飛劇
飛ぶのは最高に楽しいな~。
人間に凄い追いかけられたけど、思う存分遊べたから良し!
それにしても、キラキラしたものを着けている人間は、温かいなぁ。
つい、眠くなってきちゃった。
そっと目を閉じると、とても聞き馴染のある大好きな声が聞こえた。
――――――――――
「ピーちゃん。おはよう!」
ボクは、元気よく挨拶を返す。
「ピーチャン!」
「今日も、元気だね~。」
この子は、毎日必ず挨拶をしてくれる子なの。
胸あたりに、名札?というものをつけているのだけど、ボクには分からない。
でも、噛み心地が良いから、お家から出してもらうとすぐに飛びついちゃうんだ。
「あ!また!ダメだよ。もう、せっかく新しくしたのに、ボロボロになっちゃうよ。」
ダメと言っているけど、明るい声。
ということは、喜んでくれている!
ボクは、この時間が大好きなんだ。
だって、この子を独り占めできるから。
でも、お家に無理やり戻されると、寂しい時間が始まるの。
たくさんの知らない人間たちが、僕を眺めてくる。
「可愛いね!」
「綺麗だね。」
「何ていう子かな?」
みんな、優しい目をしてる。
でも、ボクを外の世界に出してくれる人はいないの。
小さなお家の中で、羽を広げる。
ボクは、ここにいるよ!
みんな、見て!
それでも、気づいてくれるのは名札の子だけ。
ボクは、いつかこの子と一緒に空を思いっきり飛びたいなぁ。
――――――――――
ふっと目を開けると、キラキラを着けた人が優しい顔で見つめている。
どうしたのかな?
ボクは、首を傾げた。
「なんとか、記憶の干渉に成功しましたね。」
何のことだろう?
よく分からないや。
あれ?そう言えば、ボクを見ている人々の中に、あなたと似た声が聞こえたような……。
気のせいかな!
「おい、案内人!今、何をしたんだ?」
ボクを一生懸命追いかけまわしてた人が、詰め寄っている。
「いや、少しばかりね……。おかげで、お会いになりたい方も分かりました。」
え?なんだろう!
楽しみだな!
「お会いになりたい方は、鈴木 琴音様。ピーちゃん様が過ごしていたペットショップの店員さんです。」
「ペットショップ!?ということは、そこで何かあったということか?」
「そこまでは分かりませんでした。しかし、思い残しもこれで。」
案内人と呼ばれた人が、優しく微笑む。
「見習い。扉を開けてください。今から上映をはじめますよ。」
「了解。」
見習いと呼ばれた人が、大きな扉というものを開く。
すると、案内人が扉の先に進み、ボクを解き放った。
「では、ごゆっくり。」
思いっきり羽を広げる。
軽くて風が気持ちいい!
やっぱり、楽しい~!
嬉しさに満たされていると、下から大好きな声が聞こえた。
「ピーちゃん?」
声のする方へ、旋回する。
そこには、いつもボクを外に出してくれる子がいた。
「ピーちゃん。ごめんね。」
いつもの声と違う。
いつもの元気はどうしたの。
ボクは、少し不安になり、あの子の手にのった。
「私があの時、気づいていれば。」
とても震えている。
どうしてだろう。
ボクも悲しくなっちゃうよ。
確か、琴音ちゃんってあの人言っていたな。
じゃあ、この子がそうなのか!
琴音ちゃんが、ボクを包み込む。
すると、周りがゆっくり暗くなった。
――――――――――
そこは、ボクが大好きな場所。
琴音ちゃんの肩!
琴音ちゃんが、何かを持っていて一生懸命働いている。
「こんな感じかな。どうかな?」
それは、ボクのお家。
快適に過ごせるよう、毎日綺麗にしてくれるんだ。
お部屋が綺麗なのは、好き。
でも、ボクが一番好きなのは、キミと一緒にいる時間。
一番近くに感じられて、温かい。
なにより、キミの声が一番近くに感じるの。
ボクは、音は記憶できる。
でも、見たものはあまり覚えてられないの。
だから、大好きな声はずっと聞いていたいんだ。
あぁ、もっと一緒にいたいなぁ。
――――――――――
だんだん周りが明るくなる。
ボクは、琴音ちゃんの手を甘噛みした。
「そうか、一緒にいたいと思っていたんだ。」
すると、ボクを包む手に力がこもる。
そして、琴音ちゃんは顔まで近づけてきた。
「私が、もっと勇気を早く出せばよかった。家族になれなくてごめんね。」
家族?なんだろう。
ずっと一緒ってことかな。
ボクは、そっと彼女の鼻をつついた。
「もう、ピーちゃんは、優しいね。」
彼女は、いつもの様に指でボクの頭を撫でる。
えへへ、気持ちいいな。
でも、頭を撫でるときは、決まって別れの時。
ボクをゆっくり降ろす。
もう、行っちゃうの?
いかないでよ!
ボク、もっと高く飛べるんだよ!
だから、一緒に飛ぼうよ。
周りがまた暗くなる。
明るくなった時には、彼女の姿は無かった。
その代わりに、案内人が僕を包み込む。
「人は、あなたのように羽が無いので飛ぶことができません。しかし、一緒にいたいという思いは伝わっていますよ。」
人間は飛べないの?
それは……寂しいなぁ。
でも、大好きが伝わったならいいか!
案内人が見習いと一緒に外へつながる扉を開ける。
「これからのあなたは自由です。思う存分、空の旅を。」
ボクは、大好きな声を胸に――翼を今までで一番大きく広げ、飛び立った。




