ドローン ファントム
【近江神宮 ラタトクス工業 前線基地】
ルルイエはマシーン、ハヌマンを起動する、
ハヌマンは猿ようなフォルムで、腕の爪での攻撃を主とする。
このマシーンは元々、花の会がラタトクス工業に要求していたマシーンで整備中のもので、ラタトクスかき集めてきたマシーンの一つである。
狭いコクピットに無理やり乗り込んだ小さなマリナが指示を出し、その動きをルルイエがトレースする。
「そう、すごく順調。」
ルルイエは指揮系統を比叡山撤退まではミハイルに移譲した。
マシーンの操縦なんてやったことはないし、そもそもこの作戦自体、宗千佳が樽井を撃破できる事が前提で、嵯峨野、三千院の攻撃が成功することも前提。
といった不安定の塊である。
あまりにも下手な運転をしながら、前線に突入していくのは誰が見ても無謀である。
何体ものラタトクス工業のマシーンが比叡山に入って行った。
夜はまだ深く、暗闇をますばかりだ。
寒い外気はより、人の命を明るく照らしていた。
ルルイエはイグドラシルに接続する。
「戦闘倫理アドバイザーのライムです。本日はお願いします。」
「よろしく、作戦は送信済みだ。比叡山に上がって戦況を見定めた後に嵯峨野、大原の仲間と連携して烏丸御池の柳生本体を制圧する。」
作戦自体は問題なく承認される。
「その子は?」
マリナがコクピットにいる、戦争では避難民を乗せることはたまにはあるが、ライムからは幼く見えた。
「ボディガードだ、頼りになるんだ。」
ライムはそれを冗談と受け取って少しだけ笑った。
「避難民として申請しておきますね。できるだけ直接の戦闘は避けましょう。」
「それは助かる。」
「では、戦闘哲学の宣誓をお願いします。」
イグドラシル接続時には戦闘哲学に沿った戦術を戦闘倫理アドバイザーが提供する。
そのためのものだ。
「哲学、哲学ねぇ。『査定を気にした戦いを』で頼む。」
「なんですか、それは。戦いの神ホーラは非倫理的として弾いてきましたよ。」
戦いは利己的であってはいけない。
他人の目の評価を気にする戦いは非倫理的な行動を起こすのである。
「うーん、どうやったら通るのか。」
横からマリナが割り込む。
ルルイエがもたもたしているからイラついたのだ。
「『私マリナを守るための戦闘を』で頼みます。」
「え?本人以外が宣誓なんて、あれ?ホーラは戦いを認めました。」
イグドラシルコネクトとモニタに表示され、ハヌマンが少し軽くなったように感じた。
「じゃ、私を守ってね、ルルイエさん。」
「不安だ・・・」
とはいえ、ルルイエは自分が指揮をするよりも、宗千佳に任せてしまった方が確実だし、気楽だと考えている。
近江神宮から、比叡山山頂までそれほど時間はかからないだろう。
【比叡山 ルート30】
多数の風起を都子のマシーンタイタンは破壊している。
花達の会が圧力を弱めてくれたから持ち堪えられている。
「心拍数が高くなっています、少し休憩しないと。」
「そうね。少し敵の攻撃も落ち着いたから。」
その時である、樽井が放った5体のうちの一体の四つ足のファントムが現れた。
マシーンより小型である。尻尾にブレードがついている。
生物らしい動きではない、定期的に静止しては都子を伺っている。
「ナミさん、あれは何かわかる?」
「照合できました、プロジェクトゴーストシリーズ、ファントムです。違法の無人機です。全てラタトクス工業の治安維持部隊が破棄させていたはずなのに。人間では、一対一ではとて勝てません。」
休憩で飲もうとしていた水を一気に飲み干した。
「面白いじゃないの。」
「ダメです、戦っては。」
その言葉を聞き終わる前にファントムは尻尾のブレードを展開し、都子のマシーンタイタンの首を弾き飛ばした。頭のセンサー類を破壊したのだ。
ナミは動揺しているが、都子は眉ひとつ動かさない。
ファントムは距離を取り、先ほどと全く同じ間合いに移る。
都子は木の裏に咄嗟に隠れる。
「機械風情に調子こかせてたまるか。」
「ダメです、勝てません。遮蔽物を盾にするのもおすすめしません。知覚できない角度から攻撃されます。ファントムの攻撃はセオリー通りです、つぎはコクピットに攻撃が来ます。」
「コクピットね。」
さぁ、来いと、構えを取った。
薙刀の流派の構えである。
矢止の構えという。半身に構えて、攻撃範囲を絞った。
ファントムは横からゆっくりと回り込み、都子の前面に移動する。
再びファントムが飛びかかった時には、都子のマシーン重量級のタイタンが激しく吹き飛ぶ。
そして、タイタンはうつ伏せに倒れて機能停止した。
ファントムは何度かマシーンの周りを周り、完全に破壊されていることを確認し、
そして、どこかへ行ってしまった。
【柳生忍軍】
樽井はドローンファントムがルート30に穴を開けた報告を受けた。
「やっと、本隊を比叡山に上げることができる。これで、ラタトクス工業は終わりだな。」
柳生が比叡山頂上を制圧すると、ラタトクス工業の部隊はほぼ包囲されることになる。
樽井が柳生としては初めて敵の大部隊を撃退したことになるのだ。
樽井は口元が緩んでいる。




