真相 4
大阪駅前ビルの地下で3代目談迷子はこう言った。
「昔話を聞きたいのは本当だけど、知りたいのは真相なのよ。物語形式で話す必要はあるの?そもそも昔の話って退屈なのよ、貴方には思い入れがあるだろうけど、ルーレットで勝つ話とかいらないでしょ。」
たんぽぽと、雑賀故我の両方がうなづく。
ラームは答える。
「そりゃ、俺だって、過去はドラマチックであってほしいんだよ、いいじゃんか、これからカッコいいところなんて何もないんだから。」
ガルムが心配そうにラームに寄り添った。
ラームはガルムの頭を撫でながら話を続けた。
「俺は船団の部隊とメインエレベーターでできるだけ地下に潜ったんだ。」
【過去 梅田地下】
「わからんな、逆さ桜の間がこれほどの地下にあるとは思えんな。」
船団の岸田は問い返す。
「なぜ?」
船団の人員は20名は随伴していて、さらに地下にはすでに、先行していた部隊もいた。
「太閤が到達したんだろう、それなら地下20メートルがいいところだ、梅田は地質が緩いから当時の土木技術では掘れないだろう。」
「常識ではそうですね。」
談迷子が割り込む。
「ここの地層を調べると、太閤の時代はもっと地上にあったんです。」
「それでも深すぎる。」
談迷子は問いかけた。
「他に質問は?」
「この場所はなんだ?」
「ここは旧梅田地下街、地盤沈下で沈んだ。大部分が土砂の中で、少しずつ船団の人たちが掘り起こしてくれてる。発表すれば世界遺産なのは間違いないね。」
「こんなところに観光で来たい人間がいるとは思えないが。酸素は大丈夫なのか?」
「メインエレベーターは空気の抜け穴でもあるの、私たちくらいの人数なら大丈夫、安全のために計測は随時してはいるよ。」
ラームはガルムを随伴している、しかし鼻がきつそうだ。
色々な臭いがまじっている。
どうしても、地上に向けてのさまざまな匂いが上がってくるようだ。
「そのガルムを使ってほしいから呼んだのだけど、その子は大丈夫?」
「お前には俺から盗んだフェンリルがいるだろう。それを使えよ。」
岸田が割り込む。
「ここから、槇島博士は研究室に向かっていたことは手記から分かっています。しかし、この先がほとんど埋まっていて、進むのが困難なのです。」
困難な理由はグラビトロンの影響だという。
地下を闇雲に進めば、グラビトロンが濃いエリアにぶち当たり、進めなくなる。
槇島博士はどうやって、グラビトロンの薄いところを判別したかは手記に書いてあってあった。
一定の法則があるということだ、月齢からおおよそそれは予測できる。
しかしながら、グラビトロンは槇島博士の時代から少しずつ増してはいたようだ。
その法則や、考察もある程度は書いてあったが、手記の頃は土砂がまだなかったのだろう。
参考にするにしても、景色は全く変わっている。
「ここをどのように掘り進むかを調べてほしいと?」
「半分はそうです。談迷子女史は手記の内容から、この梅田の地下に槇島博士の研究所があることは突き止めた、そこまではいいんです、このグラビトロンが厄介なのです。船団の仲間も何人かは影響を受けて、任務を続行できなくなっています。」
「人間への影響というのは?」
死にはしないらしい、治療を続けて好転しているということだ。しかし、この情報はラームを安心させるためのものかもしれない。
「単純に強く脳と骨に多大な影響を与えます。」
グラビトロンとは、重力を伝播するための波と考えられている。
令和の現代においては観測が非常に困難である。
まともに観測できればノーベル賞の受賞は固いだろう。
相対性理論においては、重力というのは重要な要素であり、時間や時空を構成する際に必要とされる。
談迷子や、岸田はグラビトロンが魔法使いの発生にも影響していると考えている。
船団が最も掘り進めた先端まで岸田は案内した。
そこに行くまでにも数時間を要し、複雑な網の目のような構造を進んだ。
少し気になったのは、すれ違う船団の作業員は全て軍属であったことだ。
そのような姿はしていないが、立ち姿や、動きでなんなくはわかる。
「なぜ、彼らは銃を?」
「我々はある意味陰謀論者です。だからいつ襲われるかわからないと考えています。ご安心を日本にも許可はもらってますので。」
談迷子はそこに着くまでの間ずっと、マッピングをかかさずに行っていた。
「で、俺にどうしろと?」
岸田は答える。
「グラビトロンは観測できますか?ここでも相当濃いはずです。」
「重力が強くなっているようには感じないが・・・」
ラームはガルムの状態を確認する、
重力の歪みを感じているかを確認した。
確かに地上とは僅かな差があるようだ。
しかし、地下だから、気圧の差かもしれない。
「そこまで顕著ではないが、変化はあるようだ。」
岸田は答える。
「素晴らしい、船団に指示をして、グラビトロンの小さい方向に掘り進めて行きたいんだ。」
「逆じゃないのか?逆さ桜の間がグラビトロンの発生元なら強い方に向かって行ったほうがいいんじゃないか?」
談迷子が割り込む。
「川の上流に向かうと言って、川が蛇行していることもありますから、川の中を突き進むのが正解とは言えないでしょう。」
「お前はフェンリルを返せよ、本当にさ。」
その言葉を無視して談迷子はマッピングを続けていた。
ラームは何かひっかかる、先程の武装した兵隊である。だけど、すでに報酬はもらってしまったから、一応義理としては協力する必要がある。
それから、ラームと談迷子は地味な発掘作業を始めた。




