開通から
一向は、太閤の横穴を少しずつ確実に進んでいる。
何箇所か泥が溜まっており、スコップでどけていく。
幸い完全に進めなくなるような状況もなく、少しずつ、少しずつ進んでいく。
横穴は地盤沈下の影響か梅田に近づくにつれて下に沈んでいるようだ。
先に奥の様子を見に行ったガルムがこの先で崩れていると伝える。
大きく崩れているのなら、掘るしかないが、問題は土砂をどのように運ぶかである。
談迷子は今までの工程をマッピングしていて、この先もう少しで梅田の地下街であることを示した。
たんぽぽが、土砂を少しだけ掻き分けて見るとそこにあったのは鉄の扉である。
上部だけ露出させることができた。
その扉には阪急三番街と書いてある。
ウィフがどこからかバーナーを持ってきて、とびらの上半分を焼き切った。
そこに広がっているのは地下空間である。
大きな広場のような空間の3階部分に出たようだ。
たんぽぽの照らすライトが過去の地下街を照らしている。
ウィフが今まで通り空気を計る。
「空気は大丈夫です、また、ここからはイグドラシルとの接続は可能になりそうです。」
ラームはグラヴィトロンの影響を確認のためにガルムを先行させる。
そのあとは狭い焼き切った扉から一人ずつ地下街に入った。
ラームは前に来た時のことを思い出していたが、こんな古い層には来たことがない。
「これが最深部なのか。」
嬉しそうに端末を叩いていたのは談迷子である。
「あります、あります、阪急三番街の記録。インターネットアーカイブにあります。」
「シッ、だれか来ます。ライトを消してください。」
奥から暗闇を歩いて来たのは兵士達だった。
それも、戦闘をしている?
銃でやり合いながらこちらに移動している。
ヒソヒソとラームが喋る。
「船団とナハト王の部隊がやり合ってるんだろう。船団は調査のために一個旅団を寄越している、そう簡単に負けないだろうが。」
「あなたは、船団と契約しているのでしょう?だったら合流するのですか?」
「それもいいかもな。こちら側に移動しながら戦ってる兵隊は船団ではないみたいだから、捕まえて、とりあえずの状況を聞いて見るか。」
談迷子一行は超一流の手練れ達である。
並の兵士の鎮圧には、たんぽぽと、雑賀故我だけで十分である。
一人だけ敵の中で強いやつがいたが、それも雑賀故我が腹に一発くらわせて、気絶させた。
「下手に怪我させると地上まで運ばないといけないからね。」
いとも簡単に船団と戦っていた部隊を制圧した。
談迷子はそんな中でもずっと端末と地形を確認している。
捕まえた兵士たちは口が硬いのか何も喋らなかった。
「言葉が通じないのかな?」
ラームは戦闘していた船団の兵士を呼んで、自分の身分を明かし、岸田からの依頼で調査している旨を説明した。
どうやら、船団の兵士から聞くと事態はこうである。
意図せずメインエレベーターが起動して、ナハト王の部隊が降りて来た。
船団は排除のため戦闘をしている。
この場所は、ナハト王の部隊が掘って開通したそうだ。
船団の岸田は全体の指揮をしていて、不利ながらも、逆にHEP5に陣取るナハト王に十三(梅田の西側)からの日本軍の支援を受けて反撃しようとしているところらしい。
「違う、ナハト王の兵士じゃない、俺たちは華山道士連だ。一緒にするな。」
ライトで兵士の隊服を照らすと確かに華山道士連と書いてある。この兵士は、女性のようだ。
「なぜ、華山道士連がナハト王と?」
あまり、雑賀故我は興味なさそうだが、一応は聞いた。
「上の方針で、大連では仲間を殺されたのに、そんなやつらに裏切って。」
「まぁ、どちらでもいいけど。」
こんな下っ端が大した情報もないと判断した。
船団に華山道士連を引き渡し、調査を続けようとした時である。
「なぁ、あんたらはナハト王と戦うのか?」
ウィフが答える。
「必要であれば戦います、でも、無理に討伐したいとかはないです。」
「そうですか。できれば取引をしたい。」
「いい材料があれば、しますよ。」
「赤い光の発生源の座標を教える。」
「・・・残念ながら、すでに知っています。」
ウィフとラームは大連でその情報を日陰博士から共有されている。
「じゃあ、グラヴィトロン対策は?」
ウィフの顔色が変わった。
「できるのですか?」
女性兵士はうなづく。
「貴方の望みは?」
「仲間の仇撃ち。」
女性兵士の名前はジーチンと言った。
大連で仲間を殺されて、その殺した敵に味方がついた。
ウィフは本当の話か悩んでいるとラームが後押しした。
「グラヴィトロンの明確な対策はないんだから、気休めでも、いいことじゃないか。」
少し考えて、ウィフは聞く。
「仇討ちなんてどうやってするの?何をしたら仇討ち成功?」
「そりゃ、大連と同じでナハト王の思い通りに行かなけりゃ。」
「まぁ、多分それは俺たちと目的は一致すると思うけど。」
加えて華山道士連の戦力について聞いた。
「船団は旅団クラスの人数がいるのに、道士連はどうやって突破したのですか?」
ウィフは道士連の大体の戦力が4個小隊くらいであることを把握している。
「隊長のティは霊陽棒を使ったんだ。起動したのはついさっきだけど、船団の人間をまるで紙みたいに吹き飛ばして。」
「霊陽棒?それって如意棒のこと?御伽話に出てくる兵器を持ち込んでると?」
その話を聞いて、船団の兵士もかなりの人数がその兵器にやられたことを伝えた。
「おっかないものには近寄らない方がいいですね。」
船団の兵士たちは気絶した華山道士連の兵士を拘束して、基地に連れて行った。
別途、応援を寄越すと言い残して。
ウィフが少し心配そうにラームに話しかける。
「船団の目的と我々の目的は合致しているのですか?最後にやりあうことにならないですか?」
「やつらが考えていることがどんなものでも俺は知らん、やりあうならお前らだろ。」
ずっと、地形を見ていた談迷子はやっと、何かを見つけたようだ。
「あー、なるほど。なるほど。ここが阪急電車の駅の地下なんだ!」
「何がなるほどなんだ?」
「太閤の道は途切れましたが、この先で更に続いています。」
「どこに?何もないが、空洞だけだぞ。」
「何百年もの地盤沈下で上から街が落ちて来て押しつぶされたんだと思います。」
談迷子は今までの太閤の道の方向と傾斜から、この地下街をどのように進めばいいかを正確に示したのだ。
それは最初から地下街にアプローチしていたら、きっと辿り着けなかった道筋であった。
彼らは槇島博士と同様に太古の道を進むのだ。




