作り上げる仕事
山のようにもらった雑巾。
見た目のインパクトもさることながら、30枚とは衝撃だった。
だが、改めて見ると、1枚として同じものがない。
それぞれに個性が出ていて面白かった。
あるものは、糸を引き、あるものは、左右の幅がちぐはぐだったり。
だが、それでも嬉しかった。
この、アンバランスな雑巾。
見れば見るほど、あたたかみと優しさを感じた。
そして、案内人との小さな約束。
「では、前回できなかったあなたの夢にまつわる記憶の本探しも、仕事が終わり次第一緒にしましょう。」
何気ないものではある。
しかし、それが嬉しかった。
小さな約束を増やしていく。
そして、叶えていくことが、誰かと共に生きていると実感できる。
その相手が、案内人というのは、少し癪だが……。
実は、案内人にまだ言えていないことが1つある。
それは、めった汁の具材。
小さいころ、豚汁だと思って食べていたもの。
その具には、レンコンが入っていた。
案内人は、言っていた。
「めった汁に、レンコンを入れると美味しいと教えたのは、私です。」
何かつながりはあるのだろうか?
いや。レンコン自体、珍しいものではない。
だから、きっと偶然だろう!
俺は、不格好な雑巾に、大きく「ウエ」と書く。
そして、しっかり絞り、机や椅子を拭いていく。
時折、案内人の様子を伺いながら、準備を進めた。
案内人の姿を見ていたら、あることを思いついた。
そのめった汁、俺にも作れるだろうか?
これは、想像以上の雑巾に対するお礼。
だが、それ以外にも、日ごろのお礼を伝えたかった。
泣きながら食べている姿を見て、胸を締め付けられたのもある。
料理は、両親が亡くなり、祖母の家へ一時的に引き取られた際、少しだけ教えてもらった。
それ以来だから、決して自信を持ってできるとは言いがたい。
それでも、作ってみたいと思った。
「見習い、そろそろお客様がいらっしゃいます。」
「了解!」
俺は、案内人から箒を受け取り、片づけに走る。
ちょうど戻ると、扉の開く音が響く。
今度、笠木さんに作り方を教えてもらおう。
ポロシャツの襟を整えながら、案内人の隣へ向かった。




