必死
後で聞いた話だ。
シャオミはなぜ、キョウジが三谷秀一に、UDAに協力しているか不思議だった。
そりゃ、あの檻の中にいたらそのうちイグドラシルの半役人のようやつが連れてって上海の倫理違反を理由に処刑されるだろう。
その時間を延ばすためというにはあまりにも過酷すぎる。
黒いマシーン、次々現れる魔法使い。
知らない上官。全てが死ぬとしか思えない状況だった。
キョウジはこう言った。
「死ぬまで生きる、それがキョウジって名前の意味だから、仕方ないんだ。」
それだけを説明した。
全くもってシャオミには理解不能だ。
【本町通り】
ヘルファイアミサイルの攻撃はほとんど、バリアのようなものか、または杖から放たれる雷により撃墜されている。
500名を越える魔法使いの力を使っているのだから索敵、バリアくらいは使えても不思議ではない。
キョウジはその様子を確認しながらも、ミメイ経由で三谷秀一に更なる支援攻撃を依頼した。
そうしつつも、キョウジのマシーンは500人の魔法使いと、宙に浮かぶ人に向かい突進していく。
キョウジは敵がバリアを使っている間は攻撃が来ないことを理解した。
証拠として、敵はできるだけ雷を使い細かく攻撃を防いでいるようだ。
キョウジはすでに敵の索敵網にひっかかっている。
攻撃を受けない理由はヘルファイアの処理の方が優先だったからだろう。
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宙に浮かぶ談迷子と呼ばれる人は、ヘルファイアミサイルの連発は少々面倒だと考えている。
いくら訓練しているとはいえ、魔法使いは子供の集まりだ、この波状攻撃で疲弊していくことは明らかである。
ただ、外から来たUDAがミサイルをそんなにUDAが日本にそれほどの数を持ち込めたとは思ってはいない。
新たな攻撃が談迷子に届いた。
「なんだ?あのバイクからの攻撃か。」
バイクから放たれた攻撃は弾丸だった。
バリアを削り、眼前ギリギリで停止した。
それが、二発、三発、とんでもなく正確な精度で発射されている。
「劣化ウラン弾か、UDAに倫理感はないようだな。」
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最初に攻撃を加えたのはシャオミだった。
バイパスの上から、大きな大きなスナイパーライフルで、宙に浮かぶ人を狙撃した。しかし、眼前ギリギリで止まったようだ。
「キョウジくん、強力な弾丸だったのだが、バリアを破ることはできないみたい。」
『こちらでも、観測してました。三発とも、静止位置が違いました。何度も試したらうまく貫通するかも。』
「いずれにせよ今から狙われるだろうから、少しだけ身を隠す。」
『了解』
その通信を切るか、切らないかの間で、シャオミは雷撃をその身に受けてしまった。
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談迷子と呼ばれる人は顔色ひとつ変えてはいない。
キョウジが、敵の集団200メートルに迫ってもだ。
その時新たにヘルファイアが飛んできて、撃墜前に爆発した。
想定以上の凄まじい爆発である。その爆発は貧者の核と言われるサーモバリック弾である。
空中200メートル程度で起爆したようだ。
あまりの爆発ではあったが、バリアにより衝撃波は集団には届かなかった。
「また、非倫理的な兵器を・・・グラビトロンの収束が弱まっている?」
魔法使いとはいえ、子供の集団である。
目の前の度重なる爆撃、先程のマシーンを破壊する殺人行為、精神的な負担は避けられない。そして。
インカム越しに何人も、倒れているという報告があった。
「バリアは完璧に機能していたはずだ。」
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「どうなってるんですか、集団の中で倒れていく人が多数。」
「予想通り、バリアだなんだって言っても、酸素は外から取り入れるしかない。」
キョウジを含むマシーン登場者はマシーン内の機能により酸欠を免れていた。
インターバルがあることから、断続的にバリアを使っているわけではないことも知っていた。
だから、キョウジはサーモバリックを依頼して周囲の酸素を焼き尽くしたのだ。
その説明をしながらも、宙に飛ぶ人に再び、レールガンを打ち込んだ。
しかし、これもまだバリアが機能していて塞がれてしまう。
反応から、先程よりはかなり弱ってはいるようだ。
ミメイは1人の魔法使いと戦うことがいかに無謀か知っている。
「すごい。」
キョウジはあの神のような雷を見て、500人の魔法使いを見て、立ち向かい、しかも、戦えている。
そんな姿に惹きつける敬意と憧れを感じてしまったのは当然のことだった。
UDAが持ち込んだサーモバリック弾は一発のみ、ここで決めるしかない。
「このまま押し込めるかも。」
眼前に黒いマシーンに乗った魔法使い達がキョウジを排除しようと集まってきた。
「押し込めるって、不利な現状が何か変わったのか。」
ミメイに対してちゃんと仕事をしろと伝える。
炎が、氷が、キョウジのヴァイオラを襲う、接近戦に持ち込んで、それなりにヴァイオラはくらいついていたが。
パリンっという音がした。ガラスの割れるような音。
その音は、ヴァイオラが、雷に貫かれた音だった。
そして、ミメイはキョウジとの通信を失った。
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キョウジの誤算というか、雷を放つ杖は充電式であったことだ。
酸欠の子供達が倒れたことで、充電スピードは落ちたが、すでに充電されていた分で攻撃は可能であった。
「やっと、倒したか。もうミサイルも飛んでこない。もし、戦闘で毎回これほど消耗するなら、やり方を整理する必要があるな。」
倒れた子供達の酸欠は、軽いものだったようで、少しずつ立ち直っている。
そう考えていた矢先に、何かが頬をかすめた。
先程の劣化ウラン弾の攻撃である。
血がしたたる。
バイクのやつは確実に雷で貫いたはずだぞ。
一瞬、ほんの一瞬、思考が停止した。
しかし、その一瞬が、索敵を緩くした。
下にいる子供達の中から大きな悲鳴が聞こえる。
インカムで状況を確認しても、まともな回答を得れない。
「魔法使いと言っても子供は子供か。」
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見せしめのようだ。
キョウジはできるだけ、子供に危害を加えることはしなかった。
そのキョウジの刀は、人を切り裂いた血で染まっていた。
さきほどの雷で貫かれる前にマシーンを捨てて、生身で広場に到達していたのだ。
その動きも狙いの一つだったのだろう。
500人の魔法使いは所詮子供である、マシーンがないと、魔法を使うことすらできない。
そこに達人であるキョウジが現れたのは、鶏の檻にライオンが入れるようなものだ。
まさに、蜘蛛の子を散らすとはこのような光景だろう。
子供の叫び声、鳴き声が伝播する。
キョウジは一人目を見せしめに派手に血が出るように切り裂いた、二人目以降はできるだけ、殺さないようには攻撃をしていく。
命が狙われていても、子供に危害を加えるのは無理があるのだ。
最初の血だらけの仲間を見て子供達は冷静でいられるわけもなかった。
乱戦である、マシーンに乗った魔法使いも、仲間達に攻撃が当たる事を恐れて、手を出せずにいる。
キョウジは3分も経たずに、20名以上を行動不能にしている。
あの強力な雷を使うためにはどれだけの子供が必要だろうか、とりあえず100人くらい削れれば機能不全になるだろうか。
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談迷子と呼ばれる人はその光景を見て、心を痛めた。
自分が戦場に連れてきたのだが、それでも。
そして、もう一本の蛇が巻き付いた杖を取り出した。
「アスクレピオス」
そう呟いたところ、酸欠で苦しんでいた子供はすぐに立ち上がった。
なんと、先程キョウジに切り裂かれた子供は、傷が塞がり、回復したのだ。




