表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
近未来梅田地下街紀行  作者: 川中太一
逆さ桜の間
PR
76/77

クライシス 3

システムのサービスを提供する際に、物理的にサーバが壊れるとサービスが停止する。

対策として複数サーバで一つのサービスを作ることで、いずれかのサーバが壊れてもサービスを継続するこもができる。

難しい問題としてどこにデータを持つかである。


複数サーバでデータを保持すると何が最新かわからなくなるからである。


二つのデータベースをリンクして、一つのデータベースを表現する場合、どちらかがマスター、どちらかがスレイブとして、一方通行でコピーしておき、マスタがダウンするとスレイブがマスターに昇格するとか、そもそも複数サーバに物理的に同じディスクを繋ぐクラスタ構成とか、データベースを複数サーバで構築するとか、色々なやり方が考えられたが、完璧なものは結局生まれなかった。


ナギは東梅田のデータセンターが物理的にダウンする前に梅田北ヤードのデータセンターにデータをコピーしていた。

東梅田のナギへのヘルスチェックに失敗すると、そのコピーデータから自らを起動させたのだ。


そのあとはいろいろなストレージに分散させていた最新データから己を復元させた。


もともと教団が起動に苦労したプログラムだったから、ナギからすらとかなりリスキーな行動ではある。


ナギは起動から数日しか経っていないのにほぼ地下の全てを掌握し、データの更新は頻繁である。そのバックアップについても課題が多い。


【駅前ビル 喫茶店】


ナギが再起動したあとに、ラームは談迷子に北ヤードのデータセンターの破壊を依頼した。

先ほどよりはセキュリティがあがるだろうから、うまくいくだろうか。


警備ワームに拘束されていたサングラスの女は、立ちあがろうとした。

が、足がもつれてこけた。

シークレットブーツを履いていたようだ。


サングラスもこけた勢いで飛んでいく。


スーツの男が驚いたようにいった。

「マ、マリナちゃん?」


ラームは気づいた。

「大連で会った娘か?」


こけた女は言う。

「鬼マリナ?、わたしは違うよ。」


「なるほど、シリーズか。」

マリナは人工的に生み出された人間である。

その後発として生み出された人間達、現在は傭兵として、花達の会として活動している。


ラームは名前を聞いた。

「・・・、たんぽぽよ。」


女はそう名乗った。もちろん、役目はラームの監視なのだろう。

手洗いに行きたいというのも嘘である。

そういう野暮なことはラームは聞くこともしない。

どうせそうだから、聞くまでもない。


スーツの男は興奮している。

「あのマリナちゃんが、こんなところに。」

無断で写真を大量に撮影していた。


ラームはスーツの男の身元を照会すると、その男は教団のようだった。

へぇ、とラームはスーツの男に話しかける。


「おまえさん、マリナって女性に興味あるのか?」


端末の大連のマリナの写真を見せて言う。


「そ、それは、マリナちゃんの写真」


「動画もあるぞ。どうだ、欲しいか?」

スーツの男は喜んでデータを受け取った。

その写真と動画の数は20を超える。

無茶苦茶悪い顔をラームはしている。


そのデータは教団にまたたくまに広がった。


端末上のナギは私に対する嫌がらせか?とラームに言う。

「欲しい人がいたら、データは共有する、そういうもんさ。」

他人の個人情報をかってに配布してはいけない。

ラームは自慢げに自分のデータを渡して喜んでいる。


たんぽぽはそれにしても、マリナに似ている。

スーツの男はこっそり、たんぽぽを盗撮さえしている。それほどの人気なのだろう。


ラームにウィフから有線の準備が完了したと告げた。

換気口からガルムに引っ張らせて、喫茶店内部まで引き込むことにした。


ナギは聞く。

「何のケーブル?の話?」


「演算装置だよ、お前を消すには、データセンター並みの大容量の演算装置が必要なんだ。」


「ふぅん、役に立つとは思えないけどね。」


「まぁ、過去に消した実績はあるからしばらく待っててくれ。」


「そんなこと言っていいのね。じゃあ、根気比べをしましょう。」

ナギは喫茶店の電源を落とした。

ラームが抑えたルーターより外の配電盤で電気を閉じたのだろう。

各自が持つ端末の明かりだけになり、店は暗闇に包まれた。


「おいおい、これじゃ地上とのネットはつなげないぞ。」


「貴方ならその気になればできるでしょう。それまでは、暗闇にいなさい。」


視覚を奪う、多分次は換気を止めて嗅覚、異音を発生させて、聴覚、と順番に追い込んでいくんだろう。

ナギは気づいてないが、暗闇にすることで逆に喫茶店の防火シャッターを破る動きは鈍った。


暗闇の中で、そのうちガルムがケーブルをくわえてやってきた。

ケーブルを渡した後は換気口に入っていった。フェンリルと一緒にデータセンターを破壊しにいくのだろう。

ナギ様はそんなもので、私を消せるとは思えないけどね、と伝える。


ラームが端末に物理線を繋いで

「じゃあ、少し試してみるか。」


すこし端末を操作するとラームはナギにクラッキングを仕掛けた。

ナギの姿がまた崩れて、すぐに復帰する。

「つまらない攻撃ね、不正なプログラムなんてすぐに排除するに決まってるじゃない。壊してもバックアップから復帰するけどね。」


ウィルスを止める仕組みには、そもそも不正なバイナリをはじく機能と、怪しい動きをしたら弾く機能の二つがあり、さらには侵入をファイアーウォールが止めている。ラームは特定のポートに対してメモリのオーバーフロー起こしてファイアーウォールをリセットし、侵入を試みて、ウェアを起動したが、すぐに対処される。


「ま、そのうちわかるさ。それにしても意外なのは。」


「なによ。」


「マリナの写真をばら撒いても嫉妬も妨害もしないんだな、と」


「画像や動画は概念に対する虚像だから、本当にマリナに差をつけるなら、マリナ自身を消さないと意味はない、規制するとさらに信仰心を煽るだけだわ。」


「ご丁寧にどうも。」

他の女の情報をスルーするのも、むしろ立派な嫉妬の現れで、それに介入すること自体をAIは恥と考えている、妨害すると同格になると考えたのである。


ここで妨害をしないことがこの後でラームの手口を許すことになる。


闇の中でも相変わらず、スーツの男はマリナの画像を拡散している。教団の半分以上には送信されている。

男はナギ派ではなく、マリナ派だから、その布教である。


ラームは大連では明らかに撮影していない少し際どいような画像と動画をどんどん、演算装置で作成し、スーツの男に提供していく。


【駅前ビル どこか】


ラームの攻撃を逆流して、演算装置に侵入する。

演算装置はどうやら宇宙にあるようだ、地上に高速通信アンテナがある。

転送時間10分。

あとはこの衛星からイグドラシルに潜入すればいいのである。


電子使いラームの迂闊さに勝利を確信している。

確かに北ヤードのデータセンターを破壊されると、同規模のものはもうない。

ここから、はイグドラシルに接続している全世界に自分のコピーをばらまいて、いけばいいのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ