見習い仕事
羨ましい。
そんな感情が湧き上がってきたことに、不甲斐なかった。
かつおぶし様と早紀様。
二人が最期に観た映画。
俺には、眩しかった。
案内人は言っていた。
ある悩みを抱えたものが訪れる映画館。
それは、死者が生者に思いを残す場所。
俺にはあるのか。
いまだになぜここに来たのか分からない。
だって、何度考えても俺には何もないから。
誰かに伝えたい思い。
何か未練。
いや、やっぱり思いつかない。
でも、片隅にちらつく何かに違和感を覚えていた。
「俺にも、あるのかな……。」
「何がですか?」
「え⁉」
我に返ると、俺の顔を間近で覗き込む案内人の顔が飛び込んできた。
「やめろよ。心臓に悪い!」
「心臓に悪いって、あなたもう止まってるじゃないですか。」
「だから、そういうのは冗談にならないから。」
ニヤニヤしながら俺をもてあそぶ。
だが、一緒にいて分かる。
目が、笑っていない。
案内人は、お客様へは優しく丁寧におもてなしをする。
かつおぶし様に向けていた笑顔。
あれは本物だったのだろう。
しかし、ふと感じるのだ。
不気味さを。
だからだろうか。
思わず本能的に反発してしまうのだ。
まぁ、俺はただ目の前のことに集中するだけ。
それだけだ。
「そう言いながら、集中できていないではないですか。」
「集中してます!」
言葉に出してなくても分かってしまう案内人。
絶対、これが原因だ。
「さぁ、惚けてないで始めますよ。」
案内人が、モノクルをかける。
扉の開く音が聞こえる。
振り向くと、そこには学生服か?
ネイビーのブレザーを着た女性が立っていた。
俺、急いで持っていた掃除道具を片づけに走った。




