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近未来梅田地下街紀行  作者: 川中太一
逆さ桜の間
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大阪駅前ビル

結局、ラジャは談迷子を連れて行くことになった。

チーム対抗戦は各チーム三名で行われる。

そのうちの一人を談迷子は倒して見せた。

対戦で使われたゲームは「すくすく犬福」クイズゲームである。当時の知識を問うゲームでデータマイナーに勝てるわけがないのだ。

あまりにも完璧な勝利であった。


しかし、格闘ゲームとしては実力不足かもしれない。

そこにラジャは一抹の不安に感じるもの、植田チームの大将は最強プレイヤーのオスシである。

談迷子をオスシにぶつければ元々負けていた勝負だ、という考え方を持っている。


福島から駅前ビルには30分程度でつくとのこと。

福島の関所を抜けると今度は飲み屋街になり少しずつ汚くなってくる。


「封鎖をしているのになぜ食料が持つの?」


ラジャは答える。

「イグドラシルからのエネルギーは基本的には無限だよ。地下にプラントだって作れるさ。酒蔵、化学プラントですら作れるんだ。」


「まぁ、そうかもね。上でドンパチしてても平和なわけね。」


「そういうこと、地下への道を潰して仕舞えばナハト王が降りてくることなんてできないよ。やつらも白兵戦では我々と変わらんだろうからね。中央エレベーターを使えばマシーンを下ろせるんだろうが、それも電力を落としているわけさ。」


日本軍がさっさと明け渡したのもわかる、ここは天然のシェルターなのだ。


「敵に電子使いがいて、たぶん、梅田には来てるんじゃないかな。地下へのエレベーターは物理的に電源から切断しておいた方がいいよ。」

早速電子使いを封殺していく談迷子である、


「まじか、それはいい情報だな、連絡しておくよ。」


談迷子はゲーム大会について質問を始める。

「今回のゲーム大会の方式は?」


「種目は3タイトルだ。バーチャファイター2、カプコンvsSNK2、ギルティギアゼクスだ。それに各チームが一人ずつ代表を出して戦うんだ。オスシはギルティギアだから、必然的にあんたはギルティギア担当だな。」


「練習の時間は取れる?」


「少しは取れるが、なんだ、プレイしたことはないのか?」


「バーチャファイター2の方よ。」


中之島を越えるために四ツ橋線の地下鉄路線路跡に入る。

この時代の地下鉄はもう御堂筋線以外は全て動いてはいないのだ。

地下は横軸よりも縦軸の方が広くなり、移動は複雑である。

3階層ほどしたのモノレールを使う事が多いのである。


どうやらここからはラジャの支配地域ではないらしい。

各所にかかってる旗の色が青にかわった。

特によそ者のラジャが入ってきても警戒はなさそうである。


「もっと勢力争いが活発かと思ったらそうでもないのね。」


「関所なんかは作ってるが、俺たちは戦争はもうこりごりなんだ、できるだけ安定して楽しく暮らす。そのためには争いなんか無駄だろ。」


「というと?」


「知らんか?衣食住足りてからが人生は本番だ。バカはそのやりとりのために争いをする。」


「ん?わからないね。」


「衣食住のために戦争するより、服の工場、食糧プラント、広大な住処。そして他者が足りなければそれを与えてやる。そういう考えのやつが増えたんだ。教団は違うがな。」


教団と言われる集団は元は日本橋のでんでんタウンを住処にしていた。どうも彼らは地下の方が住みやすいようだ。

一般的な神仏を崇める宗教ではないという話を聞いた。

たまに凶暴なやつらもいる。あまり他勢力の前には出てこないので衝突にはならなかった。


西梅田駅を抜けて、駅前ビルに到達する。

談迷子はやっと端でも梅田に到達はできたことにほっとした。


駅前ビルには居酒屋が多く立ち並んでいる。

「こんな戦時下でも酒を飲んでるの?」


「やつらにしたら、地上の戦争なんて遠い国のサッカー大会みたいなもんよ。興味はあるが関心はないのさ。日々あそこで、安い金で酒を飲んでぐっすり寝ることを考えているのさ。」

オフィスも地上部よりも近場の方が遥かに大きいのだ。しかも、地下の方が温度管理が簡単と来ている、湿気に関しは少し難しいが、それは教団が快適にする巨大システムを運営しているらしい。


福島の街と比べてネオンが少ないし、呼び込みもない。

「なぜ装飾がすくないのかしら?」


「ここにいるやつらは駅前ビルの店を知り尽くしてるんだ、だから広告なんてそもそも意味がないんだ。」


「あの立って酒を飲んでる人は?階級差別かしら?」

所謂立ち飲みである。


「そればかりはわからねぇ、なぜ立ってるんだろうな。周りの居酒屋がいっぱいというわけでもないし。」

談迷子は端末で立ち飲みについて調べた。

文化について調べるのもデータマイナーの習慣である。

立ち飲みの情報は過去にアーカイブされていないので、インターネットアーカイブの方を調べた。


ハンドルネーム aki

立ち飲みに行くサラリーマンが絶えない理由について

・座る店には突き出しという席料が発生する。

・ビールが瓶ビールの事が多く、偽のビールを提供されることがない。しかも大瓶であることが多い。

・リーマンは普段オフィスで立ち仕事をしているからむしろ立って飲んだ方が体勢が楽である。

・まずい店であっても、すぐに出ても罪悪感がない。しかし、ワンドリンクワンフードを提示してくる店が多い。

・嫌いな上司は年上であることは多く、立ち飲みで素早く帰宅させることが可能である。

・上司は立ち飲みに行く部下は酒が好きで自分に気を遣ってきてくれているわけではないという気軽さと、奢るにしても安く済むメリットがある。

・立ち飲みは近畿に多く、中部には稀である、関東は角打ちは多いが立ち飲みは少ない。


あとは、立ち飲みでは赤星の瓶ビールを頼めとか、どて焼きは店によって仕様が違うから他の客が頼んでいる物を見てから頼め、一人のおっさんの横に行くと確実に絡まれるとか、ルールが多い店には行くな、とか、当時の風習が書いてあった。


談迷子はなんとなく立ち飲みの魅力がわかった気がした。

「昔のインターネットは不思議ね、こんなどうでもいいことを分析して。」


インターネットの文化は元々は個人のホームページと言われるものの集合体であったが、情報が氾濫すると、個人たちも情報を苦労して提供する意義を失い商用のものばかりになり、個人レベルの情報提供はSNSが中心になっていった。


どうも予定より早くついた、少し試合まで時間があるらしい。

「酒は戦いの前では厳禁だから、餃子でも食べるか。」

ラジャは中華の店に連れていったが、そこはいっぱいだった。

一階下に降りると同じ中華があった。


「噂じゃ、この中華は何世紀も前からあるらしいぞ。200万個の餃子を一日売っていた時代もあるらしい。」


餃子を3人前ずつ頼んで、ニンニクたっぷりの餃子を談迷子は食べた。

「ご飯とか、何か一緒に食べないの?」


「食べたければな、通はできるだけ腹に餃子を入れるのさ。」


「へぇ。美味しいね。」


「関西に来て餃子を批判するやつはいないよな。関東で、他の中華チェーンがのさばっているのは味のレベルが関西とは違うからさ。この店では揚げそばもオススメだ、無茶苦茶うまい。」

ラジャは止まらなくなった。


先程のインターネットアーカイブもそうだが、愛着があればたくさん伝えたくもなるのだろう。


談迷子は切り返した。

「この写真の人知らない?」


「?誰だろうか、見たことはないな。」


「そう。」


「あんたの母親がこの人か?」


「うん・・無事だといいけど。」

写真を見せたのは少しラジャを信頼したのだろう。


「探してはやりたいが、ここから先は植田な地域だからな。」


「もし、ゲームの大会で勝ったら探せる?」

ゲームの対抗戦は縄張りの取り合いである。

平和的に行われる祭典であった。


「そりゃあ、それくらいはしてやれるが。」


食べ終わり、ラジャは会計は自分でと、笑顔で来店のスタンプカードをためていた。


談迷子が調べると、あのスタンプカードを貯めると様々な割引があるらしい。

人に奢ってまで貯めたかったのだろう。


【駅前 第三ビル ゲームセンター カウンタック】

ラジャは受付をしてくるといい、もう一人のラジャの味方の参加者に紹介された。

黒田という。バーチャファイター2担当ということだ。


ラジャには炭酸ジュースを渡されて、しばらくゲームして待ってろと言われた。


黒田にバーチャファイター2の腕前を見せてほしいと伝えて、腕を見せてもらったが・・・


談迷子は肩に手を置いて伝えた。

「あなたに京都の千本通りに伝わる秘技を教えましょう。」


談迷子の知識でこの世界でのバーチャファイター2のゲーム性はこの大会以降崩壊するだろう、しかし、談迷子は自分の母に会うことを優先したのだった。

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