憧憬
劣勢だった。
思えば上海、大連全て劣勢だった。
それにしても今の状況は酷い。
黒いマシーンは倫理など守らない。
こちらは小うるさく戦闘倫理について細かく指摘をされて、兵器のレギュレーションまで細かく決められている。
敵はとんでもない力を持った兵器を使う。
杖を振るえばあらゆる敵を貫くし、もう一度振るえば傷を癒す。
こちらは、努力、根性、気合、あとは肉体だけで勝負をしているのだ。
これほどの理不尽はない。
そういえばファンタジー小説に出てくる剣と魔法の世界というのは本当だろうか。
火の玉を飛ばしてくる敵へ剣で立ち向かって、相手を倒せるのか。
雷を落とす敵に近づけるのか。
巨大なドラゴンの肌を剣で貫けるのか。
剣と魔法を同格に考えるのは無理があるのではないか。
その戦力差は考えてみると理不尽である。
【大阪城前南広場】
先程倒した子供と、酸欠で倒れていた子供達は次々と回復する。
これが魔法の力なのだろう。
キョウジは流石に状況が悪すぎると感じている。
防御面はサーモバリック搭載ミサイルを連続で防げるバリア
攻撃面は雷で瞬時に複数のマシーンを破壊可能
疲労や怪我は回復可能
総じて大規模で強力すぎる魔法兵器だった。
しかし、こんな強力な力を使っているのだから、消耗してシャオミの攻撃が今なら通るだろうか。
キョウジはその規模と強力さに驚いているが・・・
それよりも別のことに更に驚いている人間が2人いた。
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宙に浮いている人は驚愕している。
キョウジは雷を避けて、最後は生身で突貫し、切り札の回復魔法まで使わせた。
ただの人間がこれほど強いのであれば、戦い方を考える必要がある。
久我幻魔のチームを和歌山で撃退したが、倒せなかった。
理由として500名という大所帯故の欠点が災いした。
今回も、その人数の多さを狙われて子供達に物理的に攻撃を加えられた。
強力な武器にしても、あまりにも不安定すぎる。
これなら、黒いマシーンに搭乗させた魔法使いの方が安定感はあるのかもしれない。
今後は今回のような運用のタイミングは慎重に考えなければならない。
そういう考えをしていると、一瞬で右半身が吹き飛んだ。
先程から狙ってきたシャオミの弾丸が直撃したのだ。
バリアの力が弱まっていたのだろう。
本来は人間に使うものではない大口径である、人間がバラバラになるくらいの威力を持っている、バリアで減衰したからこれくらいで済んだのだ。
しかし・・・そのダメージすらも、瞬時に杖の力で再生する。
「バリアが弱くなりすぎている。心臓か杖に直撃していたら・・・」
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シャオミはバイパスの上から目標に直撃した事を確認していた。
「これでも、殺せない、もう神話の不死の怪物だね。」
今、シャオミにできることは弾がなくなるまで、攻撃し続けるだけだった。
しかし、それよりも先に宙に浮く人は、初めて出す一本の杖を振るった。
そうすると、目の前にいた500人の集団と宙に浮く人は一瞬でいなくなった。消えたのだ。
「消えた?撤退?」
集団は消えたが、依然として魔法使いが乗る黒いマシーン達は健在である。
シャオミは状況を確認して、三谷秀一に報告する。
雷を放つ敵は消失、よく言えば撃退
黒いマシーンの魔法使い達は健在
味方は壊滅
キョウジは敵と共に消失
この状況により、依然劣勢
これが大阪城の戦いの顛末だった。
【大阪城 地下シェルター】
倉間と丸山は地下シェルターから、カメラで本町通の戦いを確認している。
信じられないものを見た倉間は、呆気に取られている。
丸山は元から久我幻魔を撃退した勢力と知ってはいたが、これほどの常識はずれの戦いが起きるとは思ってもみない。
倉間は丸山に聞いた。
「どうする?このままここに残るか、宗家の言うように大阪城を捨てて、京都に移動するか。」
京都の柳生宗千佳はラタトスク工業と和解するつもりである。
武装解除は必要ではあるが、その前に柳生の安全の保証とナハト王からの裏切りの制裁を受けないように立ち回る必要はある。あの若い宗家にそのような動きができるのだろうか。
丸山は口を開く。
「柳生宗千佳が・・・新宗家が、京都で生身でドローンファントムを倒したのは本当なのか?」
「何の話をしている。本当だ、目撃者もたくさんいる話だ。三条通りで大立ち回りをしたからな。」
「そのあと、1人で柳生を制圧したのも?」
「本当だ、前宗家を倒して、その正統性を示した。」
丸山はひどく疲れたのか、ため息をつく。
「信じられないような光景を、俺も今見た、雷を飛ばす、ミサイルを防ぐ、人を癒す。」
「ああ、そりゃ、俺も見ていたからわかるよ。」
丸山は何の話をしているのだろうか。
そもそもが、政治をすることに長けた男だ。
倉間にはわからない。
「なぁ、倉間よ、そのドローンファントムを倒したの今の宗家とお前はどちらが強い?」
「多分俺だろう。」
「それがわからない、お前さんは柳生の筆頭だろ、それが少し前までは泣き虫のお嬢さんが、お前に『多分』と言わせるほど強くなっちまった。」
確かにそうかもしれない、なぜいきなり強くなったのだろう。
丸山は続ける。
「多分、元からそうなんだろうな。俺とは違って。」
「丸山さん、あんたも十分強いだろうに。」
丸山が言いたいことは、人間というのはいつ強くなるかということはわからないという事である。
これは人を指導する点に常に一つのテーマとなる。
倉間は計りかねている。
ミッションとしては大阪城を放棄させて京都に合流させるというものだ。
下手に刺激してナハト王に合流させることは避けたい。それなら現状維持で大阪城に篭らせている方がマシである。
「先程の力を見たか?」
2度目の問いである。
「だから、魔法使い達の強さだろ。」
「そうじゃない、神のような力に刀一本で怯まずに拮抗する男だ。なんだありゃあ、500人に対して1人だぞ?あんなもん・・」
声が小さくなった。
倉間は聞き返す。
「あんなもん、誰でも憧れてしまうじゃないか。」
丸山はキョウジの戦いを見て、超常の力を使うナハト王のサイドにつくのでは無く、刀一本でドローンファントムを倒した、柳生宗千佳の力を見てみたくなった。
そうして、大阪城を放棄する事を決めたのだ。
「やはり、柳生のような武家は、剣士は必要なのだ、だから魔法使いのようなよくわからない奴らに屈してはな。」




