大阪城 攻略戦 その3
【難波宮跡】
転倒した黒いマシーンは微動だにしなかった。
ひっくり返って動けなさそうだが、一応はマシーンを拘束した状態で、無理やりハッチをこじあけた。
キョウジは中のパイロットの状態を確認する。
中にいたのは子供である、14、15くらいだろうか。
そんな子供を戦場に送り込んでいるナハト王をキョウジは不快に感じた。
キョウジはカメラで戦闘倫理アドバイザーのミメイに状況を伝えている。
「うーん、どう見ても子供ですね。それも女の子かな。」
「イグドラシルの倫理では少年兵を戦わすのは倫理的だと思うか?」
「私からすると、キョウジさん。貴方も似たような年齢に思えますけど。そもそも、戦闘倫理アドバイザーの立場は戦争自体が良くないものなので。コメントがしにくいのです。」
子供を戦争に駆り出す事は良くないが、そればかりを批判すると、大人が殺し合いをしていいのかという議論になる。
大人が自己判断の上で戦争で死んから、自己責任とはせず、戦闘倫理アドバイザーは戦争での悲惨な結果を減らすことがミッションなのだ。子供を犠牲にしないため、大人を犠牲にしていいという回答は難しい。
「お役所の考える事はわかりにくいね、この子は、完全に伸びている、相当倒れ方が悪かったんだろう。」
キョウジはまず、腕を拘束する。
「絶対に殺さないでくださいよ。」
「無駄に人を殺す意味がない。むしろ、こうやって敵を助けてるんだから、倫理的だと思ってよ。でも、こいつ本当に重力使いのグラムなの?」
重力使いグラムは壮年で顔も公開されている。
完全に別人なのだ。
少し時間が経って、UDAの部隊が、到着した。
その中には大連で捕縛した青い髪の子供も含まれていた。
難波離宮跡がUDAの陣地として安定したと判断するとすぐに、キョウジは大阪城の攻略に出て行った。
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青い髪の子供は魔法使いの子供の目に光を当てて見て言う。
「もどき、だな、魔法使いとして、調整されている。目の奥に青い光が見えるから。」
青い髪の子供はシャオミの監視付きであるが、ある程度自由に作戦に参加している。
そもそも、大連での事件の発端はこの子供なのだ。
赤い光のエネルギー源の存在を教えたのが全ての始まり。
それを元に各陣営がエネルギー源を奪取または破壊しようとしている。
青い子供の目的はエネルギー源への接触のため、どの陣営に与して関係はないのだと、シャオミは説明を受けている。
最も、何か怪しい行動をとればシャオミがどこに逃げても命を取ると説明していた。
シャオミは失神した子供を覗き込む。
「人工の魔法使い?聞いたこともないけど。」
「間違いはない、実際に重力操作をしたのだろう。」
「どうやって人工的に生み出すの?」
青い髪の子供はこう言う、槇島博士の文献では、元々、全ての人間の脳には魔法使いの要素が存在する。
しかし、その機能は大人になると失われていく。それを薬で強制的に抑制、肥大化させるのだ。
「なぜ、そんな便利な機能は失われていくの?」
「槇島博士は子供時代は身を守るためにある程度必要だが、歳を取ったら普通に生活できる力を持つから無くなると推測している。考えたことはない?子供が自然環境で生きられるのは奇跡みたいなもんだよ。それに対してそういう力があっても変じゃないでしょ。」
「逆じゃない?大人の方が力を上手く使えるでしょう?」
「個人では便利な力でも集団だと和を乱すんだろう。だから、そういう能力は排除されて、ある程度みんな同じ能力に揃えられるようにできている。突出した能力がある人ってのは種族にとっては迷惑なんだろうね。」
どういう理屈であれ、結局は戦争の道具とされているから、不幸である。
その時、子供が目を覚ました。
子供は女の子だった。
「・・・だれ?」
シャオミはニコリと答える。
「スーパーマンよ。」
「スーパーマン?」
「貴方のお名前は?」
「ミナ・・、私はどうなるの?」
少女は明らかに怖がっている。
「ミナちゃん、安心して。少し教えて欲しいな。なぜこんな戦場へ?」
シャオミが書き出したかったのは、他に魔法使いがいるのか、薬を使って魔法使いを作ったのは誰か、である。
「先生に言われて、毎日訓練して、そしたら認められて、これからは金を稼ぐために戦えって。」
「先生って誰?」
「私たちを助けてくれた先生よ。生き方を教えてくれるの。とても優しい。」
話からすると、一人で生きていく必要がある子供なのだろう。
この時代では孤児というものは極限までいなくなっている。
倫理的に子供を保護すべきというのが世論だからだ。
しかし、そんな優しい人は戦場に生徒を送り込むだろうか。
「名前は言える?」
「談迷子先生。いつも、言う通りにするとうまくいくの。」
青い髪の子供が言う。
「はっきりと、洗脳を受けているな。尋問はせずに自分から言うことをまとめたほうがいいぞ。」
シャオミの目と髪が緑色に発光する。
「少しだけ、私の目を見て、ほら、緑色で綺麗でしょう。」
ジッと目と目を合わせる。
そして、髪の色は元の黒髪に戻った。
「嘘はついていないみたい。薬でもない。本当に優しい先生と認識しているみたい。」
なぜ、シャオミはわかるのだろうか、まだまだシャオミについてはよくわからないことが多い。
「繰り返すが、それこそが洗脳だ。」
人間は自分の意思で考えて生きている前提だが、色々な面で自分でなぜそうなのかという事を理解していない事はある。学校でそうだと、社会でそうだと様々なルールの上で生活するからである。
洗脳の定義は複雑なのである。青い子供の定義は利己的に他人を操るために思い込ませている事を洗脳と呼んだ。
「先生はそのままじゃ、死んじゃう子供を集めて、生きる力を与えてくれたの。」
「それが、魔法使いの力?」
ミナはうなづく。
「それに教育も。」
「そう、優しい先生なのね。」
ミナはさきほどより大きくうなづいた。
「友達は、あと何人いるの?できれば、戦場から助けてあげたいの。」
戦場から助ける、という意味がミナにはわからないが、シャオミが哀れみの目で自分を見ていることは理解できる。
「わからない・・・」
「仲間の数がわからないの?」
「多すぎてわからない。たぶん、2000人はいるとは思うけど。細かい数までは。」
【大阪城前 本町通り 柳生最終防衛ライン】
ミメイはキョウジに警告する。
「この数、異常です。目の前の15体のマシーン、全て魔法使いの反応です。やばいです、すぐに撤退をしましょう。」
キョウジは息を強く飲み込んだ。
「前進と攻撃だ。」




