猫と人
見習いが泣いてる。
「いかがでしたか?」
私の問いに、見習いは言葉が出てこないようだ。
ただうつむいたまま、動かない。
そして、次に出た言葉は、謝罪だった。
「猫と馬鹿にしたこと、大変申し訳ございませんでした。」
彼は、頭を下げたまま。
やはり軽くみていたのかと、ため息をついてしまう。
だが、彼の表情を見ていると反省が伝わってくる。
まぁ、良しとしましょうか。
私は気づくと、肩に手を置いていた。
「今後、早紀様がどうなっていくのか、少しお話をしましょうか?」
自分でも驚く。
まさか、こんなことを彼に話したいと思うとは。
見習いは、勢いよく頭をあげ、激しく縦に首を振る。
そうだよね。
人間というのは、不思議なもので。
少し関わると、その先を知りたがる。
「では、お話ししましょうか。」
記憶を覗くため、モノクルをはずし、目を閉じた。
「早紀様は、しばらくの間は、ショックが大きく寝込んでいたようですね。しかし、かつおぶし様と最期の上映をご覧になったことにより、少し勇気が湧いたようです。お!これは……。」
私の脳裏に映し出される。
早紀様の目線で見る、かつおぶし様の姿と思い。
「大好きだよ。」
かつおぶし様の言葉、伝わっていて良かった。
そして、朝必ずおこなう習慣。
かつおぶし様が映る写真に向かい、手を合わせる。
「今日も、行ってきます!」
涙を振り払い、笑顔で外の世界へ出る。
早紀様の、日常が始まった。
「以上ですね。今回も、思い残しは成功したようです。かつおぶし様は、早紀様の中で生きている。優しい、一番の味方として。」
見習いは、目を赤らめながら、ただ静かに聞いている。
「何か言ってください。と言っても、難しいのでしょうが。では、1つ、今回の映画。タイトルをつけるなら、あなたはなんと付けますか?」
「え?」
私の問いに、目を丸くしている。
「いきなりタイトルって……。分かんねえよ。」
「そんなこと言わず、ほら。」
少し意地悪な気持ちもあった。
だが、言葉にすることも大切だと、映写さんが言っていた。
だから、難しいと分かっていて聞いた。
見習いは、少し目を閉じ頭をかきむしった後、ぽつりとつぶやいた。
「猫と人。時々姉妹」
「なんですかそれ。」
想像していない回答に思わず突っ込んでしまう。
「はぁ?あんたが何か言えっていうから。俺、センス無いんだよ!」
生きの良いのが飛んでくる。
よしよし。
見習い君は、それぐらいが良い。
私は、彼の顔をしっかり見る。
最初ぐらい、師匠らしいことを言ってみようかなと。
「これから、たくさんの方々に出会います。気を引き締めてください。」
「はい!」
彼は、姿勢を正し、真剣な眼差しで力強く返した。




