第23話_デシラ王の迎合と魔族の衝突
「カーターがレオンを連れて戻りました。」
デシラ王の側近が王の間に報告がありしばらくするとレオンとカーターは王の間に現れた。
「カーターより報告いたします。レオン殿を先に連れてまいりました。リーン殿ともう一人のお仲間は後日到着とのことです。」
レオンは王のことを睨みながら、跪いていた膝に手をかけ、立ち上がった。
「俺は、親父のことを助けたいと思ったわけじゃねえ。この国が心配できただけだからな、勘違いするなよ。」
カーターがレオンを制止しようとするも、デシラ王はそれを止めた。
「まさかお前が一番最初に来るとは驚いたぞ。それでリーンはいつ来るんじゃ?」
まるでレオンの帰還を期待していないかのようにデシラ王はカーターに尋ねた。
「早くて魔族の王ゼルが来る直前、もしくは間に合わないかもしれないです。体に深刻なダメージを受けているように見受けられましたので、もしかしたら......」
レオンはデシラ王に無視されたと感じると指先が掌に食い込み白くなるほど強く握りしめ、カーターの発言を聞く前に部屋に戻っていった。
「そうか......時間まではまだ2日はあるからのう。ゆっくりと待つとしようか。」
デシラ王はそう言うと、椅子に深く座り直し、カーターに退出を命じた。
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2日後
「ふむ。よし。着いたな。ムーレ、お前は一緒に来い。二人で行くのが礼儀なんだろ?」
魔王ゼルはそう言うと側近のムーレを連れて王城の元に向かっていった。数百の軍勢は町の南側で整列をさせていた。
「お前らは、ここで待機だ。俺の命令がなく勝手なことをしたら分かっているな?」
魔王の軍勢はゼルの冷たい目線に背筋がびくっとなり、全員がその場で立ち尽くしていた。
王城の南側の軍勢を窓の外から見たデシラ王は、窓の方から室内へと目を通し、目の前にいるリーンたちの方を向いた。
「リーンよ。早速なんじゃが、カーターから聞いていた通りじゃ。魔王ゼルが我々の城に向かってきておる。そこでお前たちがあいつらのところに行き、ゼルを追い返してきてくれ。見ての通り、町の人々が恐れをなしている。一刻も早くデシラ王国から出ていくように仕向けるんじゃ。」
デシラ王の発言に対して、リーンは少し考えこんでいた。
(出ていくように仕向けるって......ただ追い返すだけだと反乱の可能性があるし、わざわざ王城に来た目的も何も聞いてないじゃない。しかも、先日見かけた時には破壊衝動のようなノイズはなかった。ということを考えると、ただ追い返すわけにはいかないわね。)
「ねえ、国王様、一つ確認だけど、追い返すための手段は問わないってことでいいかしら?そうね......たとえあなたの首が飛んだとしても......」
王の間の側近がリーンに向かって剣を抜こうとしているのをデシラ王は静止して少し考えていた。
(ぬう。わしの覚悟を確認しに来おって......小娘め...負けたらみんなの前で殺してやる。)
「それが一番早く追い返せるのならな。ただし、武力では確実に勝てぬ。だから、”デシラ王国”らしいもてなしをしてあげろ。ただし、お前が負けたら......分かっておるな。」
デシラ王の発言にリーンは即座に反応した。
「分かったわ。ただしもし私が"勝てなかった"ら、あなたの元にゼルを連れてくることになるから、それだけは覚悟しておいてね。」
「あ、あとこの後のゲームで使うものを用意してくださるかしら。用意するものはそこまでは多くないわ。」
そう言うと、リーンたちは、デシラ王に背を向けて中庭に移動していった。
「おい、あいつらを処刑する用意も合わせてしておけ!」
リーンたちが、王の間から出て行った後に不機嫌そうにカーターにそう言い、中庭に行ったリーンたちに目をやった。
中庭に移動している際に、リーンはレオンに向かって尋ねた。
「ねえ、レオン。あなた何か変わったわね。そう、覚悟を決めたというか......」
レオンは少し驚きつつも戸惑いながら、リーンの方を向いた。
「......ああ。でもまだ迷いはあるがな。けど、お前やカーターと触れて俺の弱いところが見えた。だからこそ何が何でもリーン、カナエ、ミアは俺が守るから、引き続き支えてくれ」
そう言いながら、中庭に到着すると、ゼルと側近のムーレも中庭の中心に着いていた。
一瞬の膠着状態......聞こえる音は風が吹く音、そして、エルドの盾と防具がすれる音だけが聞こえていた。
最初に話したのは、リーンだった。
「私は、リーン。デシラ王の代理の者として、ここに来ています。あなた方にいくつか聞きたいのだけど、いいかしら?」
「ああ。構わねえ。何でも聞いてくれ。俺は、魔族の国の魔王ゼルだ。そして隣にいるのは、側近のムーレだ。」
ムーレがゼルの回答を止める前にゼルは口を開いた。
「ありがとう。理解のある王様で助かるわ。まずは一つ目、なぜこの大群でしかもどの町も襲わずにここまで来たの?」
リーンが質問すると、ゼルは不思議そうな顔をして、ムーレの方を向いて、ムーレの耳打ちを聞いた後、答えた。
「え?
......王様の謁見をする際には、軍団を引き連れてくるのが”常識”なんだろ?
ムーレや他のやつから聞いたのだが、町を襲うなっていうのもそれが常識というか......」
ゼルの回答にリーンは困惑した。
(え......それだけ?しかも軍団を引き連れるのは常識じゃないし......でも本心っぽいわね。はあ、調子狂うわね。)
「わ、分かったわ。二つ目ね。あなた方がこの国に来た目的は、侵略か略奪かどっち?」
その質問をした瞬間、ムーレとゼルから強烈な殺気が漏れ出すのが見えた。
(やべえ、リーンのアホ......マジでこの国を滅ぼされてえのか...)
レオンは剣に手をかけると、ムーレも応戦する素振りを見せたが、ゼルが制止しさっきとは違う、低く静かな声で言った。
「お前たちに語る必要はない。俺は、デシラ王との謁見を望んでいる。それだけだ。分かったらとっとと去るがいい。」
ゼルの声の変化にリーンはわずかな焦燥を感じ取っていた。
(ゼルからは焦燥......殺気。ムーレからは、策略、怠惰......もしかしてこの二人って一枚岩ではないのかも...)
「失礼したわね。でもこの国では、国王に謁見するためには、代理の者とのゲームをしなければならないのが常識なの。もしもゲームをして私が勝てなかったら、謁見を認めるというね。」
リーンの発言に対して、ゼルとムーレは何かを相談していたが、ムーレがゼルの代わりに答えた。
「それが常識なんだな。それなら勝負をする他ないな。それで、どんなゲームなんだ?殺戮ゲームか?宝探しか?」
リーンは、ハッタリが通ったことに安堵することなく、ゲームの詳細の説明を始めた。
「そんな野蛮なゲームしないわよ。そうね、例えるなら三すくみによるポイントの奪い合いよ。」
続く
次回更新:8月4日(火)18:30




