放置される仕事
誰もいないロビーに、埃をはたく音が響く。
はじめてだった。
1人で準備を任せられたことに。
寂しいよりも先に思ったこと。
それは……。
「俺、頼られてる?」
思わず口角が上がる。
今まで開館準備含めて、必ずと言っていいほど案内人と一緒だった。
まぁ、案内人が掃除を始めると仕事が増えるから、止めていたが。
でも、そばにいた。
きっと、1人で任せることが心配だったからだろう。
俺は、案内人のような特別な力を持っているわけではない。
できて、雑用が少しだけ。
だから、こんな小さなことでも浮足立つほど嬉しくなってしまう。
しかし、同時に脳裏に蘇る。
結人と観たときの、懐かしい感覚。
思わず口に出してしまったことで、案内人の何かに火をつけてしまったのだろう。
「はぁ、俺のせいだよな。」
独り言が、館内に響き渡る。
いつもなら、そこに返ってくるブラックジョークが聞こえない。
周りを見渡すと、静けさがさらに増して感じた。
「あれ?ここって、こんなに広かったか。」
いつも二人で立つこの場所。
1人で準備すること。
それは、こんなにも音が聞こえないのかと。
この感覚も、懐かしい。
暗いオフィスで、仕事をする光景。
そして、とある人物から浴びせられる怒声も蘇る。
思わずはたきを強く握りしめていた。
すると、ギシギシと音が鳴る。
映画館の扉が開いたのだ。
俺は、元気よく大声で呼んだ。
「お客様が来たぞ!!」
掃除道具を急ぎ、片付け、お客様を確認する。
すると、目の前には俺の良く知る人物が立っていた。
「え?ぶ、部長。何で……。」
一気に、汗が噴き出してくる。
さっきまでの高揚が急降下する。
心臓が、痛い。
何も動けなくなっていた。




