樽井スキップ
【比叡山 スキー場跡 柳生忍軍】
轟音である。
ラタトクス攻撃からの高高度攻撃が始まった。
四つあるコンテナのうち一つが破壊された。
それでも、ある程度の攻撃はファントムが迎撃して残りのコンテナを守っている。
「ど、どこからだ。ミサイル攻撃だと、こんなものは倫理的なのか。」
樽井がファントムを宗千佳への攻撃へ回していなかったらコンテナは守れただろう。
ファントムの演算装置であるコンテナを破壊されたことで、ファントムのパフォーマンスも低下していく。
樽井はまず、コンテナの位置を移動することを考えた。
近くの山林へ風起にコンテナを引かせて急いで隠すのだ。
「急いで移動しろ、早くしろ。」
技師の一人から、先程仕向けた、ファントムが破壊されたという連絡を受けた。
最強と思っていたファントムが立て続けに破壊されていく。
大量の金銭をかけて復刻したのに。
テストでも圧倒的な性能を見せてくれたのに。
なぜこんなことになっているのだ。
「なぜこんなことに、このままだと功績どころか、殺される。」
大量に押し寄せるラタトクス工業の大津ラインの部隊に対しては、ルート30を上がってくる柳生本隊は対抗できるだろう。むしろ戦力としては有利だろう。
しかし、それまでに自分は間に合わない。殺される。
先程からのラタトクス工業の支援攻撃がいつ次は自分に向くのか。
パルスキャノンは自分をいつ貫くのか不安で何も考えられない。
今度は樽井から宗千佳に通信をかけた。
「交渉は可能か?」
『貴方は殺しすぎましたね。』
「自分の意思で人を殺して喜ぶ人はいません。私も命令を受けたから・・貴方は柳生を裏切るのですか。」
『私は柳生の家に恥じぬ行いをしています。だから、柳生を裏切ったことはありません。ここに来るまで、あなたちがどのようなことをしてきたか、見てきました。木津や、田辺をあれほど破壊して、それほど都会に出たかったのですか、立身をしたかったのですか。』
まさに説教である。
宗千佳は柳生の名を裏切ったのはお前たちである、と逆に本質的な軸の存在を指摘している。
樽井の部下の風起部隊はパニック状態になっている。
もはや、樽井はここからの挽回は不可能であると理解していた。
「われわれの命を救っていただきたい。投降の許可を。」
ファントムのような自動殺人兵器まで持ち出した男が言っていい言葉ではない。
『あなたは無能で残酷です。部下を信じられず、あのような、ただ強力の自動機械に頼るなんていうのは、指揮官の器ではありませんでした。だから投降は許可はできません。』
コンテナの一つが、八雲のパルスキャノンの攻撃に吹き飛ぶ、コンテナは残り一つになり時間をおかずにラタトクス工業からの支援攻撃が次のコンテナに直撃する。
爆炎が起こり、樽井は声にならない悲鳴を出すのだ。
ファントムの動きは活動ギリギリまで低下した。
山林の中から、宗千佳が現れたのだ。
八雲に乗っている、だからその宗千佳の姿はわからない。しかし、その八雲の姿を見ただけでわかるのだ。
昔見た姿と同じだ。
確実に、、決して、、明らかに勝てないと。
樽井は少しだけ沈黙したあとに、ボロボロのマシーンから降りて懇願する。
「もう、これ以上は、部下の命をどうか。」
自分の命を助けてもらうように要請するにはまだ恥があり、抵抗があるのだ。
『大丈夫です。比叡山の山頂は確保しましたが、柳生の大多数は健在ですから、貴方の命は奪いません。』
「え・・・?」
悠然と樽井の横を八雲は歩き、動きが低下したファントムを破壊した。
そして樽井を無視して、ルート30に向かい歩いていくのだ。
『貴方は私からすると有用です。その無能さが、柳生の戦力と指揮をうまく削ってくれる。貴方を始末しても、必ず貴方より優秀な人が柳生忍軍の指揮官になるでしょう。だから、貴方はそのままで、もっともっと柳生の足を引っ張るようにお願いします。』
そのまま八雲はどこかへ消えていった。
樽井は屈辱であった。他人を無能呼ばわりし、組織の不足点を大声で指摘する男である。
生かされた理由が、生かしておいたほうが柳生にとってマイナスであるという。
ここまで失態をしても樽井の性格として、自身の保身をするだろう。
向いていないと認めて後進に立場を譲ることは性格上できないのだ。
無能こそは居座るし、他にもいく部署がないから、残留するものだ。
最も自分が無能あるということを樽井は認められないから、余計にタチが悪いのだ。
【比叡山山頂 花たちの会】
マリナはファントムは動きが停止した三体のファントムを確認して、安堵した。仲間を守れたのだ。
「よかった・・」
負傷したローズの手当てをラタトクス工業に依頼する。
また、はぐれたアザレに関しての捜索もである。
これは無事を後ほど確認できた。
ファントムに襲われた際にマシーンを捨てて、木の上で息を殺していたのだ。この判断が正解だった。
ルルイエはもっと安堵した。
今回こそは絶対に死ぬかと思った。それはむしろ自分の実力がないからだ。
安堵の理由は、マリナがオリヴィエたちと仲良くしている姿を見たからだ。
ルルイエがマリナと同行している理由の一つでもある。
マリナという人間は改造人間であるが、倫理的な一個人であるかを確認し、イグドラシルのマリナに対する制限が、正しいかということを判断することである。
それは問題ないのであろう。
ルルイエから見えているのは、仲間想いの年相応の女の子の姿だった。




