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近未来梅田地下街紀行  作者: 川中太一
古都攻防戦
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雑魚と呼ばないで

【比叡山 スキー場跡 柳生忍軍】


樽井はルート30を自分の功績で攻略できた事に喜んでいる。

このまま、マシーンの大群を比叡山に登らせて、石山ラインを華山道士連と挟撃して、次に大津ラインを裏から食い破るのだ。

そうすれば全てのこの戦いの功績は自分のものである。


大きなコンテナが複数スキー場跡に配置されている。

ドローンシステムの根幹である。

計算量と通信のレイテンシーが安定するための計算ユニットだ。

このコンテナ自体も赤い光を帯びている。

イグドラシルへの違法接続なのだろう。


このスキー場跡には8体の風起と、ファントム2体が配備されている。樽井自体もマシーン雷神に搭乗して指揮をとっている。

万全の構えである。


「このままいけば、ラタトクス工業の部隊は壊滅して、フフ、大阪城を攻めているUDAの部隊や、久我幻魔も全て私が処理してやる。」

もう笑いを隠せないのだ。

それほどファントムの力に信頼を置いていたのである。


柳生の専用暗号回線から通信連絡が入る。

『ファントムにより、ルート30は制圧しました。シルキーの部隊は全滅、頂上のレジスタンスもほぼ抹殺しました。』


樽井は笑みをこぼした。

技師が何かを言っている。少し待てと静止する。


『石山ラインは壊滅、大津ラインも湖西へ敗走を始めました。』


「蹴上の部隊はどうした?」


柳生本隊に勝利をくれてやったのだ、あとで恩に着せてやると息巻く。

『蹴上?蹴上ってどこだ。ああ蹴上の部隊はクソして寝てます。』


技師がまた何か言っている。

「は?クソと言ったか?」


樽井は通信の相手先を確認した。

通信の先は、柳生宗千佳と表示されている。


「宗、、千佳?」


轟音が鳴り、ファントム制御用のコンテナが攻撃を受けたが、ファントムの一体が尻尾のブレイドで攻撃を受け流していた。


『こら!もっと上品にしなさい。』

通信の先から誰かの声が何か聞こえてくる。


【比叡山 柳生宗千佳サイド】


八雲のパルスキャノンの銃身を冷やしている。

ここでいうパルスキャノンはケースレス弾を射出するものである。


八雲は複座で宗千佳とウサギが操作していて、フランが戦闘倫理アドバイザーとしてフォローしている。

「ウサギさん!挑発するにしてももう少し丁寧にしてよ。私の名前が出てるのよ。」


技師と樽井の気がそれてコンテナの防御が緩くなった。そこをついたのだ。


ファントムの動作への影響をフランは解説する。

「グリッドコンピューティングですね、複数のコンテナでファントムの動きを制御しています、目視できる4つを破壊しないと。」


「ウサギさん挑発を続けて。敵の指揮が鈍るように。」


「了解」


フランは静かに二人の考えを見守っていた。


【比叡山 樽井サイド】


「なんだ、何が起きた。」

コンテナが攻撃されて、動揺が走る。

技師が先ほどから、何かを言っている。


ファントムが二体破壊されたと。

シルキーの部隊が?二体も破壊した?ありえない。

樽井は混乱を強めている。技師達は破壊されたコンテナを切り離して、残りのコンテナでファントムの制御を急ぐ。


それにしても、宗千佳か。

柳生克久の娘。分家筋である。ラタトクス工業の戦術指南として若くして転戦を繰り返していると聞いた。

樽井は本家筋である。

しかし、柳生宗家からはこのような士とも思えない忍者のような暗い仕事を押し付けられた。

柳生宗千佳とは何かの際に出会ったが、とても綺麗な目をしていた。

異性という意味ではない、非常に純粋で疑いを知らない目だった。

比べて自分の目は、自分の日々の目標は柳生の、士の理念からは遠ざかり、正攻法ではない世界を任されたのだ。

柳生本家として生を受けたのに、恥のような仕事を渡されたのだ。

それはすごく不快に感じる。


「おい、お前は誰だ?」


『柳生宗千佳です。』

どう聞いても柳生宗千佳ではない。変に高い声だった。


「なんだって?」


『戦闘の集団が政治なんてできるわけねぇだろ、馬鹿かっつってんだ。』


「おい、おまえは誰だ?」

樽井は先ほどの攻撃が飛んできた場所に一体ファントムを向かわせるように指示をした。

樽井は通信を切らずにマシーンに搭乗した。


『どうも宗千佳です。』


「違うことは流石にわかる。馬鹿にしてんのか!」


『失礼だね。雑魚のあなたを馬鹿にしてなんの意味があるんだよ。』


「雑魚だとぉ。」

樽井は血管がブチギレそうになる。

自尊心を高めることで生きてきた男である。

通信を切ってしまう。


次は樽井のマシーンに着弾し、マシーンの腕が吹き飛ぶ。

樽井は初めて死の恐怖を感じた。ファントムはコンテナの警戒で手一杯なのだ。


素人である。大きなコンテナを守ることを意識すればいいのに、わざわざ大将が恐怖のためか、自ら戦うためか、マシーンに乗り込んで狙われやすくしたのだ。


他のファントムの守りをこちらに回せ。

樽井は慌てて、比叡山のファントムを呼び戻すのだ。


【比叡山 柳生宗千佳サイド】


ウサギは宗千佳に状況を伝える。

「ファントムが一体こっちにくるよ。」


「フランさん、この場合の最適な考えは?」


「今更ですが、ファントムは強力です。柳生忍軍の弱点はあの隊長の樽井という人ですから、樽井を狙い続けて、残りのファントムの警戒をコンテナから散らしてください。向かってくるファントムには警戒するためにここから山頂付近へ移動しましょう。」


フランが言う意味は、向かってくるファントムが八雲を見失えば単純に戦力を削ったことになるということだ。

宗千佳は言われた通り、山頂付近へ移動を開始する。


フランは続けて提案する。

「ラタトクス工業に砲撃または、コンテナへのピンポイントのミサイル攻撃を要請してもいいでしょうか。」


「構わないけど、ミサイル攻撃は倫理的なの?」


「対象が自動殺人兵器なら、倫理的でしょうね。」

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