エピソード1:はじまりの記憶
ある日、ある野原で目を覚ました少女は、名前も何も覚えていなかった。
目を閉じているのに、眩しい。
ふっと目を開けると、昼間の太陽の日差しが丁度自分に照り付けていた。
私は仰向けだった姿勢を左向きに変えて、太陽の光を隠すように腕と手で目を覆いまた、眠りについた。
それから何時間くらい経った後だろうか。
ゆさゆさ、と今度は体を揺さぶられる振動で目が覚めた。
「うーん…」私はそう声を出しながら眠い目をこすり、起きる。
気付けば太陽は沈みかけていた。
そうすると「お前…こんなところで何をしているんだ?」という男性の声がした。
何をしている…私は何をしているんだろう?私の頭の中に疑問が浮かぶ。
改めて辺りを観察すると、今いるここはどこかの野原だった。
わさわさと夕風に草木がなびいている。
声をかけてきた男性はよく見ると30代くらいだろうか。
黙ったままの私にまた男性がまた話しかけてくる。
「俺はリアン。怪しいもんじゃないのはこれを見りゃわかるだろう。」
そうして、旅商人がよく使う馬車車を指差した。
「それで、お前はこのユサール草原で何居眠りなんかしてんだ?夜になると城下町付近とはいえ危ないぞ。」
私はそこで初めて自分の状況を理解し、声を絞り出した。
「あの、私…何も覚えていないんです。自分の名前も年齢も…どうしてここにいるのかも。」
リアンはまさに呆然、というような顔をした。
「記憶喪失ってやつか…?こりゃまた、俺は変なことに巻き込まれたな…」リアンがそう、ぶつぶつと呟く。
私は俯き黙り込む。そんな私を見てリアンが焦ったように言った。
「丁度な、助手を募集していたんだよ!飯は出す!お前、旅をしながら手伝ってはくれないか?」
私の表情はパァっと明るくなったことだろう。
行く当てもない、頼れる人もいない今の自分にはうってつけの条件だ。
私が「お願いします」と軽くお辞儀をするとリアンは笑った。
「これも何かの縁だろう。お前は…見た目15,16歳くらいの小娘だな、名無しでは呼びづらいがどうする?」
そのリアンの問いに私はまた頭を捻らせた。
自分の名前を考えることなど…恐らく、今までも無かったんだろう。
リアンはそんな私を見て「ミーシャだ、お前の名前。迷うくらいなら俺がつけてやる。」そう言った。
『ミーシャ』…私の仮の名前。
「ありがとうございます。」そうリアンに告げると、「気にするな、あとできれば敬語はやめてくれ。こっちまで…かしこまってしまう。」そう言ってリアンはまた笑った。
「わかりまし…じゃなくて、わかった!」そう私が告げるとリアンは「上出来だ!」と微笑んだ。
そして私は心の中で『記憶を…取り戻さないと』そう、呟いた。
ここから私…ミーシャとリアンの旅が始まった。
その時、私はまだ知らなかった。
この出会いが、失われた私の記憶へ続く旅の始まりだったことを。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
『エピソード2:旅の始まり』へと続きます。




