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ようこそ、ゴーストシアターへ!  作者: 乙葉


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初仕事

「ニャ~ン!」

 そこには、1匹の三毛猫がいる。

 ゆっくりと左右に尻尾を振りながら。

「え……。猫?」

 俺は、予想外のお客様に思わず失言を吐く。

 すると、勢いよく後ろに引っ張られ、倒れそうになる。

「おい!何すんだよ!」

「お客様に何と失礼な。」

 案内人が、俺を睨みつける。

 それは、本当にその通り。

 猫?って。

 いわゆる、人に向かって「人間?」って言ったようなもんだ。

 そりゃ怒られるに決まっている。

 だが、まさか動物が来るだなんて。

 想像の範疇を超えているせいで、衝撃だった。


「大変失礼いたしました。お名前は、かつおぶし様ですね。ようこそお越しくださいました。」

 また、予想外の名前に驚愕する。

「か、かつおぶし⁉」

「お前は黙ってろ!」

 案内人から、鋭いお叱りが飛んでくる。

 こんな言葉を使う案内人は初めてで思わず体がはねる。

 俺は、これは不味いと後ずさりした。


「ご迷惑おかけし申し訳ございません。ここは人生で。いや、猫生で最期に訪れることができる映画館です。何かご覧になりたい思い出はございますか?」

 案内人は、優しくかつおぶし様に問いかける。

 すると、明るく元気よく返事をする。

「ニャー!」

「さようでございますか。では、どなたとご覧になりたいですか?」

「ニャー、ニャ~。」

「かしこまりました。準備いたしましょう!」


「いや、ちょっと待って。何で分かるんだよ!」

 耐えきれなくて思わず突っ込んでしまう。

「え……。かつおぶし様の言葉が分からないのですか?」

 哀れなと言わんばかりに、かつおぶし様とジト目で見つめてくる。

「や、やめてくれよ。ちゃんと翻訳してくれ。」

「してくれ?」

 その言葉は無いんじゃないか?と怒りの滲む目つきで睨んでくる。

 あ、そうだった。

 俺は、見習いなんだ。

 聞こえないように溜息をついてから、言い直した。

「翻訳していただけませんでしょうか?」

 すると、よしよしと笑みを浮かべながら猫が何を求めているのか教えてくれた。


「こちら、お名前はかつおぶし様です。ご家族の今田 早紀(いまだ さき)様と、一緒に出会ったころの思い出をご覧になりたいそうです。」

「すげぇ~。」

 思わず関心してしまう。

 マジで猫語が分かるらしい。

 すると、案内人はあ!と何かを思いついたのか。

 俺の左手を取った。


 「なんだよ!いきなり気持ち悪い!」

 「少し居心地が悪いでしょうが我慢してください。さぁ、目を閉じて。」

 俺は、意味が分からないまま目を閉じた。


 ――――――――――――――――――――


 ここは、どこなのかしら?

 私は、確か早紀ちゃんのお膝でゆっくり眠っていたはず。


 目の前には、不思議なものを目に付けた人と、ヤンチャそうな人間が立っている。

 フフフ、ヤンチャな人間はさておき、もう一人は素敵ね。

 私の言葉も分かるなんて、いかしてるわ。


 確か、案内人さんね。

 お話を伺う感じだと、私の猫生は終わったのね。

 それも、仕方がないことだわ。

 私は、沢山生きたもの。


 ――――――――――――――――――――


「いや、ちょっと待って!」

 思わず目を開けて手を放す。


「いきなりなんだよ!私はって、猫生って。」

「急に手を離さないでください。」

 途中で切り上げるなと抗議の目で睨んでくる。


「これは何か説明してくださいよ!」

 今度は、ちゃんと敬語を取ってつける。

 すると、やれやれと言わんばかりに話し始めた。


 「今のは、かつおぶし様の声です。私の右目を使うと記憶に干渉して観る事ができます。便利なもので、今の言葉だと……。リアルタイムで感じ取れます。」

 とんでもないな。

 ってん?ということは。

「俺のことも?」

「はい、見えていますよ。記憶は、何を思っているのかを映し出しますから。」

「怖!」


「あなたは、分かりやすくて助かります。こうやって力使わなくても、手に取るように分かりますから。でも、私が見えている物を他人に見せるのは堪えますね……。」

 案内人は、こめかみを手で押さえる。


「悪い、無理させたみたいで。」

「いえ、仕方がありません。では、続きといきましょうか。」

 そう言って、俺の左手を取ろうとする。

 思わず振り払った。

「無理すんなよ。後で教えてくれればいいから。今はかつおぶし様に。」

 俺の言葉が意外だったのか。

 驚きの表情を見せる。

 そして、安心したのか少し笑みを浮かべた。

「では、お言葉に甘えて。ちゃんとついてきてください。」

「よし。任せろ!」

 そう言っておいて、俺はただ後ろから付いていくことしかできなかった。



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