずかな誤算

「さあ、殺戮ショーの始まりだ」

 クロウはそう言うと、ブクイ、ヒジェ、セユキはそれぞれ周りの塔の守護者たちとの戦いが始まった。


「1階はブクイ、2階はヒジェ、3階はセユキ、それより上は私が殲滅しましょうか。」

 クロウの言葉に呼応するように、それぞれが動き始めた。


「おっ、1階は俺か。ヒジェ、セユキお前らは上に上がれ。階段までの道は先に俺が作ってやる。」

 ブクイがそう言うと、自慢の魔法を詠唱する暇すら与えられず、恐怖に見開かれた顔のまま壁のシミに変わるくらいのパワーで自慢の筋肉で遠くに投げ飛ばしながら、階段まで走っていった。

「さすがの筋肉ね。さっき門番を喰らっていたけど、魔族のパワーってすごいわね。」

 ヒジェがそう言うと、セユキも後に続き階段に向かっていた。

「相変わらずブクイは野蛮だな。もっときれいに戦えないのかな。」

「うるせえよ。スタイリッシュだか何だか知らねえが勝てばいいんだろ。

 さあ来い。全員喰らってやるよ。」

 ブクイは笑いながら、守護者たちの体を掴むとそのまま手の力だけで目の前にいた相手を全員倒し始めた。


「さて、2階に着いたわね。セユキ。そのまま上に上がって頂戴。静かになるまで戻ってきちゃダメよ。女の秘密は隠さないとね。」

「何が女の秘密だよ。お前はただのサキュバスだろ。それもだいぶ性格が悪い方のな。」

 セユキが3階に上がったのを確認すると、ヒジェは取り囲んだ守護者たちに向かっていった。

「魔族ってことは耳がいいのよね。でも性別は分からないわ......それじゃあ。まずは自分の心臓を自分で貫きなさい。」


 ブシュ!!サクッ!!!


 ヒジェがそう言うと、9割の守護者たちは生気を失ったような虚ろな目をしながら、持っていた武器で自分の心臓を貫き、声を出すまでもなく、息絶えて行った。


「残りは女性ってところかしら。それなら......」

 パチン。ヒジェが指を鳴らすと、息絶えたはずの数体の体が起き上がり、守護者たちに向かって攻撃をしていった。残された女性兵士たちが『やめて、来ないで!』と泣き叫びながら、かつての仲間の死体に押し潰されていく。


「......死してなお、私に魅了されているものもいるのよ。残酷なまでにね。」


 3階に上がったセユキが見たものは、1階、2階とは異なり、規格外のサイズをしたゴーレムと羽の生えた大きなエルフの群れだった。

「ほう。魔族の国にはこんなやつらまでいるんですね......まあ私の前では無力ですがね。」

 そう言うセユキに対して、容赦なく集団で攻撃を始めたが、近づいてきた敵は全て灰と化していた。

 何が起こったのか分からず、恐れおののく相手に対して、説明を始めた。

「何をしたか分からないようですね。これですよ。」

 セユキはそういうと複数枚のカードを出して続けて説明をしていった。

「このカードに私の"秘密"を宿して、周りの相手に投げただけですよ。」

 笑いながら、セユキは相手が動く前にカードを投げ始めた。

「ふふ。私に触れてもダメ。カードに触れてもダメ。さあどうします?」

 先頭にいたエルフが何かを叫ぼうと口を開いた瞬間、その顔面からサラサラと灰になって崩れ落ちた。振り下ろされようとしていたゴーレムの巨大な拳も、空中でボロボロと砂のように風に流されていく。

 彼らは悲鳴を上げる暇すらなく、自分が死んだことすら理解できないまま、ただの灰の山へと変わっていった。


 一方クロウは、声の主を探すために各フロアを探していた。

(相変わらず皆さん元気ですね。それにしても声はフロア全体から聞こえていたが、それっぽい強さの奴は見当たらない。塔全体に効率よく音を流せるのは......)


 クロウは1階から一度外に出て、その先にあった謎の小屋を見つけた。

(やはりな。地下か。確かにあの塔自体が旧エルフの国というのはブラフ。正解の旧エルフの国は地下にあったってことですね。)

 クロウは小屋に入ると地下に続く道を見つけ、しばらく行くと一人のエルフの男が立っていた。


「お、お前。なんでここが分かったんだ?」

 そういうエルフの男に対して、クロウは笑いながら急接近をした。

「さあね。にしても一人とは、不用心過ぎませんかね?」

 クロウがそう言った刹那、入ってきたドアは完全に閉まり、代わりに目が赤く染まり、食欲に飢えたような3匹の魔獣が現れた。

「この魔獣たちはな。私以外を見境なく骨がなくなるまで攻撃をし続ける。まるでバーサーカーのような獣なんだ。」

 男がそう言うとクロウに向かって3匹が一斉に突撃し攻撃を仕掛けたが、クロウの目の前でなぜか急に止まった。

「な......なぜだ。」

 男がクロウに目をやると、そこにいたのは自身がまるで鏡写しになっている自分と同じ姿がそこにあった。

「くくく......従順ですね。偽物の私にも攻撃をしないとはね。指揮系統は変えさせてもらったよ。」

 クロウはそう言い、エルフの男目掛けて攻撃をするように命令をした。

『目の前の偽物を殺せ』

 その命令が下された瞬間、3匹の魔獣は躊躇なくエルフの男へ牙を剥いた。

「ち、違う! 私が本物だ! やめろ、ぎゃああああっ!!」

 男の悲痛な叫び声は、自身の肉が引き裂かれ、骨が砕かれる鈍い咀嚼音にかき消されていく。

 飛び散る鮮血を眺めながら、クロウは退屈そうに呟いた。

「残念。私が手を下すまでもなかったな。みんなのところに戻るとするか。」


 クロウは地下室を後し、塔に戻ると静寂な空間から、バリバリと死んだ相手を貪るブクイがいた。

「みんな、ご苦労だったな。時間をかけて後始末をして私たちの拠点にアレンジしましょうか。」


 クロウがそう言うと占拠したフロアを各々が自分の部屋のようにカスタマイズをし始めた。



 ------------4日後


「皆さん。集まってもらったのはほかでもない。......ムーレが死にました。」

 クロウがそう告げると、驚いた表情のブクイと薄ら笑いを浮かべるセユキ、無関心そうに自分の爪を見るヒジェの三人は、三者三様の反応を示した。

「さらに、魔族の国とデシラ王国は対立することなく、むしろ協力して旧エルフの国に向かっているとの報告もありました。」


 そう伝えるクロウに対して、ブクイは言った。

「な......ムーレがやられたってのか。あいつの速さは尋常じゃなかったからな。

 ほお、人間の中にもやるやつがいるみたいだな。どんな奴だろう。食ってみてえ」


「ムーレをやったのは、レオンというデシラ王国の剣士だ。近くには、秘密を奪うあの女と元奴隷の女がいたみたいだな。」

 そうクロウが言うと、ヒジェは自分の爪を見るのをやめて、恐怖した目でクロウを見つめていた。

「な......あのおばあさんが嘘をついたっていうの?

 カードにはそんな奴隷の女なんて情報は......」

「おそらくお前もおばあさんも秘密を奪う女に一杯食わされてたってことになるな。安心したまえ、ヒジェ。お前をどうこうするつもりもないからな」

 ひどく怯えたヒジェは落ち着きを取り戻した。

「この国に向かっているのは、その3人に加えて魔王ゼル、そして”あの本”を持った男が来ている。」

 クロウがそう言うと、セユキは、突然真顔になりクロウに向かってこう言った。

「”あの本”はこの国にあると思って探してはいたが、別のところにあったとは......

 それに国同士で対立してもらう予定だったが、計画を少し練り直さなくては、」

 セユキがそう言うが、クロウは笑いながらセユキの肩をたたいた。

「そうですね。期待してますよ。セユキ。秘密を奪う女と、”あの本”。それがこの塔に来た時に何かが起こる。私はそう見込んでいるのでね。」


「後は、彼女らがこの塔に来るまで、じっくり待つとしましょうか?駒は徐々にここに吸い寄せられるように集まっている」

 そう言うと、クロウは暗闇の先を見つめ、まるで愛おしい玩具を思い浮かべるように、その端正な顔を不気味に歪めて微笑んだ。

「ああ、楽しみだ。”神”を殺すのがね」


【第一部】第一章~リーン編~ 【終】


 第31話_【第一部】第二章~ガルド編~ 


 続く

次回更新:8月16日(日)18:30

リーン編をお読みいただきありがとうございます。

第二部のガルド編は少し期間を開けさせていただきます。

更新をお待ちください。

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