記憶の断片
「あー!なんか、やり切れねぇ!」
三島様を見送った後の、第一声だった。
まぁ、気持ちは分からなくない。
本当に、いろいろなお客様が来る。
今回のような方だと、いつもそうだ。
記憶を覗こうとすると、フラッシュバックする。
心臓を握りつぶされる感覚。
顔面から強く鈍器で殴られるような痛み。
呼吸が乱れる。
そして、何かがこぼれていく。
我に返るとなぜそんな記憶があるのか思い出せなくなる。
こういう時、言葉にできない恐怖が四方八方から襲ってくる感覚になる。
「今日はすみませんでした。手を思いっきり払ってしまって。」
理由があるとはいえ、心配してくれたのに申し訳ないことをしてしまった。
「いや、それより大丈夫かよ。」
本当に見習いは、真っすぐで純粋だ。
これが、本当にありがたい。
「はい、心配させてしまいましたね。」
「本当だよ!」
私は、モノクルを外し、記憶を見る体制に入る。
「では、あなたが今、欲しい回答を見てみましょうか?」
「本当に大丈夫なのか?」
「おや、心配してくださるのですか?」
「最初からしてんだよ!」
本当に、優しい。
優しすぎて、私にはもったいない。
「大丈夫ですよ。もう、慣れっこですから。」
「たく、慣れんなよ。」
見習いは、やれやれと言いながらも、静かに首を縦に振った。
「では、はじめましょうか。」
私は、目を閉じ、彼女の記憶を紡いだ。
「五木里奈様は、いつも通り学校に通っているようですね。」
彼女は、教室に入ると三島様の話をする。
机には、花瓶と一輪の花。
「あいつ、マジでこうなったね。ウケる。」
そう言って、三島様の机を見ながら笑っていた。
彼女は何も変わらなかったようだ。
だが、周りは違った。
教師含めて、危険人物扱い。
彼女に近づくものは誰もいなくなってしまった。
そこに追い打ちをかけるように、テレビやネットニュースが流れる。
スマートフォンの画面に1つの動画が流れる。
泣きながら謝る女子生徒。
その横で笑う五木様。
同時に、耳に入ってくる声。
「こちら、SNSにて投稿されたいじめの一部始終となります。」
そのニュースは、彼女が別の生徒をいじめている現場を撮影されたものが拡散されていた。
「これは……。」
私は、小さく息を吐いた。
「思い残し失敗ですね。まぁ、周りの方への影響は凄いので、ある意味では成功でしょうか。」
私が語った内容に、見習いは意味が分からないと表情で訴えている。
「何か言ったらどうです?たまっているのでしょう。」
「なんか、虚しいな。」
虚しい。
良い表現だと思った。
「では、この映画にタイトルをつけるなら、何にしますか?」
彼は、私の目をまっすぐ見て、力強くタイトル名を放った。
「因果応報を願う」
「願う、ですか。」
思わず心で笑ってしまう。
「また、変ですね。それはタイトルですか?」
「うるせぇ!」
彼の反応に、安堵している自分がいた。




