2作品目 開演
こうして、映介様。
いや、見習い案内人として、映介がこの映画館に加わった。
意外にも、彼はしっかり者で。
「おい、案内人!しっかり箒ではらえよ。ダラダラやってると今日のお客様が来ちまうだろ。」
見習いは、モップでカーペットが無い部分の床拭き掃除をしている。
私は、凄いなと感心しつつ、カウンターにもたれながら箒で遊んでいた。
「いや、掃除は不慣れでして。」
「不慣れじゃなくて嫌いなんだろ?」
「不慣れです。」
「いや、嫌いなんだろ!」
私と違って、裏表がない。
それに、意外と人を見て、しっかり反応できる。
私にはできないことだ。
彼は、テキパキと準備を進めていく。
別に何か教えたわけではない。
だが、さすが元ブラック企業のサラリーマン。
手際の良さが段違いだ。
「さすがですね~。」
気づけば、遊ぶ手が止まっていた。
漏れた言葉が聞こえていたのだろう。
まるで苦虫でも嚙み潰したかのような、嫌そうな顔を見せる。
「その、棒読みな言い方。何かむしゃくしゃするんだけど。」
「おや、これは失礼しました。」
「本気で申し訳ないって思ってもないだろ!」
なんだろう。
ただ、悪態つかれてるだけなのに心地が良い。
不思議なものだ。
この状況に慣れていないはずなのに、見惚れてしまう。
「おい、聞いてんのか!」
彼の言葉で、我に返る。
私は、なるべくいつもの様に取り繕った。
なぜなら、扉が開く音が聞こえたから。
「さあ、始まりますよ。今日の仕事が。」
私は、モノクルをかけなおす。
見習いは、真新しい白いポロシャツの襟を正す。
そして、入ってきたものに挨拶をした。
「ようこそ、お越しくださいました。ゴーストシアターへ。」




