表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
近未来梅田地下街紀行  作者: 川中太一
古都攻防戦
PR
65/77

神妙剣

【烏丸御池 商業ビル内】

マリナを含めて花達の会のアザレとカモミールが潜入し、動いている。


マリナは宗千佳のバックアップをするように指示を練り直していた。

戦況を見ていたカモミールは何かに気づいていた。

「マリナさん、わたし気づいたかも。」


『ん?』


「宗千佳さんは、マシーン2体、ファントム、兵士約50名を生身で相手にしているのに。」


カモミールは息を呑んで続ける。


「1人も殺していない。」


【烏丸御池 テレビ局 会見会場 第三スタジオ】


克久は、通信に出た。

「そこは危険です、三条通りのバリケードは突破され、樽井隊長は亡くなりました。間違いなく、第三スタジオが敵の目標です。」


「樽井が死んだ?」


天元が横で笑う。

「不安であればそのものの首を差し上げましょう。」


「待て、そのものとは誰のことだ。」


「おっと。嵯峨野のフォローもしないといけないのに、友人の匂いがする。少しだけ席を外すよ。」


天元はどこかへ消えてしまった。

ドンッと爆発音が聞こえた。

一階の樽井のファントムが小さな爆発をして炎上した音だ。

無理やり、三条を暴れ回ったツケだろう。


しかし、柳生宗家の演説は止まらない。


克久は続けて質問する。

「だから誰だ!そのものとは。」


スタジオ正面のドアを宗千佳は蹴り破って侵入する。

宗千佳がここまでテレビ局内を移動できたのは倉間が、一階で追手を防いだからである。


侵入してきた宗千佳に、左右の壁から柳生忍軍が飛びかかるも、左は手刀、右は前蹴りで文字通り一蹴してしまう。


集まったマスコミは慌てながらも、カメラを宗千佳に回していた。

流石に柳生宗家は放送を止めてしまった。

柳生の親衛隊が、宗家に逃げるようにうながしたが、マスコミが見ているその場で小娘1人に柳生宗家が逃げるなど、選択肢ではなかった。


次に宗千佳にかかって行ったのは、柳生二十三衆、序列四位の茂森である。

刀で切り掛かるも、宗千佳はすでに背後におり、首筋に裏拳が刺さる。


柳生宗家はたまらず、口に出す。

「親衛隊、早く取り押さえろ。」


柳生親衛隊、柳生の中でも選りすぐりである。

その親衛隊がどうなったかの結果も、もはや、語るまでもなかった。


「あなたが、柳生宗家が柳生では最強なのでしょう。であれば、かかってきなさい。」


柳生宗家は多くのメディア前で恥をかくことはできない。挑発にのって、自慢の刀を抜いて、宗千佳の前に立ったのだ。


「小娘、何が目的なのだ、こんな人騒がせなことをして。」


「もし、貴方が負けたら、柳生宗家の席を譲りなさい。」

克久はその発言に唖然とする。


最強の剣法家として名高い男である。

仲間達の間では剣聖と言われ、ほとんどの戦いは勝負にすらならなかった。


「馬鹿にして、勝てると思ってるのか。」


克久は不思議と割り込むことはしなかった。

娘が死ぬかもしれない、宗家が死ぬかもしれない最悪の状況なのに。


柳生宗家はもう臨戦態勢に入っている。

子供の時だ。柳生宗家は先代から聞いた。

『技は人から始まり、天に至る。』すなわち、神妙剣と呼ぶ。

先代はそう言って一度だけ、神妙剣を見せてくれた。理外の技である。

この教えをもとに、柳生宗家として様々な人に教えを求めた。貪欲に技を求めた。技を理解した。技を改善した。

技の知識は数千にも及ぶ、その技こそが、人を惹きつけて、人望を産む。

そして、ある程度の歳になったら自分の実力は先代と並んだ気がした。


「現在、神妙剣を理解したのは、できたのは、この柳生宗家のみだ。だから、貴様は勝てんのだ。」


宗千佳は意に介さない。

「技なんてどうでもいい、あなたはその学んだ技を、くだらないことに使っている。だから、技を誤認している・・」


柳生宗家は宗千佳にきりかかる。

その攻撃を宗千佳は全く動きもせず、その場でいなした。


「くだらないだと。」


少しずつファントムからの出火がテレビ局を覆っていく。

マスコミの半分は逃げ出したようだ。


技とは抜け殻である。

燕雀朱美の言葉であった。

「あなたの技は全て、抜け殻を集めただけなのよ。」


鍛錬と稽古があり技が生まれる。

結果として技を人は求めてしまう。しかし、技は結果である。

技を使える人の鍛錬、稽古を真似するのではなく、結果の技を真似をしてしまう。

それを抜け殻と燕雀朱美は評したのだ。


「では、この技、神妙剣も抜け殻というのか!」

柳生宗家は悠然と構えた。

それに対応するように宗千佳は静かに構えをするのだ。


「まさか」


ハッと何かに柳生宗家は気づいた。

宗千佳は静かにタクティカルナイフを振り上げる。


あの日を思い出す。全く違う体格、構え、全てにおいて、全て違ったが、あの日のままだった。

「し、神妙剣か!!」

喉が一気に乾く。それは自身の技が神妙剣ではないということの現れである。


理外を理解すること自体が無意味である。だから、柳生宗家は見誤ったのだ。理外は技に宿るのだ。


会場の脇にいる克久の肩をポンと背中から叩いた。

そして、投げ出された天元の遺体が目の前に現れる。

「少し、時間がかかった。」


そこにいたのは久我天根だった。


「少しでは、ないな。娘を巻き込んでしまった。こんなところまで連れてきて。」


「お前のところの娘、泣くんだぜ、すぐによ。だから、俺は悪くない。最初から天元の情報をお前が出してくれれば、あの娘に会うこともなかった。」

天根の後ろにも何名かの気配がある。恐らく風魔だろう。


「天元は全て監視していたから、な。情報を出したら、私を殺して、柳生の乗っ取りをかけただろう。それにしても今回は迷惑をかけた。」


克久は通信で嵯峨野の戦いを終了してラタトクス工業に投降するように伝えた。

柳生宗家が崩れれば、克久が柳生宗家を引き継いで戦争を終わらせればよい。

天元を排除できたあとは問題なくできるだろう。


「あとは、あの娘次第か。」

本来は宗千佳を止めるべきなのだろう。

しかし、その必要もないのだろう。



二人の戦いに、柳生二十三人衆、序列二位の、成井が割り込んだ。

しかし、成井は、宗千佳に切り掛かるも、雲のように実体をつかめない。


柳生宗家はよくやったと、その隙を見逃さず、宗千佳の腕を掴んだ。

そのまま引っ張り込めば、男女の力の差だ、抵抗はできない。この状況では神妙剣も役にはたつまい。

宗千佳の脇腹に刀を突き立てる。


それを見ていた克久は、あああ、と声にならない悲鳴をあげた。


血が飛び散る。

しかし、体を捻っていた。内臓を傷つけるほどではない。

もう一度、柳生宗家が刺し貫こうとしたが、宗千佳はタクティカルナイフで器用に捌いて、刀を切断した。

思わず、柳生宗家は宗千佳を離してしまう。

これで、柳生宗家の勝機は完全になくなった。


宗千佳は離れ際に柳生宗家の膝を切り付けていた。

もう、柳生宗家は立つことすらままならない。

その場に座り込んでしまった。


「小娘、ありがとう。懐かしい、技を見せてもらった、まさに神業だな。」

その言葉を最後に失神してしまう。


宗千佳は素早く壇上に向かう。

マスコミはカメラを一斉に向けた。

「ただいまの戦いを皆さんは見ていただけましたでしょうか?」


天根、克久は呆然とする。

「なんだ、何かはじめたぞ。」


「柳生の宗家は皆さんが見た通り立ち合いにより、世代交代をしました。これからは私が柳生宗家を務めます。」


マスコミがざわつく。

「実力差は見せました。意義のあるものは手を挙げ、今この場で立ち合いにて是正せよ。」


拍手が聞こえる。倉間であった。

そこかしこから、拍手と歓声が湧き上がった。


「ありがとう。」


宗千佳は、全ての柳生の武装解除を行うことを約束した。

これで、京都の戦いは幕を下ろしたのだ。


やっと話は梅田へと向かうのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ