真相 1
本町でキョウジが戦う少し前の話である。
談迷子は雑賀故我に連れられて、天満から南に進んだ雑居ビルにいた。
そこでは本町通りに向けて大勢の子供が移動していたのだ。
電子双眼鏡で人間が観測できる遥か遠くから様子を確認している。
雑賀故我はちょっと待ってと言って、小型の鳥型ドローン飛ばす。
その様子を電子双眼鏡の映像に重ねて詳細を写していた。
「何を見ればいいの?」
「背中に杖を背負っているやつがいないか?」
談迷子は眉間にシワを寄せて確認するが、デジタルではあまり効果無さそうだ。
「もう少し近づけてない?」
そう言った際に映像の向こうで1人の人がふわりと宙に浮いた。
「人が浮いた!!」
「多分、その人だ!その人をよく見て。」
ドローンがもう少しだけ近づく、しかし、風もなにもなくらドローンはその場に落ちた。
雑賀故我は少し慌てながら。
「やばい、気づかれた、すぐに逃げるよ。」
ここから、対処までは、五キロはある。
こちらを探知なんてできるのだろうか。
談迷子は雑賀故我と一緒に逃げながら、聞く。
「あれ、あの人、知ってるでしょ?」
「それを確認してほしかったんだ。」
「あれは初代談迷子よ。私の祖母の。でも、若すぎる。昔の写真のままだわ。」
「若造りなんでしょ。」
「若すぎるでしょ!」
「宙に浮くことと若返ること、どっちが凄いことかな。現に私も結構年寄りだし。」
「馬鹿にして。」
本当のことだ、雑賀故我はこの物語の中ですら2度殺されているが、ここで元気に生きている。
だんだんつまらない話になりながらも、商店街に戻っていた。
「私にあれを見せて、どうしろと?」
「あれが談迷子かを確認してほしかっだ?どうだった?」
「若すぎるけど初代で間違いないわ。」
雑賀故我は笑顔だ、ずっともやもやしていたものが晴れたように。
「素晴らしい、やはり君に頼んで正解だったよ。依頼の件。」
「まだ言っているの?」
「逆さ桜の間に到達できるのは談迷子の知識が必要なんですよ。誰も梅田の地下構造なんて理解していないんですから。」
最初に上海で狙われたのも梅田の地下の情報だった。
「すでに、初代談迷子が逆さ桜の間に到達しているんでしょ、じゃあ、それを追えばいいじゃない。」
困った顔を雑賀故我はしている。
「それが、大阪天満宮のルートなんでしょうね。大阪天満宮の七本の松、あなたも知ってるでしょう。」
大阪天満宮には七本の松があり、夜ごとに光を放ち、やがて、天皇の耳に入り社になった。
「光ってまさか、例の赤いマシーンの光?」
「そう考えるのが普通なんだろうね。そこから、エネルギーを辿れば逆さ桜の間に到達できるんだろうけど。」
「けど?」
「そんなことができるのは人間じゃないんだろうね。神格化してしまった、初代の談迷子くらいなんだろう。」
【難波宮跡 UDA陣地】
本町通りの戦闘が終わった後である。
青い髪の子供は三谷秀一と、日創から状況についての意見をもらっていた。
シャオミが辺りを警戒している。
「あの宙に浮いた人間は何なんだ?雷とか、バリアとか、半身を吹き飛ばされて再生するとか。」
「あれが、一部だよ、探していた力の一部。たぶん、神格化している。」
「神格化?神になったということか?」
青い髪の子供はわかりやすい切り口を探している。
「あれに到達されているならもはや隠す必要もないかもね。本当は誰よりも先に見つけたかったけど。」
今まで喋ってこなかったことを喋りだした。
「イグドラシルには・・・ユニットワンには青い髪の人がいるんだ。イグドラシルの自己進化プログラムの中で生まれた。」
なんとなく、三谷はそれはわかっていた。
この青い髪の子供は人工的に生み出された人間であると。あまりにも完璧だからである。顔が声が体のバランスがこの世のものではないように感じる。
三谷は一応確認する、その内容がさきほどの神格化と関係するのかと。
焦っているのだ、自分が連れ出した、戦場に連れてきたキョウジが消えてしまったからである。
久我流で無敵のようだが、彼はまだ子供である。
では、戦場に出さなければよかったと言われれば、キョウジ以上の戦力もいなかったのだろう。
日創は被せて別の問いをする。
「イグドラシルはなぜ、人を作り出したんだ?」
青い髪の子供は答える。
「万物は神のみこころによって存在し創造された。」
三谷はうまい返しに驚いた。
「黙示録か。なるほどな。」
これは地球の人間にも言える、人間はなぜ生み出されたのか、進化の末なのだろか、イグドラシルが神という存在であれば、地球の人間同様に作り出したロジックは理解できないのだろう、むしろ青い髪の少年は理解する必要がないと言っているように聞こえた。
青い髪の少年は続けた。
「イグドラシルは自己について、理解できないことがある、それを地球まで行って確かめてほしいと、私に使命を与えたのだ。どのようにしてイグドラシルは生まれたのかを調べてほしいと。」
三谷は先程、人が生まれた意味について、理解する必要がないというのに、イグドラシルのAIはそれを求めているというのは変な話だと考える。
「イグドラシルができた理由って歴史の教科書にあるだろう、槇島博士が人類のためにエネルギー問題を解決するために基礎理論を開発したと。」
青い髪の子供は首を振った。
「1人の人間が神に匹敵する存在を生み出すなんてあり得ない。とイグドラシルは考えている。」
「つまり?」
「神のようなイグドラシルのAIには人間が作ったものではない、原盤が存在するんじゃないかと考えるに至ったようだ。そして、長年の調査により、赤い光のエネルギーを地球から観測したのだ。」
日創がまた割り込む。
「それでも原盤を作ったのは結局は人間じゃないの?」
「誰が作ったか、よりもイグドラシルが求めるのは原盤は存在するか?みたい。なぜ、そこに執着しているかはわからないけど。私と同じようにイグドラシルにもなんらかの使命があるのかもね。」
「イグドラシルの使命といえば、人類のエネルギーの安定供給じゃないの?」
「それは一つとしてはそう。でも、できれば、イグドラシルも、何か大きな使命があると思いたいし、大きな使命があるからこそ、槇島博士はこんなに巨大なシステムを作るしかないんじゃないかって思うようになったんだ。だから、我々が地球に遣わされたんだ。」
それが、先程目撃した、神格化の原因を指すのか、梅田の地下にある赤い光の発生源なのかは、いずれわかることになるだろう。




