第20話_強いた犠牲と残された価値
「おい。いたぞ」
リーンたちが部屋を出てからしばらくした後に
とある一人の掛け声と同時に部屋の中へ入り、その場にいる者たちを拘束し始めた。
「ワコルはどいつだ?それに用がある。ほかの奴は静かにしていろ。」
そういうと甲冑を着た騎士のような人が、
ワコルを探し始めたところで、拘束された全員がワコルのほうを向いた。
「お前がワコルか?
この毒のうわさを聞いてきたんだが、製造方法を知っているのはお前だけか?」
騎士はワコルの方を向くと、ワコルは首を縦に振った。
「お願いします。殺さないでください。
あの方の言いつけ通り、改良した毒の情報は誰にも言っていません。」
ワコルが懇願すると、騎士はワコルを引きずり部屋を出ていく最中にこう言った。
「そうだ。お前にはまだ利用価値がある、そう。能力が高いからな。お前に自由はないが好きに毒の研究ができるようにしてある。さらなる改善をしてくれよ。」
笑いながら騎士がそう言うと、ワコルは何も言えなかった。
「よくも俺の息子を......あいつら絶対に許さねえ......」
そう言い騎士たちとともに部屋を出て行った。
「お前らは好きにどこにでも行け。
ただし今日あったことは誰にも言うなよ。破れば......分かっているよな」
最後に部屋を出て行った騎士がそういい、何か魔法のようなものをこの場にいる全員に向かって唱えていた。
「あれ......俺たち何でここにいるんだっけ?」
アジトにいた全員がそうつぶやくと、そろそろとアジトの外に出て行った。
そこに残ったのは、カラスや蝙蝠につつかれ始めていた息子の亡骸だけとなった。
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「ん......ここはどこ?」
リーンが目を覚ますとそこは、まるで何もないと思えるくらい空っぽな真っ暗な世界だった。どこに行くにも真っ黒で覆い尽くされているような世界だったが不思議と怖い感覚はなかった。
(確か......さっきまで......アジトにいたはず。体も痛くないし、何も感じない。でもここは?もしかして私死んだのかしら......)
そう思いながら、周囲を見渡した。
「レオン、カナエ、ミア、どこなの?また、私は一人になってしまったの?」
そうつぶやくとリーンは、真っ暗な世界の中に一か所光があるのを感じ、一直線にそこに向かっていった。
「これは何?本?」
そこは、まるで暗い海の底のような闇の中に微かにともる本を見つけ、それを手に取った。
(看破、嘘、浮遊、硬化、感覚遮断、正義、増幅、事実誤認......分からないのもあるけど、これって私が奪った秘密が書かれているの?)
その本をぺらぺらめくっていると、本の中から男の声が聞こえた。
「そうか。この本に書かれている言葉は俺が口に出すだけで、使えるのか。今は看破しか分からねえ。」
(この本がしゃべっているの?それとも、本の先で誰かが話しているのかしら。試してみましょうか)
「ねえ、私の声が聞こえる?あなたは誰?」
リーンがそう言うと、真っ暗だった世界が晴れ、どこかに戻される感覚に陥り、気が付くとリーンが目覚めていた。
「おい。俺はガルドだ、、、、~~」
その言葉が聞こえたときリーンは目が覚めた。
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「は!ガルド......」
リーンの顔を心配そうに覗く、レオンとミアと目が合った。
「はあぁぁ、よかった。1週間目が覚めてなかったんだぞ。ホントに心配したんだぞ。これ以上無理をするな。」
目には涙を浮かべ、安堵そして、申し訳なさのノイズが聞こえてきた。
「そうね。本当に迷惑をかけたわね......カナエは無事なの?」
リーンがそういい、横に目を向けると、まだ眠っているカナエを見て、ベッドの端に腰をかけた。
「医者が言うには大丈夫だそうだ。ただ、精神的に参っている部分もあるからもう少し寝ているかもとのことだとよ。もうほんとに一大事だったんだからな。医者も死ぬ直前だったって言ってたぞ。」
そういうレオンは、二人を担いだ後のことを説明し始めた。
「あのアジトを出た後に、お前らをベッドに寝かせて、町の医者に手当たり次第に声をかけたんだがよ、お前らの状態を見るなり諦めて帰っちまったんだ。なんか、魔力で負った傷なら治せるが、それ以外は無理だといってな。」
その時のリーンとカナエの状態は、呼吸は乱れ、口からは血を吐き続けて、痙攣が止まらなく、そして肌には毒に侵されて全身が紫色になっていた。
「そしたらよ。突然、どこにいたかも分からねえ、ボロボロの服を着たやつが来て、治せるって言い始めてよ。でもそれには膨大な魔力が必要だと言ってきた。でも俺には魔力なんてねえしよ。でもそこに......」
レオンがその続きを言おうとしているところで鳴いたミアをなでながらレオンは続けた。
「みゃう。」
「そう。ミアがワコルの息子が持っていた魔具を咥えて持ってきたんだ。魔具に入っている膨大な魔力を使って二人とも治してくれたんだよ。マジでミアに助けられた。そこから1週間ずっと寝ててさっきリーンが起きたんだよ。」
レオンが状況の説明が終わった後、しばらく沈黙をして、リーンが聞いた。
「ほんとにありがとう。みんなが居なければ、私死んでたかもしれないわね......
それで一つ気になったんだけど、カナエは精神的に参っていて目が覚めないってことは私の精神力が図太いってことを言いたいのかしら?」
笑いながら聞くリーンにレオンも笑いながら答えた。
「当然だろ。リーンとあったやつ全員に聞いても図太いって答えるぜ。
......そんな冗談を言えるなら、お前は大丈夫だな。」
レオンが笑っていると急に真顔になった。
「ねえ、レオン。カナエが起きる前に聞いておきたいんだけど、あなたは、あいつを殺したこと後悔してる?それとも......」
レオンは、しばらく何も答えなかった。
(後悔、後ろめたさは感じるわね。でも同時に諦め、少し興奮もあるかしら?)
「そう。分かったわ。でも一つだけ言っておくわ。あれは決してあなたは悪くなかった。失わせた命より、救うことができた命の価値を考えて。どうやったら救った命の価値を上げられるかを」
リーンがそう言うと、レオンはじっとリーンの目を見た。
「そう......だな......でもリーンの制止を振り切ったことは申し訳なかった。」
突然、ドアをノックする音が聞こえた。
「レオン様レオン様いらっしゃいますか?」
その声は、息が整っておらず、急ぎのような声でレオンのことを呼んでいた。
「その声、カーターか?そんなに急いてどうしたんだ?」
ドアの向こうにいたのはカーターだった。
「はい。実は魔族が......」
続く
次回更新:8月1日(土)18:30




