第22話_王都への集結とデシラ王国の終焉の予兆
カナエが目覚める前に先に出たレオンとカーターは夜遅く、王都に最も近い宿屋に着くとベッドに腰を下ろした。
「このペースなら明日中には、王城には着きそうだな。もうひとっ走りするか。」
そう言うカーターの横で黙々と素振りをするレオンを見ていた。
「なあ、レオン。お前何かあったのか?カナレレ王国を出てからというもの、素振りをしているその剣が乱れているぞ。」
一心不乱に剣を振るレオンカーターの問いに答えることない。
「おい、レオン。聞いているのか?」
語気を荒らげてレオンに再び話しかけた。
「え?なんか言ったか?わりぃ、わりぃ......」
レオンは剣を振る手を止め、カーターの方を向いて、続けてカーターに問いかけた。
「...なあ、カーター......お前は人を殺してしまったことはあるか?」
真顔で聞くレオンにカーターは目を丸くして、しばらく考えていた。
「......あるよ。3回ほど......今でも殺したやつのことは夢に出てくるし、後悔もしている。レオン...まさか......」
カーターが答えるとレオンは頷き、静かにでもゆっくりと心の中を話し始めた。
「......ああ、カナエってあの宿に寝ていた女が殺されそうになって、それで、、周りが見えなくなっちまってよ...あいつナイフを持ってた。そのナイフを弾くだけでよかったんだ。でも、俺......あの気持ち悪い感覚がずっと俺の手の中に残ってる。何度手を洗ってもあの感触が...剣を振っているときも寝ているときも......」
レオンは、ベッドに腰を掛けると、俯いたまま、声も上げずに泣き続けていた。
「......そうか。俺も初めて殺しちまったときは、剣すら握れず1か月くらいぼーっと何も考えないようにしてたっけな。そんな状態の中、とある人にこう言われたんだ。」
「悩んだところで、やってしまった事実は変わらんし、時間が解決するなんてのは詭弁だ。何のために、誰のために剣を振るのかを悩み抜けってな。
...いいか、目に見えているものだけが正解ではない。だが、目に見えないものばかりを追いかけるな。今、お前の目の前にあるのは何だ。どうすべきなのか、それだけを考えろってな。」
カーターがそう言い、泣いているレオンの頭をぐしゃぐしゃとすると、そのままカーターは眠りについた。
(......目に見えているものだけが、正解ではない......か。リーンにも救った命の価値を上げろだったか。カーターが言われた人とリーンは同じことを言っているようだな......そうだな。悩み方を変えてみるか。過去のことも含めて今の俺だもんな。)
「ありがとな。カーター」
レオンもそう言うと眠りについた。
隣でレオンの気持ちに触れ、泣いているカーターに気が付くことはなかった。
「それじゃあ、カナエ、あなたの知っている近道を通っていきましょう。まだお互い病み上がりだから注意しながらね。」
リーンはそう言い、カナエが進んでいく方向にミアと一緒に歩いて行った。
(恐怖の感情は消えていて、覚悟まで分かるわ。何が精神的に弱いよ。男たちって見る目がないわね。私よりも精神力は強いじゃない......)
「リーンさん。こっちです。こっちです。急いで」
カナエが行く方に指を差すとそこは石にはコケがびっしりで、草木が生い茂り、虫がいたるところにいるような場所だった。
「ちょ......こんなところを行くの?正気?私、虫とか無理なんだけど......」
そういうリーンを横目にどんどんカナエは進んでいった。
(大胆なんだか、繊細なんだか、カナエとのこれからの旅が怖いわね......)
「あ、そうだ。カナエ。私のことはリーンでいいわよ。」
どんどん進んでいくカナエに向かって、蜘蛛の巣に引っかかるなどして嫌な顔をしているリーンが言った。
「分かりました。リーン。改めてよろしくお願いします」
笑顔のカナエのことを木々の隙間から陽の光がさしているのが見えた。
「夜が更けてきたわね......このあたりで野営をしましょうか。」
二つほど町を抜けたであろうあたりで、リーンが苔むした石からコケを取り、石に座った。
カナエも疲れ切った様子で、息を整えながら同じ石に座り、ミアを抱えてなで始めた。
「じゃあ、安全かあたりを見渡してくるから、ミアとここで待って、火でもつけてもらえるかしら?」
カナエは首を縦に振ったのを確認すると、リーンはあたりを見渡しに高台に向かって歩いて行った。
(......私たちに危害を加えそうなノイズは聞こえないわね。このあたりなら魔物も少ないから大丈夫かしら......)
「え...何あれ......」
高台から見えたものそれは、数百にも及ぶ魔族の行進だった。その中心にいたのは、全身が真っ赤な肌で背中には筋肉でできた羽のようなもの、そして眼鏡をかけたひときわ目立つ魔族がいた。
(これが魔族の軍団......少し見ただけでわかる圧倒的な威圧感、、そして統制の取れた行進。だいぶ気を引き締めないと......!!!)
リーンは高台から急いで体が見えないように姿を隠した。
「??ゼル様、何かありましたか?」
魔王ゼルの横にいる男がゼルに尋ねると、ものすごいスピードで光の矢をある方向に向けて飛ばしていた。
「いや。何でもない。俺らの世界では見ない動物みたいだな。」
「そうですか......では引き続きデシラ王城へ向かいましょう」
そう言うと行進をつづけていた。
(あれがゼルね......それに今の光の矢は何?私の方への矢ではないけど......でもあの軍団からは戦う意思は見えなかった。でも何か策略のようなそんなノイズは聞こえてきたわね。)
リーンは、草陰に隠れながら分析し、そしてカナエの元に戻っていった。
「きゃあぁぁぁぁ......」
「みゃうぅぅぅ」
カナエの方から声が聞こえてきたのを確認し、走ってカナエ達の元に行くと、そこには死んだイノシシのような動物に光の矢のようなものが刺さっていた。
「どうしたの?」
リーンがそう聞くとカナエは今起きたことについて説明をした。
「あ...あのリーンが高台に行った後に、この動物が遠くからゆっくりと歩いてきたんです。しばらくは距離を保っていたのですが、突然、突進をしてきたんです。でも私たちに当たる瞬間に矢みたいなものが飛んできて......」
(あの魔王の光の矢に助けられたみたいね......)
リーンは、何もなかったことに安堵し、さっき高台で見たものについて、カナエに説明をし始めた。
「魔族の軍団がいたのよ。それも結構な速度で王城へ向かっていたわ。私たちも急ぎましょう。」
そういうとリーン達は急いで移動する準備を始め、王城へ向かった。
「予定より一日早く着いちゃったからこの辺で酒でも飲もうぜ。」
ゼルたち魔族の軍団は、予定日より一日早く、王城の近くについて野営をし始めていた。
これから始まるのが、地獄だとは知らずに夜を明かしていった。
続く
次回更新:8月3日(月)18:30




