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近未来梅田地下街紀行  作者: 川中太一
逆さ桜の間
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大阪城 攻略戦 その2

【大阪城天守閣】


柳生の丸山は地下シェルターに移動を始めている。

天守閣は敵の的になるからだ。


倉間は同行すべきか、京都に引き上げるか悩むが、日本軍と柳生の交渉が完了する前に柳生の拠点が陥落するのはまずいと考える。

新宗家の柳生宗千佳はラタトスク工業とのパイプがあり、経由して調整中である。

日本軍は旧宗家の身柄の引き渡しを要求してくるだろうが、家名に傷つく事を宗千佳はしないだろう。

であれば、ある程度京都の地盤を固めてから、支配権と安全保障を交換する考えのようだ。

京都は交通の要衝でもあり、最終的には日本軍との交渉は簡単なものになるであろう。


その前の倉間の懸念としてそもそも、この大阪城は守り切れるのかというのがある。

丸山は先先代宗家の時代から柳生家に奉仕しており、柳生家の傭兵ビジネスに大きく貢献した男である。

久我の流のチーム、SASと並んで世界に名前が通じるのだから、その功績は言うまでもない。

その直轄の部下も大阪城についていて盤石と言える。


丸山は移動しながら言う。

「そろそろ、ナハト王の部隊も参戦すると聞いている。」


「黒いマシーンの性能が良いのは認めますが、パイロットがまだまだ未熟でどうなりますかね。」


「ナハト王が一番よくわかっているさ、だから、彼らは梅田でパイロットを増強してたんだろ。」


ナハト王の部隊はタクラマカン砂漠にある小さな部族の出である。

戦闘経験は非常に少ない、それで柳生の力を借りて日本に支配地域を作ったのだ。


「増強ですか?」


「そうだ、すでに樽井の報告でも、魔法使いが複数確認している。」

樽井は柳生忍軍ですでに故人である。


「魔法使いは世界に十二人と聞いていますが。」


魔法使いは、地球に放射されているイグドラシルのエネルギーを受け取って様々な形に力を利用できる人間をいう。

ラタトスク工業のビリーのパイロキネシスが有名である。

マシーンを行動不能にすることができるほどの発火能力を持つことができる。


倉間からすると大連で敵としてビリーが参戦していて、事変の鎮圧に失敗しているから、それほど魔法使いは万能ではないと認識していた。

一対一ではほぼ無敵ではあるが、脳の負担が大きく、連続で能力を使うと精神がダウンしてしまうからである。


「確認されているのはそうだろうな。噂を聞いたことはないか?大阪で魔法使いもどきがたくさん存在すると。」


「そりゃあ、噂くらいなら。」


「その、もどきを斡旋するバイヤーが、ナハト王についたんだろうさ。」


【難波離宮跡】


キョウジのヴァイオラの前には三体の黒いマシーンが、立ち塞がっている。


戦闘倫理オペレーターのミメイは警告した。

「大連の黒いマシーンです、今までの柳生のマシーンとは違います。」

柳生のマシーンももちろん、違法なエネルギーを使うように切り替えられているが、そもそも、黒いマシーンは違法なエネルギーを前提に生産されている。

その違いか、性能は段違いだった。


「よく知ってはいる。でも、こういうのは数とパイロットの連携次第かな。」


不思議である、キョウジは横にステップした。

何かを避けるように。


行動を不思議に思いつつ、ミメイは計測器のエネルギー供給に少しブレが発生していることに気づく。

「エネルギー供給にブレが出ています、この反応は典型的な魔法使いの能力反応です。」


「能力の種類は?」


「すぐに照会します。・・・これは、重量使いグラムと同じ波形です。」


「世界に十二人しかいない魔法使いが相手とは光栄だね。」

もちろん、黒いマシーンに乗っているのは、もどき、である。

先程、キョウジが避けたのは重量使いの攻撃なのだろう。

しかし、どのように察知して避けたのだろう。


ミメイはアドバイスをする。

「キョウジさん、貴方が強いのはわかります。しかし、中途半端に魔法使いと戦っても敗北します。攻撃をし続けて能力を使わせないか、撤退するかの二択です。」


キョウジはすぐに回答する。

「前進と攻撃だ。」


三体の黒いマシーンは一斉に赤いチェーンソーを回転させる。

すると、光の矢が発射される。


大連でキョウジは一度でも見ていたのでかろうじてかわしていた。

「すごい、三体の攻撃を全部かわすなんて。どうやって」


武道の基本である、呼び込みである。

相手の攻撃をギリギリまで引きつけて、少しだけ避ける。

チェーンソーの攻撃はあまりにも速いが、肉眼で攻撃をかわすのが困難なのは刀や、ボクシングのジャブでもそれは同じである。

できるだけ、敵の動きを見て、攻撃の起こり見て避けるのだ。


つまり、ある程度間合いがあると照準がブレるのでキョウジクラスには回避されてしまう。

キョウジには散弾や、機関銃のような荒い攻撃の方が効果はあるだろう。


ミメイはその技術に感嘆しているが、ピンチには変わらない、キョウジからすると何か有効なアドバイスが欲しいところだ。


「なぜ、重力使いは先ほどの攻撃に合わせて魔法を使ってこない?」


「インターバルだと思います。短距離選手が100メートルを全力で走った後、休まずに更に100メートル走れないように、魔法はそれだけ疲労するのです。」

圧倒的に強い能力であるが、そんなに便利なものではない。

キョウジは懸念を聞く。


「重力使いが、マシーンに乗らずどこかに、隠れている可能性は?」


難波離宮跡は平地である、マシーンが隠れるスペースはない。

人間一人ならどうだろうか。もし、魔法使いが隠れていてそこから重力で攻撃されれば防ぎようもない。


「低いとは思います、マシーンを縛るくらいの重力操作はマシーンのエネルギー受容体を逆操作しないとできないからです。」


ビリーがマシーンに乗って戦闘している理由もこれである。

人間単体ではそれほど大きな力を出せないのだ。

ファンタジーの魔法使いが、ワンドを使って魔法を使うように何か媒介がいるのだ。


「じゃあ、決まりだな、一番左の機体に重量使いが乗っている。」


「なぜ、わかるんですか?」


「なぜ、わからないの?」


判断した理由は、一体だけ素人の動きをしているからである。

部隊の中でバラツキはあるだろうが、それほど目立つ動きなのだ。

攻撃した後の判断、照準を合わせる速度、様々な要素から読み取ることができる。


キョウジは、そう言って、一番右のマシーンに斬撃を仕掛ける。


そのときである、足を引っ張られるような、感じがして、マシーンの動きを止められたのだ。

オートバランスが作動して、転倒だけは防げた。


ミメイはキョウジの死を確信した。

その時間は2秒程度ではあったが、一撃でマシーンを貫くチェーンソーを持つ敵を前にしては致命的である。


しかし、すぐ近くで大爆発が起きる。

爆散したのはヴァイオラではなく、先程キョウジが使ったフレームブロワーのガスタンクだった。

爆炎と爆音が響きわたる。

的になるからと、ヴァイオラから取り外した後、リモコン爆弾をあらかじめ仕掛けておいたのだ。


その爆発に気を取られて一瞬だけ、ほんの一瞬気が取られて、右の一体のコクピットをヴァイオラのブレードが貫いていた。

容赦のない攻撃だ。

三体と魔法使いを相手にキョウジには余裕がないのである。


ミメイは事務的に声をかける。

「パイロットの死亡を確認しました、それ以上そのマシーンへの攻撃は禁止されます。」


キョウジはデュアルレールガンで、更に魔法使いでない方のマシーンを攻撃する。

その攻撃はうまくヒットしなかった。

まぁまぁ、パイロットがうまい。


「なぜ、魔法使いを先に攻撃しないのですか?」


「魔法使い云々じゃなくて、技量順に落とすのが基本だ。相手を一つの戦闘単位として考えろ。」


魔法使いという要素は脅威ではあるが、それを脅威たらしめているのは、三体という要素と、手の一撃必殺のチェーンソーである。

素人の魔法使いの技量では、キョウジにチェーンソーを当てるのは困難だろう。

だから、まずチェーンソーの当たる確率を削っているのだ。

しかし、キョウジのいるコクピットに直接重力攻撃を仕掛けられたら命に別状はなかったのだろうか。

多分、理由は不明だが、キョウジの中ではその攻撃の可能性はないのだろう。


「インターバルは確認している?」


「はい、70秒でした。連続使用ですから次は更に間隔が空くと思います。」


戦闘倫理アドバイザーはパイロットの指示もなく色々な情報を集めている。極めて優秀である。


「上等。じゃあ、前進と攻撃だ。」


攻撃をしかけようとすると、魔法使いの乗ったマシーンが後退していく。

それを見てもう一体のマシーンも撤退を始めた。


キョウジは呆気に取られた。

「なんで撤退していくの?」


「貴方が鬼のように強くて、容赦なく味方が殺されて、正気でいられるものですか。」


さすがに戦闘倫理アドバイザーである。客観的な判断だ。


「そんなもんかな、俺が背中から追撃するとは考えないのかな。どう思う?」


「どう?って、追撃はするのですか?」


キョウジは行動の評価を聞いていたのだ。

ミメイは戦闘が終了したから、そういう思考ではなくなっている。


「今は敵は二体、こちらは一体、追撃すると反撃をもらうかもしれないから、俺の場合はしないけど、戦場で相手がまともな精神状態かなんてわからないじゃない。俺ならそんな博打はしないかな。今なら逃げるより、戦って死ぬ確率の方が低いと思うけどね。」


「じゃあ、言う通り、まともな精神状態じゃなくなったから、彼らは逃げ出したんでしょうね。自分の命を使って生き残れる想像をできる人は少ないかとは思います。」


キョウジはそんなものかもしれないないと思い、撤退する敵を見ていると、魔法使いが乗っている方のマシーンが、倒れていた。慌てて転倒したのだろう。

起き上がる様子はない。もう一体は見捨てて逃げて、視界からは消えていた。


恐らく魔法使いはコクピットで失神しているのだろう。

すかさず、トドメを刺そうとしたキョウジを、ミメイが戦闘倫理アドバイザーの名の元に制止した。



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