表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ようこそ、ゴーストシアターへ!  作者: 乙葉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/50

慌ただしい仕事

 縦横無尽に飛び回る一羽のインコ。

 俺は、机や椅子を時折踏み台にしながら、捕獲を試みていた。


「頼むから、大人しくしてくれ!」

「ピー!」

「ピー!じゃねぇって!」

 ダメだ。

 早すぎる!


「見習い!今、右へ行きました。いや、左?」

 あちこち飛び回るせいで、案内人の指示も追いつかない。

 インコは、まるで俺たちで遊んでいるかのようだった。


「あ……。」

 インコが、案内人の頭にとまる。

 そして、ゆっくり毛づくろいをはじめた。

 今がチャンス!

 俺は、「動くな、静かに」と身振り手振りのジェスチャーをする。

 案内人は、任せろと瞬きをする。

 よっし。

 そっと、ゆっくりと。

 音をたてないように、近づく。

 よし、今だ!

 俺は、ものすごい勢いで両手を伸ばした。

 しかし、白い羽が、俺の指先をすり抜ける。

 瞬く間に、バタバタ~と寸前で飛びだしてしまった。

 あ、やばい。


 ゴッ!

 鈍い音がした。

 俺の持て余した手は、しっかり案内人の頭に直撃。

 次の瞬間、俺たちはドミノのように倒れていた。


「何するんです……重い。」

「悪い。しくじった。」

 インコとの追いかけっこ。

 埒が明かない。


 肝心の、捕獲対象はというと。

 倒れた俺の腰辺りで、優雅にまた毛づくろいしていたようで……。

 あまりの騒がしさに飛んできた映写係の笠木さんが、ファインプレーを見せた。


「よしよし。美人さんですね~。」

 笠木さんは、両手で包み込み飛ばないように顔だけ出してインコを抱いている。

「で、お前さんたちは何してんだ?」


「いや、すまない。」

「恥ずかしいので、見ないでください。」

 俺たちは、疲労と恥ずかしさで起き上がることができなかった。


 案内人は、モノクルをかけなおす。

 俺は、服についた埃を払い落とした。


 「お前さんたち。いつも思うが……。こういう羽を持ったお客さんへの対処。下手すぎやせんか?」

 「仕方がありません。だって、言葉が通じないのですから。」

 案内人は、大きな溜息をつく。


 しかし、笠木さんはこういう時、なぜか厳しい。

 「といってもなぁ。」

 促されるまま、周りを見渡すと、せっかく整えていた家具たちが散乱している。

 あはは。

 こりゃ大変だ。

 犯人は、間違いないく俺たち。

「返す言葉もありません。」

 俺は、思わず頭を下げた。


「ほら、映介は素直だぞ。お前さんは?」

 分が悪くなったのだろう。

 案内人も、頭を下げた。

「すみません。」


「よし!分かったならいい。というわけで!後は、よろしくな。」

 はいどうぞっと、俺にインコを預けて、映写室へ戻っていった。


「あの……。無い前提で聞くんだけど。」

「無いですよ。」

「最後まで聞けって。」

「鳥かごですよね。残念ながら。」

「だよなぁ。」

 俺は、預かったインコを抱えながら、立ち尽くすしかなかった。


「まぁ、ずっと両手がふさがっているのも不便ですからね。はじめましょうか。」

 案内人は、こめかみに手を当て集中する。

 俺は、ただ静かに見守るしかない。


 何か見えたのだろうか?

 ゆっくり手を下す。

 すると、予想していたようで予想できなかった回答が飛んできた。

「やっぱり、記憶が見えても言葉が通じないのは苦手です。」

「え?」

 さっきも通じないって言ってはいたが、マジなのか?

「それ、どういうことだよ。」

「何といいますか……。何をしたいのかなどは何となく分かります。でも、生き物によって記憶容量や覚え方が違いますから。」

「ということは、もしかして。」

「そうです。とどめておける量が多くないどころか、その答えが正しいのかも分からないのです。」

 うわぁ。

 不味いな。

 でも、同時に切ない。

 「じゃあ、どうするんだよ?俺、ずっとこのままは流石にキツイ。」

 「分かっていますよ。」

 案内人は、少し考え込む。

 そして、溜息をついた後、目つきが鋭くなった。

 あれ?いつもと、違う気がする。


「やるしかありませんよね……。この方を、私に。」

「おう、分かった。」

 俺は、優しく。

 でも、飛ばないようにゆっくり案内人に渡す。

「見習い。悪いのですが、モノクルを外してくださいますか?」

「え?分かった。いくぞ?」

「よろしくお願いします。」

 一瞬にして、空気が緊張する。

 俺は、ゆっくりモノクルを外す。

 それを合図に、案内人は、頭まですっぽりインコを包み込み、目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ