第16話_ゲームの相性と後出しじゃんけん
「それじゃあゲームを始めようか。おい、準備しろ」
ワコルがそう言うと、入り口を固めてた人たちが、ワコルがいる隣にある階段を一斉に下りはじめた。
「お前らも移動しろ。ゲームの会場は下に作ってやる。だが、そうだな、準備が完了するまで暇だから、お前たちに面白いものを見せてやろう。」
ワコルが指を鳴らすと、一人の奴隷の男を、奴隷の女が引き連れてやってきた。
「お前たちが飲む毒を一滴ずつこいつに飲ませてやる。どんな顔をしてどんな悲鳴を上げて、苦しんで死ぬのか教えてやる。面白いぞ。」
ワコルは毒の入った瓶から一滴、また一滴とスポイトのようなもので吸い上げると、嫌がる奴隷の男に飲ませ始めた。
「!!!おい。人の命を何だと思ってるんだ!」
レオンがそう言うと、剣を抜いてワコルに切りかかろうとする。しかし、周りにいる女は怖がるどころか、ワコルを囲むようにして座り始めた。
(く......これじゃあ周りの奴にも危害を加えてしまう......)
「ぐわああああああああ。」
一滴飲んだ男が苦痛にもがいた声を上げると、顔が真っ青になり、まるで激辛料理を食べたときのように金魚のように口をパクパクとさせながら、空気を求めて涙を流した。
(痛み、恐怖、死の感情......むごすぎるわね。)
「そうだ。一滴ではまだ死なない。いや死ねないように設定している。いい表情、いい声だろう。」
笑いながら話すワコルを横目にただ見ているだけしかできない。リーンたちは茫然としているうちに二滴目を口の中に入れた。
「ひぃ、ひぃ......もう......もう殺してくれ」
二滴目を飲まされた男は喉が壊れたかのように今度は顔が真っ赤に晴れ上がり、ひゅうひゅう言いながら、全身から汗をかいて、そうつぶやいた。
ワコルは笑いながら、リーンたちのほうを見た。
「フハハハハハ。そうだ、一滴目で絶望するほどの痛みを与え、二滴目では声を出させず体からのサインを見る。そして三滴目に......」
レオンが剣を抜いて飛び出そうとした瞬間、ワコルの側近たちが一斉にカナエの首元に刃を突きつけた。
「動けばこの女の首が飛ぶぞ」
レオンはギリッと歯を食いしばり、血が出るほど拳を握りしめながら、その場に膝を突くしかなかった。
「頼む......もうやめてやってくれ......」
だが、ワコルは止めることはなく三滴目を男の口の中にねじ込んだ。
「ヒャッハーーーーー。 ..........」
そして声が聞こえなくなると、ワコルはもう興味がなくなったかのように素の表情に戻っていった。
「三滴目を飲むと、なぜか、ハイテンションになって、そして死ぬ。ここだけはなぜか分からないんだよな......」
そう言うと、階段を上がってくる音が聞こえてきた。
「ワコル様、準備が終わりました。」
「そうか、余興の時間にはちょうどよかったぞ」
そう言うワコルの後ろで怒りに満ちた表情のレオンと、恐怖でいっぱいのカナエ、そしてまだ何か考えているリーンが階段を下り始めた。
「じゃあ、改めてルールの説明だ、そこの女、お前が対象だ。そして目の前には10人の奴隷がいる。このフロアにいる奴隷のうち、魔法の秘密を持っている3人を当てるだけだ。簡単だろ。でも失敗したら、1人ごとに、毒を一滴ずつ飲んでもらう。3人当てられたら、カナエも含めてお前たちを解放してやる。」
ワコルがそう言うと、リーンはいくつかの質問をした。
「いくつか、確認してもいいかしら。まずは、1つ目、その魔法の秘密を持っているってどうやって確認するの?ここにいる人の主観だけでは信じられないわ。」
「次に2つ目。このフロアにいる奴隷といったわよね。ここにいるうるさいギャラリーの中に奴隷がいる可能性はないってことでいいわよね?」
「最後、3つ目。これは質問というよりお願いに近いわね。もし私が負けても、ここにいる猫と剣士そして、カナエだけは帰してほしいの。帰るべき場所があるから......」
リーンがそう言うとワコルは少し怪訝そうな顔をしたが、1つづつ回答を始めた。
「1つ目については、この魔具を使う。おい、持ってこい。」
ワコルがそう言うと、布団にくるまっていたはずの息子が何か水晶のような魔具を持ってきた。
「こいつらの殺戮ショーが始まるんだろ?今からワクワクするぜ」
「これはな、その秘密がどのカテゴリに分類されるかが目に見えてわかる魔具”真実の色”だ。これは一般にも流通しているもので、俺はこの結果だけを信用しているんだ。お前が一人選ぶごとに手をかざしてもらう。無色は秘密なし、赤なら武力、緑なら知略、黄色なら魔法だな。」
「次に二つ目、ここにいるギャラリーの中には奴隷はいない。これは言い切ってやる。そして最後は、うーん。どうしようか。カナエ以外は助けてやろう。こいつは俺の奴隷だからな。」
ワコルがそう言うと、リーンはレオンに魔具に手をかざすように指示をした。
「俺の秘密はっと......お!!赤か。」
(ワコルもこの息子も動揺はないようね......ってことはこの魔具に仕掛けはないわね)
「分かったわ。それじゃあゲームを開始しましょう。」
リーンはそう言うと、全員の顔や表情を見始めた。
(私の看破の秘密を使ってまずは秘密がない人を除外するわ。うん。この5人は違うわね。そして、残り5人のうち、奴隷とはいえここは魔法が全ての国のはず。ってことは少し優遇されている可能性がある。最も恐怖、支配、死を意識していない奴隷は......)
「まずは、この人ね。手をかざしてちょうだい」
そういうとリーンが指さした奴隷の女が、手のひらを魔具にかざした。
「黄色。正解だ。」
一発で当てたことにワコルは驚愕した。
「なんと十分の一の確率を正解するとは、運がいいのか。それとも......」
リーンは冷静に二人目を探し始めた。
(やっぱり奴隷の中でも序列があるのね。となると、次に怪しいのは......この男ね。)
「次はこの男ね。手をかざしてちょうだい」
リーンが指さした奴隷の男が、手のひらを魔具にかざした。
(これで二人目まで正解ね......)
そう思い、3人目を探し始めようとしたのも束の間、ギャラリーから死への期待のノイズが聞こえてくると、ワコルはこう答えた。
「透明。外れだ。」
(うそ。なんで。確かに死を意識はしていなかったはず。)
そう思い、再度奴隷の男を見ると、恐怖、支配、死を最も意識していたような感情だった。
驚くリーンの表情を見たワコルは、ニヤリと笑った。
続く。
次回更新:7月28日(水)18:30




