大阪城 攻略戦 その4
少し昔の話である。
雷蔵とキョウジは稽古をしていた。
素手で柔の型稽古をしている。
先代久我幻魔の仲間の雷蔵はキョウジに言った。
「また、お前の負けだ。もっとよく見切るんだ。」
雷蔵は天根から依頼されてキョウジに教えている。
子供の面倒と言っても、半分雷蔵は稽古できればなんでもよかった。
「負けって、型稽古でしよう。」
「天根から何を習ってたんだ?型稽古は稽古型としてするもんだ。型には勝ち負けがある。気持ちよく勝つために型があるわけがないだろう。」
技を伝えるために型があるわけではなく、稽古をして技を身につけるために型を稽古する。
型武道の基本である。
「もう一度、お願いします。」
しかし、どのように工夫をしても、どうしても雷蔵に勝ててるとは思えない。
丸太のような腕、鋼のような手、それでいて、柔軟な思考、全てが上回っている。
何度やっても勝てない。
しかし、何度も繰り返していると、不思議なことがわかる。
型の動きに慣れることで心が慣れて、自分の不自然なところがわかるのだ。
居つくという言葉がある。
体が、心がそこに留まり居つくのだ、そこから動かなくなり固くなる。
気づいてきたキョウジを見て、雷蔵はその状態がなくなるように動くのがまずは基本であると伝えた。
【大阪城前 本町通り前線】
15人の魔法使いが配備されていた。
そのうちの5人がキョウジを牽制している。
魔法使いの反応が多数あるだけで、どんな魔法を使うのかはわからない。
それぞれざ黒いマシーンである。
当然、赤い光のチェーンソーを持っていた。
考える時間もなく、キョウジのヴァイオラはデュアルレールガンで足を止めずに一体を狙い撃つ。
しかし、その攻撃は何かにはじかれるように掻き消されてしまった。
「今のも魔法?」
「はい、おそらくは、まだ、観測されていない魔法なのかもしれません。」
反撃で赤いチェーンソーから攻撃がキョウジを狙った。キョウジはビルの影に隠れて攻撃を避ける。
敵はキョウジを追撃してくることはなかった。
陣地の防御が目的なのだろうか。
その時別の方向から、魔法使い達に実弾による攻撃が黒いマシーンに降りかかった。
キョウジ側のUDAの20体のマシーンが追いついてきたのだ。
実弾攻撃は先ほどと同様にバリアのような物で防がれている。
その様子はキョウジは確認している。
魔法使い達は、火と風の魔法でUDAのマシーンを牽制し、それに紛れて赤い光のチェーンソーの攻撃で、UDAのマシーンが三体ほど行動不能にした。
キョウジは先程重力使いを倒したが、これほどの戦力差があるのだ。
戦闘倫理アドバイザーのミメイは、キョウジに撤退を推奨する。
先程の重力使い一人ですら、危ない状況だったのだからそのアドバイスは当然である。
「撤退をしましょう。」
「なぜ?」
「なぜって、説明は不要でしょう。多勢に無勢、しかも、相手は魔法使い達です。」
「わからない敵の想像よりも、まずは追いついてきた僚機の情報がほしい。」
キョウジはUDAの部隊情報を受け取った。
その内容を読み取りミメイに伝える。
「三谷秀一経由で小隊長達にコンタクトして。提案権限をお願い。」
戦闘倫理アドバイザーは上官から無理な要求への割り込みと、上官へ現場の判断を根拠を持って提案することができる。
「提案する内容は?」
「今集まっている三部隊のうち、イースーチの部隊以外は2キロ後退を要請。後退しながら、ミサイル攻撃を続けて、それ以降は都度指示する。敵はできるだけ殺さないようにと伝えて。」
---
遮蔽物に隠れた、イースーチの部隊は大連に続きガングルーの5体で構成されている。
まだ、この戦場に来てから誰も死んでいないのはイースーチの指示が優秀だからだ。
相変わらず旧式のマシーンである。
「なに?俺たち以外後退だと?」
戦闘倫理アドバイザーはカナコは詳しく補足する。
「はい、そのように連絡を受けました。また敵はできるだけ殺さないようにと。」
イースーチは殺さないでという内容は無視して聞く。
「相手は魔法使いの反応が出ているのだらう。そして既に味方は5体やられている。」
「他部隊の後退がはじまります。」
---
「キョウジさん、UDAの部隊の後退がはじまりました。」
キョウジは敵の様子を見ている。
敵は後退する敵のみに攻撃を仕掛けている。
しかし、後退している敵は倒しにくいようだ。
ミメイに問いかける。
「なぜ、魔法使いの反応が出ているのに敵は魔法で攻撃しない?」
「二つ考えられます、一つは魔法自体のインターバルでしょう、疲労ですね。もう一つは黒いマシーンで十分な戦力差か。」
「または、両方か、か」
黒いマシーンは後退する敵を追いかけた。
その追いかけた黒いマシーンにキョウジはブレイドで飛びかかる。
魔法を使う間も無く、足を切断し、背中のエネルギー受容体も破壊する。
何体かの敵のマシーンはキョウジを襲ったが、またビルの影に隠れてしまった。
「まずは一体。残り14。」
「味方を囮にして、敵をばらけさせたってことですか?」
魔法使いはまとまると、連携されるが、バラけるとインターバルがあるため、魔法の使用率は大幅に下がるのだ。
「コツコツ倒していくよ。」
---
殿を任されたイースーチの部隊は最悪である。
目の前には炎が飛び交い、地面が氷塊になり動きが止められ、強い風が吹く。
天変地異の最中である。
更には赤い光の矢がこちらを狙ってくる。
部下には絶えず場所を変えていくように伝える。
カナコに意見を求める。
「おい、こんな状況で作戦が続けられるわけないだろう。」
「でも、一体撃破したようです。」
「は?この状況でか?誰がやった?」
「作戦に加わっている、連合のヴァイオラのようです。」
「大連のあいつか。じゃあ、あいつに伝えろ、俺たちは他の奴らと別方向に後退する。とな。」
---
「キョウジさん、イースーチの部隊は別方向に後退するとのことです。」
「構わない、作戦の意図は読んでくれてるみたいで助かる。と伝えて。」
キョウジはそういいつつ、魔法使いの電撃の範囲攻撃を避けていた。
電撃攻撃は装甲を超えてパイロットに直接向けられるため、非常に凶悪である。
キョウジは呟く、居つくな、だ。
電撃のインターバルを見切られて、レールガンで電撃使いのマシーンの足が破壊する。
そのあとは接近して魔法を使うたまのエネルギー受容体を破壊した。
再びマシーンをビルの影に隠した。
「すごい、二体、連続で魔法使いを撃破した記録なんてないです。」
「俺一人じゃないよ、こちらは20体以上で攻撃しているんだから。しかし、倒せるのが俺一人だと時間的に効率が悪すぎるな。」
ミメイは違和感があった。
「なぜ、パイロットを殺さないようにしているのですか?」
「んー、子供は殺せんでしょ。夢に出るよ。」
「なぜ、子供だと?」
「さっきの重力使いもそうだし、この他のやつらも思考が稚拙すぎる。積極的には攻撃してこないし、撤退する敵には調子に乗ってしかけてくるし、隊列も簡単に乱す。」
これは確信ではなかった、しかし後でわかるが、その通り子供がパイロットをしていた。
「魔法使いでも、子供だから倒せていると?」
「それは別に関係ないんじゃない?」
「というと?」
「言わさないでよ、恥ずかしい。」




