天満
天満に至るには、一度地上に上がる必要がある。
大国町まで地下街は続いているが、そこから先は通行止めである。
しかし、案内にはオスシがいた。
「ごめんね、こんな危ない事をお願いして」
談迷子は少し申し訳ないのだ。
「いえ、まぁ、ゲームの対抗戦はほぼインチキみたいなもんだし、店も気になるし」
「店?」
「そう、寿司屋で働いていて。天神橋筋商店街って知ってますか?」
天神橋筋商店街とは日本で一番長い商店街である。
天満駅前から、南北に延びている。大阪を語る上では外せないといえる。
難波や、新世界が大阪の中心や、象徴と語るものは多いが、作者は思う、天神橋筋商店街のような、生活が根ざした所こそが、その地域を表す記号なのだ。
地域住民がパチンコで金を吸われて、毎日通っても問題のない金額の立ち飲みに行き、そして、場末のようなクラブや、バーに行く。そのような世界観である。
話がそれるが、そういった地域住民の民家が多いエリアの食べ物のイメージといえば、大阪名物のたこ焼きである。元来のたこ焼きは、小麦粉が薄すぎて隣のたこ焼きとくっついているようなものだった。
これが異常に熱い、もはや、味を認識することはできない。それがいいのだ。
しかし、近年は大玉でカリッとした、一つ100円を超えるような、たこ焼きすら現れた。
これは月島のもんじゃにもいえるのではないか。文化を商業化してしまったため、現地の人が普段から食べる値段ではなくなり、味も変わっていき、本物から遠ざかる。
観光客が、これが大阪の味だと、期待して食べるものは、どんどんと現地の人は普段食べないものになってしまっていく。
この変化はどこの地域でもよく見られるが、誰も得はしないものである。
さて、大国町は、大阪城と、梅田の境にあって、地上はナハト王の支配地といえど、地下街が発達していないので、あまり警戒されていない地区となっている。
地下から上がったところは古民家の隠し通路だった。
「ここから、天神橋筋商店街に抜けれますよ。」
久方ぶりに地上に出た。
不思議な地域だ、梅田でもなく、天満でもなく、古い街で、ある意味上品で、その街だけで経済が回っていくような時間が止まったような雰囲気を感じる。
オスシは何回か、ナハト王の兵士と出会うも別に何も気にする事なく、歩いた。
フェンリルはリュックの中にいるのが窮屈なのか、ご機嫌な表情で一緒に歩いている。
「変わった猫ですね、リードもつけないで、逃げないんですか?」
「まぁ、不便もさせてないからね、逃げてもこの子の人生(猫生?)だから、いいけど」
「猫に虐待とかしないよりはいいですけど、それは飼い主として少し無責任に聞こえますけど」
フェンリルをドローンと知らないからオスシも少し言ったが、談迷子がフェンリルを酷い扱いをしない事は雰囲気で大体わかる。
談迷子はそう考えてるのも本当であるから、談迷子は信頼できる人であるというように考えるのだ。
いくら懐いていても、車に轢かれたりとか、不慮の事故があるから、リードをつけたほうがいいのだろうが、フェンリルは車より頑丈だから問題ないだろう。
15分も歩かないうちに天神橋筋商店街に着いた。
この商店街は地下が浅く、ナハト王の支配下に置かれている。
オスシは報酬について考えてた。
「談迷子さんはデータマイナーですよね、急がなければ困り事の相談があるのですが。」
「お世話になったから、それはいいけど、できる範囲なら。」
天満エリアは、地下で京橋と繋がっていて、浅く広大な地下を構成している。
地上部については、天神橋筋商店街が、日本橋の黒門一番とくっつくほど、南に伸びており、世界一の商店街となっている。
地下のオスシの寿司屋に談迷子は通された。
入り口には閉店中と書いてある。
入るなり、店主が閉店中だよ、と言う。
オスシが、俺だよ、と談迷子を紹介する。
「どちらさん?」
「データマイナーの人だよ、冷蔵庫を見てもらおうかと。」
しっかりと消毒をして、厨房に入った。
談迷子にこの冷蔵庫が壊れて、直せないかと。
データマイナーの仕事としてはどうかな、しかしできることはすると言ったから、原因くらいは調べることにした。
エネルギーはイグドラシルから引いているようだ。
オスシは言う、他の店もそうなんだ、冷蔵庫や家電が壊れている家が多くて。
「フェンリル、ちょっと見てくれない?」
なぉー、というとフェンリルは冷蔵庫に乗っかかり、横になる。
店主が、おい、毛が落ちたら困るぞ、というが、フェンリルから毛が落ちることはないと説明した。
そんな事を信じる人はいるのだろうか。
談迷子はフェンリルの分析結果を受信する。
見ても全然、なるほど・・・わからん。
コンプレッサーは正常そう。
エネルギーを大きく使おうとすると、急にパワーダウンする。
「他の店も同じなの?」
「ええ、そうですね、」
「それなら、他の店の状況も見せて欲しい。」
オスシの案内で、焼肉屋、立ち飲み、卸売市場、雑貨店と次々と調べていった。
40店舗目に到達した時に次の店に行こうと言ったら、オスシは音をあげていた。
「まだ、まわるんですか?どこに行っても、全て使えないってことしかないじゃないですか。」
「まだって、まだ40件だよ?サンプルとしては少なすぎる。」
データマイナーの仕事はデータの調査と発掘と裏付けである。
警察や、探偵を超えるレベルで調査をするのが普通である。普通不要だと思うレベルである。
思えばオスシは冷蔵庫を復旧させたかっただけで、新しい冷蔵庫を報酬として要求すればよかったと考えた。
これはオスシのデータマイナーという仕事に対する考えの甘さである。
電子使いラームならもっと早くにわかるのかもしれない、しかし、談迷子はデータマイナーの仕事として受けたから、データマイナーとしてのやり方をするのだ。
フェンリルも横で、なぉ、と言っている。
談迷子は長い長い天神橋筋商店街に問題をマッピングしながら、電気製品の問題が、北に行けば弱まり、南に行けば強まることに気づいた。
この異変は談迷子からすると非常に面白い課題だ。
その日は結局、120件まで調べて、オスシには、明日からは自分で調べるといい、宿を教えてもらって、更にゆっくり調べることにした。




