第15話_乗ってきた挑発と死のゲーム
「さあ。受け取った招待状の借りを返しに行かないとね。」
リーンが、招待状をひらひらさせながら、レオンは剣を担ぎ始めた。
「ほんとに行くんですか?私としてはうれしいですけど、あのアジトに行って無事に出ていった人を見たことがないですよ......やっぱり、私一人で......」
カナエが体中をガタガタ震えながら、リーンのほうを向きながら答えた。
「へえ、ちなみにそのアジトから出た人はどんな状態だったの?」
リーンは神妙な面持ちをして、カナエの回答を待っていた。
「......まず7割はアジト内で死にます。。2割は奴隷として契約をさせられ、
残り1割は......何かを体に仕込まれたような形でこの町から出ることも許されず、
ワコル様の監視がいつでもどこでもついてきます。
そして、町から出たり、ワコル様の機嫌を損なった場合には、謎の死を遂げています。今のところ全員です。
でも何で死んだのかはヒーラーも分からないとのことです。」
カナエが、答えると、リーンは不思議そうに考え込んだ。何か一瞬、不協和音のようなノイズが聞こえた気がしたからだ。
(ワコルってやつの”秘密”と関係しそうね......
例えば、何かをトリガーとして、遠く離れた対象にダメージを......とか、
1か月の遅延ダメージを与えるとか何かのトリックがあるはず......)
「カナエ、もう一つ教えて。あなたは、そのアジト内で死んだ人や奴隷にさせられた状態をその場で見たことはあるかしら?」
リーンから問われると、カナエはまた体を震えさせ始めた。
「い、いえ。それはないです。ただ......奴隷が戦いをさせられているのか、毎回10人程度奴隷を無理やり連れて行くんです。
男も女も関係なく、そして半数は帰ってこないけど、戻ってきた人たちからは生気が感じられなくなることもありました。」
カナエの答えを聞いたレオンも神妙な面持ちになった。
「奴隷を死ぬまで戦わせる......か。やりかねねえな。まあ、そこらは俺とリーンの連携で何とかなるけどな!」
カナエは心配そうにレオンのほうを向いた。
「いや、でもワコル様の部下は軽く数百人はいますよ。それを二人だけっていうのは......」
(ここまでね。)
「カナエ、もう十分だわ。ありがとう。数が何人いようが、私が仕留めるのはワコル一人だけよ。つらいことを思い出させてしまったわね......」
リーンがそう言うと、宿から、気持ち悪いほど澄んでいる青空のもとに向かっていった。
道中、リーンは考えこみ、レオンは周囲を警戒しつつ、カナエは怯えながらアジトまで向かっていた。
(なぜ1割は脱出ができたのか。そして死んだのか。仮にわざと脱出させているとしたら、確実に殺せる何かを持っていないと脱出させないはず......そしてここまでのカナエの話から推測するに、数による暴力ではないゲームをしている。
ならば、ゲームに勝ったから脱出ができた?
でもここまで用意周到な奴が、勝ち筋を持っていないはずがないわ。
ともすれば結論としてはこうね。この町を牛耳るためにわざと1割を脱出させている。そして脱出させ、周囲にワコルの恐怖を植え付けた後に何らかの手段を用いて殺した。これが一番、現実的ね......でも......)
「あ、あの、リーンさん?」
考え込んでいるリーンにカナエが声をかけるも一向に届いておらず、レオンが代わりに話し始めた。
「悪い、カナエ、リーンはこうなると、しばらくしないと外の世界に帰ってこないんだ。今後もよくあると思うから、気を悪くしないでくれよ。」
レオンがそう言うと、カナエは頷きアジトまで向かう道を進み始めた。
「......5人。俺たちを見ているな。でも敵意はなさそうだ。」
レオンも独り言のようにそうつぶやいた。
「こ、ここです。」
カナエが案内した場所、それは何もない路地裏だった。そこにはまるで意図しない来客を拒むがごとく重くそして頑丈な鉄格子の後ろに鉄の扉があった。
「カナエです。約束通り、14時に着きました。開けてください。」
そう言うと、先ほど、アジトへ向かう道で見られていた3人の男が何かを唱え、鉄格子と鉄の扉が開いたことを確認すると、リーンたちは鉄の扉の向こうに歩いて行った。
血の臭いと何かが腐ったような臭いが入り混じったような、鼻を劈く様な悪臭、そしてワコルがいる部屋までの一本道では、蝙蝠やカラスなどが自由に飛び回っていた。
「み、みぅ......」
特に鼻が利くミアを先頭にその一本道を通って、ワコルのいる部屋までたどり着いた。
(ここね。)
ドアを開けると、そこには、無精ひげを蓄えた男が奴隷の女の胸を触りながらお酒を飲んでいる男がいた。
「おう、カナエ。お前何しやがってんだ。俺の所有物が勝手しやがってよ。後でお仕置きだ、俺と俺の息子の分の二回分だぞ。分かったらこっちにこい。」
カナエがワコルのところに足を震わせながら向かおうとするところをレオンが制止した。
「どこ行こうとしてんだ。昨日の約束忘れたのか?」
カナエは、ハッとして、ワコルのところに行く足を止めた。
(これは、重症ね......もはや洗脳ともいえるわね。)
「あなたがワコルね。血の文字なんて素敵な招待をありがとう。
あ、そういえばあなたの息子さんでしたっけ?帰ってきました?
放置していたので心配したんですよ。”私たちからのプレゼント”どうかしら?」
リーンは挑発的な目でワコルに向かって、そう言うと、ワコルは顔が真っ赤になってその場に立ち上がった。
「やっぱり、お前らが、、、あいつは、昨日の夜遅くに帰って来やがって、布団の中にくるまってまるで出て来やしねえ。そんな状態にしやがって、許さねえ。」
ワコルが息子の様子を説明すると、リーンはカナエを指さしながらこう言った。
「それに、この国では奴隷契約なんてないらしいわね。昨日、本で読んだわ。ということでカナエの意思を尊重して、私たちの駒として働いてもらうことになったからよろしくね。それじゃあ。」
リーンがそう言いながら入り口のドアのほうに向かおうとするところでワコルの側近が何かを唱えるのが聞こえ、ワコルが制止した。
「このガキ、さっきから聞いてりゃ。調子乗りやがって......おい。こいつらを帰すんじゃねえぞ。」
そう言うと数十人が入り口の方から出られないように、道をふさぎ始めた。
「......それで、何のために私たちを招待したのかしら?お頭さん?」
そう言うと、ニヤリとしてワコルが口を開いた。
「そうだな。あんたたちが死ぬところが見たいからかな。俺のものに手を出したしな。ただ、このまま数の暴力で死なれても俺が面白くねえ。そこでだ。一つゲームをしないか?」
ワコルはそう言うと、リーンはカナエから聞いた手口はこのことだと理解した。
(来た。この絶対的な自信と負ける気が一切ない雰囲気。これがカナエが言っていたゲームね。)
「まあ、なんとお優しいこと。ゲームに勝ったらカナエも含め、私たちを外に出してくださるというのね?さすが立派な息子さんをお持ちなだけあるわね......」
リーンはワコルを挑発するがごとく、そう言うと再び顔を真っ赤にした後にルールの説明を始めた。
「ルールは単純だ。俺の奴隷の十人の中から、魔法の秘密を持つ三人を当ててもらう。......外せば、この"毒"を飲んでもらうがね」
ワコルは椅子の横にかかっている麻布の中から瓶を取り出した。
(これがカナエが言っていたゲームの正体ね......面白いじゃない......)
リーンの額に汗がにじみ目に汗が入るのをカナエは見逃さなかった。
続く。
次回更新:7月27日18時30分




