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近未来梅田地下街紀行  作者: 川中太一
逆さ桜の間
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79/80

残骸

談迷子はあれから、ホテルに宿泊して東梅田のデータセンターを調査している。

植田とラジャは教団員を何人か捕まえて、ナギの騒ぎを誰の仕業か吐かせようとしていたようだ。


地上への道は再び、ラームが捕まえた方のナギによってロックされている。


【東梅田 スナックパーク】


談迷子は端末に、きつねうどんを記録している。

関西は薄味文化というが、うどんの味は薄くはないように思える。

厚揚げも大きくて、甘い。

四国のうどんは歯応えがあって美味しいが、この関西風のまったく歯応えのないうどんは慣れると、早く食べれるし、なかなか美味しいように思える。


東梅田のデータセンターはこのスナックパークの地下の商業エリアにある。


人間が住むエリアはゴミ処理、水等が重要になり、商業エリアはデータセンターの廃熱や、横移動のインフラが重要になり、性質が違うからだ。

この地下構造は、誰か特定の人が作ったのではなく、何十年もかけて作成されたらしい。


植田とラジャはあんな風にゲームで権利を賭けあっていたが、結構偉い地位の人で、インフラの安定とか、日本政府とかの交渉とか自治を担っている。

日本政府が地上の支配権を失って地下と連絡がつかなくなっても、地下が問題なく機能しているの彼らの手腕といってもいい。


【商業施設エリア】

商業施設エリアには、エレベーターで移動する、入り口でパスを見せて、警備員に階層のエレベーターに誘導される。階層のエレベーターから、さらに何回かエレベーターを乗り継いで、さらにデータセンターの警備員にパスを見せてナギが取り憑いていたサーバに到達した。


サーバはフェンリルが破壊した、その破壊方法が派手だったので、今も調査に苦労している。


「そろそろ、オスシの言ってた天満の母の調査もしたいんだけど。」

少しだけ、弱音である。


上海の事務所と違い演算装置も今は弱く、手持ちの端末で復旧しながら、データのサルベージを行っている。

ブレードサーバが細胞のようにナギ様のサーバを構築している。その中の完全に壊れたブレードサーバを談迷子の端末が代わりに最低限補って、サーバの再起動をしようとしていた。

ナギがまた復活しても困るから、起動はセーフモードに設定している。


そのやり方を何回か繰り返したあと、結局は断念した。

その間、ラームから、データマイナーを馬鹿にするような挑発が何度もあった。


母の言葉を思い出す。

「データマイナーは、ただ端末を操るだけじゃ、だめ、全体を見通すことが大切なの。」


もう一度、自分の目で見てみよう。


壊れているものからデータを吸い出すなんてできるわけないのに。

壊れたブレードサーバを引き出して、チップを確認する。

どうみても、汎用品で変なところはない。


やはり、中身のデータに何があるのだろう。

ラームはきっとそれを知っていて自分にやらそうとしている。

試しているか、それに近い何かがあるのだ。

むしろ、ラームを締め上げた方が早いかも。


複数あるストレージから僅かに生き残ったデータを調べていると、おかしなことに気付いた。

フォルダとファイルの構成である。

今まではプログラムに解析させていた。

それではわかるわけもない。


プログラムファイルを全て、Sartreというフォルダに置いている。


哲学者サルトル

人間は自由の刑に処されている

という言葉が有名である。


談迷子という名前の由来でもある。

自由ということは迷うということ、迷うということは選択肢があるということ、それが人間の運命であるということ。

初代談迷子はこの言葉が好きだった。

敢えてイグドラシルシステムのような倫理観まで決められた枠の中で生きるよりも、何が正しい倫理かを考えながら生きるのである。

しかし、それは自由により様々な事を選択し、その結果を背負う罰を背負うことになる。


そのフォルダ名は上海の自分の事務所のサーバにあったものだ。

ということは、このサーバを構築したのは、一人しかいない。


端末を操作してラームに電話をかける。

「あなた、知っていたのね?」


『そういう評価は光栄だな。何の話について?』


「このサーバを構築したのは母なんでしょ、それを私に納得させるために、こんな調査をさせて。」

ラームの口から今回の事件の首謀者が母だと言っても談迷子は信じないだろう。


『そうか。半分は勘だった。そうか、やはりそうか。』


談迷子はラームに色々と聞き出そうしたとき、リュックからフェンリルが首を出した。


なぉー、とのこと。


なぐさめてくれているのか、しかし、いずれにせよ、地下街の人を苦しめたことを母に聞く必要がある。


「知ってることを言いなさい。」


『言いたくない。しかし、そのサーバを構築したのは君の母ではない。』

ラームは少しトーンダウンしている。


「なぜ?」


『おまえ、母親に直接あったのはいつだ?』


「そうね、3年は前になるかな。」


『そうだろうな、電話や、メッセージのやりとりは?』


「それは先日もしたよ、梅田の地下街でずっと調査してるって。なぜそんなこと聞くの?」


『そうか、じゃあ、探してみるんだな。俺は喫茶店にしばらくいるから、なにかあったら連絡をくれ。』


談迷子は言う。

「言われなくても探すわよ。」


談迷子はオスシの言っていた天満に向かうのだ。



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