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世界中の能力を喰らい尽くす偽りの遊戯~とある終末の観測者より~  作者: 古谷 怜
第一部_第一章_リーン編

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第17話_捻じ曲げられた事実と隣り合う献身

(何が起こったっていうの?見間違い?いやそんなはずは......)

「おい。お前の回答は間違いだ。ほら見ろ。透明だろ?」

 ワコルがそういい、魔具を見たリーンは確かに透明なのを確認した。

「ほら。間違えたんだ。約束通り、毒を1滴早く飲めよ。」

 ワコルがスポイトに毒を一滴吸い出すと、リーンの口元までニヤニヤしながら持って行った。


「気持ち悪い。分かったわよ。自分で飲むからどいて」

 自分が見た真実と異なることに頭の回転が追い付かないまま、スポイトに入った毒を一滴分飲み込んだ。

「っっっ......痛い......」

 毒を飲んですぐ、リーンが小さくつぶやくと、全身をハンマーで殴られたような痛みと刃物で切り付けられたような痛みが同時に彼女を襲うと、立ち上がることができずにうずくまっていた。

(......確かに死ぬほど、痛い。でも耐えられない痛みではない。”嘘”の秘密を1日に2回使ったあの時に比べれば、死にたいと思ったことはないわ。)

 その様子を見たレオンとカナエはすぐにリーンのそばに駆け寄った。

「おい、大丈夫か。全身痛いのか?俺にできることはないか?」

「リーンさん。大丈夫ですか?」

 そう声をかけられるが答えず、リーンから二人に質問をした。

「何とか、大丈夫。頭は動くわ。話している内容を聞かれたくないから小声で二人に確認するわ。」

「まずは、レオン。あの魔具。一人目と二人目の時に挙動が違ったってことはあった?」

 痛みにもだえながら涙目になりながら、レオンの方を向いた。


「無理はするなよ。最悪、俺が全員ぶったおしてでも助けるからな。んで、挙動については俺の目が正しければ、一瞬黄色っぽくなったんだが、透明に変わった感じだな。でもその男やワコルの息子に変わった様子は見られなかったぜ。」


 レオンが怒りに任せるような表情をしながら、そう答えた。

「そう。ありがとう。次にカナエ。これまで見てきた奴隷で戻ってきたら急に性格やワコルの態度が変わったような人っていなかったかしら?」


 痛みに慣れてきたのか、いつものような、冷静な声に戻ってカナエのほうを見た。


「はい。理由は分からないけれど、戻ってきた人の中でワコル様に目をかけてもらえるようになった人はいました。性格までは......私はあまり積極的にコミュニケーションをとる方ではなかったから......」

 カナエに視線を向けると、何かを我慢しているような表情をしていた。

「そう。二人ともありがとう。何となくだけど分かった気がするわ。次もおそらく私の回答は外れる......でもその時にワコルに注目していてもらえるかしら。

 何か気になった点があれば、またこうやってうずくまるからその時に教えて、口元、手の動き、目線とか何でもいいわ。」

 レオンとカナエが頷くとリーンは立ち上がり、続きを始めようとしていた。


「ほう。1滴目の毒で倒れないとは......ここでショック死するやつもいるのに。すごい胆力だな。」

「もっと、悶える顔や表情を見たかったな。」

 ワコルと息子がこう言うと、周りのギャラリーも盛り上がっていた。

(ここにいる人たち......人って言っていいのかしら......)


 口元に少しついた血を拭くと3回目に入って行った。


(さっきの二人目と似た感じの人は......この残り3人の中にはいないわ。なぜ?......)

 リーンは、残りの3人ではなく、初めに除外した5人のところに行った。

(!!!いた。顔も声も違うはず......なのになぜ?まるで、さっきの人と中身がすり替わっているかのようね......この人で間違いない。だけど、おそらく間違えるわね......)


 リーンは少しふらつきながら、剣に手をかけているレオンと、口を強く嚙み何かに耐えているようなカナエへアイコンタクトを送った。


「じゃあこの人が2人目の魔法の秘密を持っている人ね。」

 そう言うと、ワコルはその男を連れて、魔具のところで手をかざすように指示をした。

(おそらく間違えるわ。レオン、カナエ。お願い。私の仮説を確信に変えて......)

「不正解。緑のクズだ」


 ワコルがそう言うと、ギャラリーの興奮冷めやらずまま、にやにやしながら、リーンのもとへまたスポイトを持ってきて、毒を飲むように指示してきた。


 少しニヤリとして、リーンは2滴目の毒を飲み込んだ。

「1回目で痛みには少し慣れたわ......相変わらず痛いし気持ち悪いわね......」


 そう言うとワコルのそばから離れて、レオンやカナエとまた作戦会議をし始めた。

(今度は内面が悲鳴を上げているわ。もちろん痛いけど、痛いというより体内の感覚が無くなるような......大丈夫。まだ、声は出る。)

「おい、血を吐いているじゃねえか。ホントに大丈夫かよ......」


 心配するレオンをよそにして、 視線を向けると、カナエは毒など飲んでいないはずなのに、まるで自分が毒を飲んだかのように顔面を蒼白にさせ、ガタガタと震えながら冷や汗を流していた。

(カナエのノイズから、恐怖の感情のほかに、自己犠牲、信頼の感情も見える......でも、カナエは毒を飲んでいない......でもかなり体にダメージを受けている。カナエの秘密ってもしかして......)

「あなたのおかげよ。ありがとう。カナエ。」

 カナエは少し驚いたが、リーンがそう言うと全て気が付かれたと悟って、涙を流しながら、首を縦に振った。

「よく分からねえが、ワコルのことを見てて、1回目との違いに気が付いた。2回目と3回目の時にあいつが、直接連れて行っているんだ。ただの気まぐれだったら申し訳ないけど、あとすげえ勝ち誇った顔をしてたぞ。むかつくくらいにな。」

(やっぱりね。そういうことね。)

 レオンは変わらず心配そうにして、リーンのほうを見ながら、気が付いたことを話した。

「レオン。ありがとう。そういうことね。ワコルの秘密が分かったわ。」

「最後にカナエ。つらいだろうけど教えて。その目をかけてもらえるようになった人って、首か太ももとか血管が多いところを触られてなかったかしら?」

 カナエは痛みに耐えながらも首を縦に振って回答した。



「ゴホ......ゲホ......二人ともありがとう。さあ反撃と行きましょう。」

 リーンの体の痛みは今までよりもあるはずなのに、自信に満ちた目をしていた。


「......さあ。ワコル、4回戦を始めましょう」


 続く

次回更新:7月29日(木)18:30

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