エピソード2:旅の始まりー城下町の宿屋ー
記憶を失くした少女、ミーシャと旅商人のリアン。
そんな二人が城下町へ向かい、とある宿に泊まることになります。
私とリアンは、その日の夜までに城下町’’アステード’’へ到着した。
その晩は、リアンがよく使うという宿屋に泊まることになった。
「酔っ払い達がうるさくてごめんねぇ、これあなたの部屋の鍵よ。」
宿屋の女将が私に今晩泊まる部屋の鍵を渡してくれた。
リアンは「俺も飲んでくるから先に休みな、明日は朝6時に宿屋の前に集合だ。寝坊するなよ。」そう言った後…何か思い出した、という顔をして「忘れるとこだった、いかんいかん。お前の明日の服だ、忘れず着替えるんだぞ。」そう言って一着の服を私に渡してきた。
私に服を渡すと、リアンは酔っ払い達のいる輪に混ざっていった。
酔っ払い達のいる一階の飲み屋をすり抜け、階段を登り二階の自室へと向かう。
木製のドアに、外れかけている金具と鍵穴があった。
部屋にはベッドと小さなテーブル、それに姿見が置かれているだけだった。
質素ではあるが、十分に休めそうな部屋だった。
風呂や便所は共同らしい。
私はそこで初めて、姿見を使い自分の姿を確認した。
ここまで、自分の容姿すら確認できていなかったのである。
濃い紫色のウェーブがかったロングヘア、琥珀色の瞳…顔は美人とも不細工とも自分では思わなかった。
そして何故かボロボロの服装。だからリアンは着替えろと言ったのか…と納得した。
『こんな姿で一緒にここまで来てくれたなんて…リアンに申し訳ない』そう恥じた。
肌も薄汚れていたため、私はリアンに貰った服を持って風呂に向かうことにした。
風呂に向かうと丁度、一人の宿泊客が風呂から出てきたところだった。
私は『使用中』の面を表にして狭い風呂に入った。
私は服を脱いで…驚いた。
服で隠れていた部分の皮膚には、無数の痣や傷跡…まだ治りきっていない切り傷のようなものがあったからである。
見える範囲だと腕にも、足にも、胸元から腹部にかけても…。
背中をさすってみると少し痛い、ということは背中にも傷があるのだろう。
その時、頭の奥がズキリと痛んだ。
『何か…何かがあったんだ、けれどわからない、思い出せない…。』
私はお湯が沁みて傷のヒリヒリする体を風呂の中で抱え込んだ。
部屋に戻り、また姿見を見る。
鏡の中の少女は確かに私なのに、その顔を見ても何一つ懐かしさは湧かなかった。
『私は…誰なんだろう。』
答えのない問いだけを胸に、私は静かにベッドへ身を沈めた。
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『エピソード3:旅商人、リアンの朝』へと続きます。




