再びの男
【天満 ゲームセンター 溜まり場】
何度も、襲撃してきた半グレのアジトに、サングラスをかけた談迷子が乗り込んだ。
場所は陰気なレトロゲームセンターだ。
実力差は圧倒的で、すぐに制圧は完了した。
リーダーと見られる男。浜田という。
気になっていることもあるし、尋問をすることにした。
「強盗して銃まで使うんだから、弁解の余地もないとは思うけど、一応は事情を聞いてあげる。なぜ、あんな強盗を繰り返してるの?」
「金が必要で・・・」
「普通の理由ね、」
「それはわかるけど。殺されるかもしれないから。」
話を聞くと、天神橋筋商店街には二つの半グレのチームがあって、抗争が続いている。
もう一つのチームは怪しい薬を使って、不思議な力を使えるようになったようだ。
その不思議な力で味方を痛めつけて回ってるらしい。
「貴方達の仲間も、不思議な力を使ってなかった?」
「薬を仕入れて、何人かは使えるようにはなった、ただ思い通りに使えるわけじゃない。」
浜田は、指先に力を込めると、電気が発生したようなバチバチっという音がする。
薬を使うと空気中のエネルギーを使って、いろんなことができるようになるらしい。
かなり制御が難しいらしい。
「俺は静電気を起こすくらいしか、薬の量が足りてなくてこれくらいしかできない、」
「さっき、喫茶店で襲ってきたやつらは、飛んでくる弾丸を空中で焼き尽くしてたけど。そのあと、制御できなくなって全身が燃えてたようだけど。」
「そこまで強い動きはかなり珍しいけど、ストレス性の防衛本能だね。弾丸が飛んできて自分が死ぬと思っての反応で、そんなのしたら、きっと三日は反動で寝込むよ。」
談迷子はアーカイブを調べている。
確かに魔法使いと言われる人たちは空気中のイグドラシルからのエネルギーを拾って、いろいろな現象を起こしている。
それを薬で無理やり起こしている?
なんとなく、オスシの寿司屋の冷蔵庫にも関連しているように思える。
「薬が出回り出したのはいつから?」
「ここ、二週間くらい。敵のチームはかなり薬を使ってるから、火柱や、氷を使えるやつも出ている。大阪城を支配している奴らがいるだろ、あいつらが薬を使って魔法使いの仲間を増やしているんじゃないかって。強い力を持つやつらはナハト王に志願して結構な金をもらってるって。」
半グレに薬を流通させて、金を稼いで、魔法使いの才能があったら戦争で消費する。合理的な動きだ。
「ふーん、迷惑ね。」
電気製品が壊れたのも、二週間前くらいからである。迷惑というのはそちらの話だった。
だから、そのチームがいる周りの天神橋筋商店街の北側エリアで故障が発生しているのか。
「そいつらは天満宮の近くにいるんじゃない?」
「そのあたりとは聞いていたけど。」
魔法使いが、イグドラシルのエネルギーに干渉することで、家電製品が使えなく事象は昔から確認されている。
一般的な電気製品は空から流れ落ちるエネルギーを拾うだけだが、魔法使いはそれを集約させたり乱したり、非常に不安定になるのだ。
しかし、まず、そんな薬が本当にあるのかな。
一応はオスシに原因と思われる調査内容をメッセージで飛ばした。
「もう一つの質問、貴方達はなぜ私を狙うの?怒らないから言いなさい。」
すでに、怒った表情で言うのだ。
「捕まえて来いって。」
「誰に?」
「その、依頼人がいて。」
空気が変わる。
上海の時と同じである。
同じ匂い、同じ空気。今さっきまでそんな気配はしなかったのに。
「お久しぶりですね、談迷子さん。と言っても初めましてかな?」
そこにいたのは、上海の顧客で、誘拐犯の雑賀故我であった。
すぐにフェンリルが飛び出した。
しかし、雑賀故我はひらりと攻撃をかわす。
「貴方は死んだんじゃ。」
「ひどいですよね、上海の個体、最近では京都の個体も殺されました。」
「マスプロダクションヒューマノイドですか。槇島博士の研究テーマの一つ。」
槇島博士はイグドラシルの開発が長期に渡ることを知っていた、だから、自分を複製して、研究を続行していくことを望んだ。
それが、大量生産された槇島博士である。
問題は色々と出た。人間の思考というのは思い通りに行かない。
生まれた個体達はイグドラシルの開発に興味がないばかりか、知識レベルが槇島博士ほどの水準に達するものは一人もいない。
その研究は、マリナのブーステッドヒューマンの実験にも影響を与えているのである。
雑賀故我は少しずつ考えを改めて、槇島博士のクローンとか薬剤のような科学ではなく、成長によって、槇島博士のような存在になるという思考になったのだ。
「そうですね、私も槇島博士を素体にしています。よくご存知で。」
「とりあえず、迷惑をしてるから、私を狙うのをやめさせてくれない?」
雑賀故我は無視して話を始める。
「上海の私が言ってませんでしたか?また依頼すると。」
「ナハト王に入れ知恵したのも貴方なんでしょ、戦争を起こして、みんなが迷惑しているよ。」
雑賀故我は少し笑ったようだ。
「談迷子に対しても苦労をしている人は多いのです。」
「私が?なんでさ?」
「貴方?じゃない、貴方じゃない談迷子、です。」
「別のって。母?」
今喋っている談迷子は3代目である。
談迷子の目的は逆さ桜の間に到達することである。
上海で事務所を構えていたのも、情報収集をして、母に渡すことだった。
母は船団と一緒にすでに15年は逆さ桜の間の調査を続けている。
上海の事件の少し前から、母とは連絡がつかなくなっていた。
だから談迷子は、母を探すことを目的としている。
「たぶん。そうだと思います。さきほどの薬のバイヤーが、談迷子さんと聞いています。」
怪しい情報ではあるが、参考にはなる。
「それと、あなたじゃない、推測ではありますが、談迷子はすでに逆さ桜の間に到達していると思います。」
これには、驚いた。
「なぜ、そう言えるの?」
「ナハト王の近辺に、青髪が何人か入っています。恐らく目的は赤い光の脅威性の確認です。」
「わからない、逆さ桜の間に到達するだけなら、軍隊なんていらないでしょう。ましてや、日本に協力を求めればいいのに。」
「柳生を通して実際その交渉はあったようですね。日本はもう脅威性を知っていて、協力なんてさせなかったでしょう。現に八咫烏と風魔が動いているようです。だから、梅田を広く支配して調査をする必要があった。ナハト王からすると権益の独占して故郷を復興するチャンスだったんだろうね。柳生は野心かな。」
説明によると、ナハト王は中央エレベーターが稼働次第、赤い光のエネルギー源に向かって穴掘りをはじめるようだ。
大連の事件でエネルギー源の位置は梅田のHEPの下300メートルであることは確認しているためである。
中央エレベーターは地下220メートルまでは降りることができるから、そこからの採掘になる。
「じゃあ、ナハト王についていれば、そのうち到達できると。」
「ええ、近いうちにできると思います。しかしながら。」
少し話がずれている気がする。談迷子の母の話題だったような。
「では?母は、談迷子は、今も逆さ桜の間にいると?」
「概ね、その通りだと考えています。だから、改めて依頼したいのです。逆さ桜の間への到達を。」




