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近未来梅田地下街紀行  作者: 川中太一
逆さ桜の間
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尼崎横穴

【淀川 直下 元JR東西線】


尼崎で調達した地下マップをもとに暗闇を彷徨っていた。

なんと地図は手書きである。


端末の過去の地図を元に座標を補正していく。


梅田の地上はナハト王が制圧している。

十三側は日本軍が陣取っていて、梅田に潜入できる隙がある箇所は一つしかない。

ゴーグルと、口には防塵マスクをつけている。

人が来たことがもうほとんどないのだろう。換気が壊れて、暗闇で、最悪である。


そろそろ淀川は越えたかな。

全然である。端末とロガーで確認すると丁度真ん中くらいだ。

天井からは水漏れがある。


ネズミがいないのは、ここは水で満たされることもあるからだろう。

非常に危険である。

本来の線路はもうほぼ見えず、長靴が嫌な踏み心地である。


少し進むと、完全に道が塞がっていた。

手持ちの携帯スコップで、掘ると、カンっという音がなる。


地図を確認した。

手書きで、こう書いてある。

check point

と。


「関所、ね。」


ふと見ると、不思議である、側面に灯りがついたドアがあるのだ。

トンネルの壁面にだ。

赤い旗が貼ってある。


看板は店の名前だろうか。


バーハキダメと書いてある。

こんな捨てられたトンネルに?バー?


他に行くところもない。

バーのドアを開けたのだ。


「いらっしゃい。」


バーカウンターだった。

一人立っていた。バーテンダーは言う。

「すまないが、泥をおとしてくれないか。」


「ああ、ええ。」


その言葉に従って長靴の泥をおとした。

脇に洗うような水場があるので、濯ぎ落とした。


空調もあるようだ。

「ここは何?」


「バーだよ、休憩所とも呼ぶね。街の入り口だから。」


地図を取り出した。確かにそこの先に、赤い文字でcityとの記載がある。

リュックを下ろし、ゴーグルと防塵マスクは外した。


「お客さんは来るの?こんなところに。」

カウンターの客席に座った。


「来てるでしょう。」

そう言って水を差し出した。


「電気が通ってるなんて。」


「イグドラシルのエネルギーはほとんど水を通しません、だから、わざわざ、街からエネルギーを引いています。」


バーテンダーは門番として来客者の持ち物をスキャンする役割をもっている。危険な物があれば報告する。

動きでバレないように、スキャン装置を起動した。

その瞬間ナーゴっという猫の声が聞こえた。

警戒するような声である。


バーテンダーは過去にもどこかから猫が入ることはあったから、後で追い出そうくらいに考えている。


「支払いはカードでも?単位は銀で。」


「もちろん。」


頼んだのは粉ミルクだった。

まだ、しばらく歩く予定だから、アルコールは控えた。

「一応、アレルギーに関する物がないかを調べさせてもらいますね。」

通信端末の端にプラグを差して、その先の電極のような物を粉ミルクにつけた。


評価は青、汚染レベル、人体有害物質なし。


「変わったものを持ってるね。」


「汚染地域にいたこともあるから癖なの。」

単純にこんな怪しいところのバーテンダーを信用していないだけである。


梅田への行き方を聞いた。

「それはわかりませんね、しばらくあちらへは行ってないので。」


「なぜ?」


「モノレールが止まっている、ナハト王とかいうやつが三階層までのインフラを止めたようだよ。」


梅田を支配したとナハト王は言われているが、それは三階層までである。

何より四階層以降はマシーンを下ろすには不適である。大型エレベーターを使う必要がある。

主には地下の勢力はそこを守るか、最悪攻めてきたら破壊か停止すればいいから防戦には向いている。


事前情報では、ナハト王に対抗しているのは、ナハト王が来る前から地下を調査していた船団の正規軍と教団と言われる武装集団である。


それ以外の地域は小さい勢力が、ナハト王と各勢力とうまく折り合いをつけながらのらりくらりとしているわけだり


「このあたりに詳しい人は?」


「この先に赤のギャングがいる。ラジャって人だ。あの人が知らないなら、無理ですね。」

のらりくらりの勢力である。


「ありがとう。ご馳走様。」


現金を置いて席を立つ。

先程はカードがどうかと聞いていたのに。

バーテンダーは変な顔をした。


先程とは別のバーの奥の扉には、トンネルが続いている。


バーテンダーは立ち去ったのを確認して、スキャンをした結果を確認している。

持ち物で持っていたのは通信端末と小銃、いやスタンガンか、更に猫の形をした機械が写っていた。


再び、トンネルの中を歩いていく。

不思議だった、何もないはずの廃トンネルには、ネオンが、灯りが、灯る。

人通りも、さびれた商店街くらいにはなっている。

現在時刻は昼だが、先ほどのバーも、ネオン街もあまり地下は時間に影響しないのだろう。


煌びやかな世界が広がって、先程までの泥の地面から、線路が見えるほど綺麗な道になっている。

そして、いくつかの店が、屋台が点在している。屋台の無造作な排気も気にならないくらいには換気が効いている。

屋台は揚げ物が多かった。少し、古くなったものを屋台で売るのだろう。

梅田の地下には牧場もあると聞く、淀川もあるし、大阪湾もある、食料は豊富である。


どこからか来た人が屋台の軒先で丸椅子に座って食事をしていた。

油分が多そうであまり食べる気にはなれない。



トンネルで地上の様子はわからないが、ロガーからは淀川は越えたようだ。



最初のエリアは住宅街である。

住宅街はお世辞にも住みやすそうとは言えないが、それは地上での価値観の話だろう。

地下空間にもかかわらず、ちゃんとした家として建っている。

なぜ、そんなことができるのか、理由は簡単で梅田の地下空間の土地はほぼ無限に存在するからである。地上に近い部分が高く取引されるように想像されるが、値段に一番影響するのは治安である。

子供達が遊具で遊んでいる。このエリアは治安が良いのだろう。


空調も電気も安定している。


地下である。先程通過した尼崎の方がよほど住みにくそうだ。


段々と道幅は広くなり、息苦しさはもうない。


次の商業エリアには、

美容院、雑貨店、花屋、自転車屋があった。



「昔より住みやすくなってる。日本人の言葉に住めば都という言葉があったっけ。」


先程から、店、家には赤い旗が立っている。

何かの意味があるのか。


通信端末で調べると、この地域がどこの勢力に所属しているかを表すらしい。

赤は植田源八という男の縄張りのようだ。


ラジャというのは、その部下なのだろう。

情報を買うなら、ラジャだな。

端末に現れたラジャの顔はチンピラというか、非常に醜悪である。


通りすがりの人に、ラジャの居場所を聞く。


このまままっすぐいけば、福島の分岐で、関所を構えているとのことだった。

明らかに危ない男である。


福島に近づくにつれて、さらに地下は綺麗になり、一般的な地下街と遜色ないほどに綺麗になった。


リュックの中から、猫が顔を出す。

「何?窮屈だった。」


猫を泥の中歩かせるわけにはいかないから、リュックに押し込んでいたのだ。

ナーゴ、と笑顔で鳴いた。


「ええ、わかってる、さっきはスキャンされたね。護身用のスタンガンくらいしか持ってないから、大丈夫でしょう。」


地上への道も探したが、どこも封鎖されている。

ナハト王が地上を支配しているので、当然であろう。裏を返せば、地下はまだまだ占領し切れてはいない。

柳生の一団が大阪城を支配しているのも、基盤はそちらに置かないといけない状況なのだろう。


少し歩いて、やっと福島の関所についた。

商業ビルのような入り口が福島の地下の分岐を防いでいた。

周りにはもう焼肉屋や、屋台などの匂いがでるものはない。他の区画とは違い、そのような店は出せないのだろう。

さて、この関所をどのように突破して、母、二代目の談迷子の元に辿り着こうか。


電子使いラームが提示した、逆さ桜の間を探すために、談迷子は梅田への探索を開始した。

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