第24話_盤上の支配者と魔王の覚醒
「リーン殿、お持ちしました。」
王の間にいたカーターがこのゲームをするのに必要な道具を持ってきた。
「じゃあ、ゲームのルールを説明するわね。お互いの持ち点は100点からスタートよ。全10回戦で相手よりも点数が多い方が勝ちね。各1回戦ごとにお互いに点数を賭ける。そしてその賭けた点数より大きい方が相手が出した点数をもらえるというルールよ。」
リーンの説明を聞いたゼルが不思議そうな顔をしてリーンに聞いた。
「ルールは分かった。だが、ずっと100点を賭け続ければ、お互いに負けることはないってことになるが、そこはどうなんだ?」
ゼルにそう聞かれる前にカーターから24枚のカードを受け取り、追加でルールの説明をした。
「確かにそうね。でもそこで、最初に言った”三すくみ”の追加の制約よ。
魔族の国についてはどうか知らないけど、人間の国では、”人”、”金”、”情報”の循環ができているの。”金”は”人”に強く、”人”は”情報”に強く、”情報”は”金”に強いっていう風にね......
そのカードに強いカードを出した場合は、自分が出した点数は2倍になるという制約ね。」
「その3枚のカードを各3枚それで9枚。残りの一枚は自由よ。好きなカードを選んでちょうだい」
リーンの説明を聞いてゼルは少し考えて、リーンの手元にあるカードを10枚受け取った。
(ゼル......あなたなら気が付けるはずよ......この私が渡したカードの一枚に込めた”意図”を)
「言い忘れていたけど、相手の持ち点では絶対に勝てない点数を出すのはルール違反よ。」
そうリーンが言うと、ゼルは驚きながらムーレに聞いていた。
「なあ、ムーレ。この国では、勝てるときに最大火力でぶつかるのが常識じゃないのか?」
「ええ、現実であればそうでしょう。ですが、これは知略の国のゲームですから、そういうルールがあるのは当然かと......」
説明するムーレに不思議そうな顔をしているが、ゼルはこれが常識なんだと理解したようだった。
中庭にあった机と椅子をカーターが用意し始めているときに、リーンは、レオンとカナエとミアを呼んでいた。
「レオン、私に何かあったら、カナエとミアを守ってくださるかしら?おそらく、ゼルはかなりの切れ者。私もそれを見込んである仕掛けをしたの。もしそれに気が付かずにゲームが進行したら......その時はよろしく。」
リーンはいつにもなく真剣な表情で、緊張を解くことなくレオンに話した。
「分かった。隣にいるムーレも相当腕が立つとみているから、常に警戒を怠らないようにしておくぜ。カーターとエルドにも伝えておく......リーン、無理はするなよ。」
レオンのセリフに対してリーンは首を縦に振り、用意された椅子に腰を掛けた。
(この三すくみの意味......そしてこのゲームの唯一の抜け道に向かって最善を尽くすだけね...)
第一回戦先に点数とカードを置いたのは、リーンだった。
「さあ、私はカードを置いたわよ。ゼル。あなたの考えはお見通しだもの。」
(最初は、小手調べってところで大きい数字は出せないはず。三すくみの最後、あえて『情報』に最も時間を割いて説明した。人間界を知ろうとしている今のあなたなら、その『正体不明の力』を手に取りたくなるはず。)
ゼルはカードの扱いに戸惑いながらも点数とカードを置いた。
「オープン」
勝ったのはリーンだった。リーンが出したのは”人”のカード。点数は6点だった。対するゼルが出したのは”情報”のカード。点数は10点だった。三すくみの効果で12点対10点。
「ち...俺の負けか。10点程度で喜ぶんじゃねえよ......」
ゼルはそうつぶやくと、カードをテーブルに捨てた。
リーン:110点 ゼル:90点
第二回戦、先に点数とカードを置いたのはゼルだった。
「さあ、これならどうだ。俺を惑わすのは無理だと気が付くんだな。」
(ふん。先に出しちまえは主導権は握れるだろ。そして、4枚持っている”人”のカードを出すかと思わせておいて、”金”のカードだ。)
リーンは少し考えて点数とカードを置いた。
(あの自信は虚勢ね。1回戦の動きを見たところ、慎重で合理的な性格のようね。一番ゼルが理解しているはずの”人”のカードを出すことはない。そしてカードの枚数のバランスを考えるはず。となるとカードはこれで決まりね。後は点数だけど、少し高めに設定しておけば間違いないかしら。)
「オープン」
またしても勝ったのはリーンだった。リーンが出したのは”情報”のカード。点数は30点、対するゼルが出したのは”金”のカード。点数は15点だった。
「やっぱり狙い通りね。ゼルあなたって単純なのね。」
笑いながらゼルに言うリーンを見て、ゼルの感情には怒りの感情が見え始めてきた。
リーン:125点、ゼル:75点
第三回戦、両者カードを出すのに時間がかかりほぼ同時に点数とカードを置いた。
リーンはカードを置くと同時にカードを出したゼルに対してこう言った。
「......”人”のカードね。ホントに単純なんだから、しかも小心者ね。あなたの点数は20点。そう。負けたばあのリスクとして、土俵際の点数の55点は持っていられる。このゲームの本質をまだ見極められないあなたらしい手ね。」
「ちっ......」
「オープン」
リーンの3連勝となった。リーンが出したのは、”金”のカードで点数は20点、ゼルが出したのは、”人”のカード。点数は20点。三すくみの効果で、リーンが40点となった。
リーン:145点、ゼル:55点
3連敗となったゼルは、ムーレの方を向いて、両者頷くと椅子から立ち上がり、強烈な殺気を放ち、テーブルを蹴り上げた。
「おい。もうこんな茶番はごめんだ。知略だか何だか知らねえが、そこをどけ。邪魔するなら殺すぞ......」
ムーレも呼応すると、一歩、また一歩と王城の方へ足を進めていた。
だが、テーブルを蹴られてもリーンは、動じず椅子に座り続けていた。
「聞こえなかったのか?
そこをどけって言ってるんだ。俺らは殺しに来たわけじゃねえ。
だが、常識だか何だか知らねえが、怪我だけでは済まねえぞ。」
そう言い、椅子に座るリーンの首を片手で持って、リーンの首を折ろうとしていた。
「来ないで、私は大丈夫だから......」
リーンを助けようとするレオンを制止して、ムーレの方を指さした。そこには、ムーレに心臓を突き刺されそうなカーターがいた。
「ちっっ、リーン死ぬんじゃねえぞ。」
そう言うとレオンはムーレに衝撃波を飛ばして間一髪カーターの体へのダメージはなかった。
「お前ら。どういうつもりだ。武力行使ってなら俺が相手になるぜ。かかってこい。」
応戦するレオンを横目にリーンは、ゼルにしか聞こえないような小さい声でこう言った。
「はあ、はあ、ムーレは......裏切り者よ」
(事実誤認......)
周りからは、ゼルがそのままリーンを殺しそうに見えていたが、ゼルはリーンの首から手を離していた。
続く
次回更新:8月5日(水)18:30




