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近未来梅田地下街紀行  作者: 川中太一
古都攻防戦
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樽井の誤算

戦闘が無人兵器に支配されていた頃があった。

ある意味倫理的である。人死はないから、戦後補償の心配はない、人に比べて教育コストが少なくて済む。

しかし、ラタトクス工業は無人兵器を非倫理的とした。

理由は人間同士の決闘にこそ、闘いの本懐がある。

戦闘分野について、戦闘は人間としてのくらいが勝ってこそ、戦闘自体の意味もあり、人類の発展に寄与できるという考えである。

でなければそもそも戦争行為そのものがは倫理的で片付けられてしまう。

戦闘行為自体は弱者が立場的強者に対抗しうる手段の一つという考え方をもつという見解もできるということだ。


この理念により、無人兵器により拡大を続けた戦火は大きく縮小され、人間同士の文字通り身の削りあいになった。


電子使いラームが使っていたドローンは戦闘レベルでの接続ではないが、電子使いの力で無理やり戦闘レベルで戦えるようにしたものだ。

AIの不足と、各ドローン間の連携を能力でカバーしている。


ラタトクス工業はイグドラシルからの排除という枷を元にこのような兵器を縛ってきた。

それがなくなると、人間の作ったルールである。人間が守るとは限らない。


「こんなに古い兵器でも使うときが来るとはな。」

樽井のマシーンの後方のコンテナの中から、赤い光を放つ陸上ドローンが起動する。


何名かの柳生忍軍のオペレーターが、AIに対してフィードバックを行う。

戦闘倫理アドバイザーとの調整は面倒だったが、違法接続で不要になるとそれはそれで手間が増えるのである。

全軍の2割はオペレーターとなった。間接部門のコストというのは軽視されがちで試算は甘い。


樽井は傭兵としては柳生の中でも実績の多い男だから、見積もりの甘さに対しての不満は多い。

「そもそも、柳生忍軍ではなく全体の指揮を任せてくれれば、中部までは柳生の支配圏になっていたというのに。」


こういう自信がある男のする作戦は他人を尊重しないから、碌な結果にはならない。


樽井に通信が入った。浜崎という男。

柳生二十三人集の一人である。

『樽井さんの考え通りになって、蹴上からの大津への攻撃がはじまりました。』


ラタトクス工業は戦力を分散している。

理由はUDA、久我幻魔のチーム、と広範囲に戦闘範囲を広げている柳生が逆に攻撃してくると想像していなかったからだ。

樽井はここを逆手にとって、華山道士連の離反から、石山ラインの裏をつかせる工作を行った。


そうすれば蹴上の柳生の部隊がいかに慎重でも、大津ライン攻略に動くからである。


比叡山のルート30を落とせないのが誤算である。

自ら出張って攻略できれば、琵琶湖側にマシーンを送り込むことができ全包囲が可能なのだ。

この全体の戦局を、杏野都子一人が担っていたのは驚異的であるとしか言えない。


杏野都子は久我流に匹敵するほどには異常なのだ。

それを理解した上で樽井はドローン、ファントムを放った。


【花達の会】


花達の会の現在のリーダーのオリヴィエは作戦を消化していく。

隊の10名に損失はない。坂本からルート30近辺に入り、柳生忍軍を排除していく。


見事な連携である。柳生忍軍とは練度が違いすぎた。


副隊長のカモミールは少し休息を取ることを提案した。

順調すぎるから、深入りしすぎているという判断でもある。

今回の作戦は、比叡山、三千院、嵯峨野の三箇所の確保である。

先行しすぎると敵の多数がこちらに向く可能性が高い。


嵯峨野は魔法使いビリーとSASが出張っているから、主戦場はそちらになる予定なのだ。


休息と言っても戦地であるから、シルキーのパイロットの交代と、弾薬や装備の確認、栄養の摂取といった準備である。


哨戒中のアザレより、カモミールが敵の襲撃の連絡を受けた。

敵は木から木を足場で飛びながら獣のようなサイズである。

赤い発光も確認できる。

『まずい、まずいよ、この動きはファントムだ。』


イグドラシルからの倫理から切り離されたらこのような兵器が現れる事は予測すべきであった。


「オリヴィエ、ファントムが投入されたって。」

すでにアザレからの通信は途切れている。


ファントムはトラをモチーフにしている。遠い昔の南アフリカの内戦で実験投入された記録がある。

山岳地帯、深い森林、ゲリラの戦術に手を焼いていた体制側が数体放ち、数千はいるゲリラを短期間で皆殺しにしたことで知られる。


「対ドローン戦術なんて戦闘教義にももうなくなってるのに。」


「オリヴィエ落ち着いて、とにかく敵の数を把握しないと。ファントム同士が連携しているなら、森林地帯にいるのはまずい。」


「アザレの救助は?」


「ファントムの設定が人道的であることを願って置いていくしかない。このままでは全滅する。」


人間よりも優れた能力を持つのが花達の会である。


ファントムが一体、ローズにとびかかる、ローズは押し倒されて腹に裂傷を受ける。

声にならない声をあげた。


オリヴィエはシルキーの機銃を使い、ローズにのしかかったファントムに弾丸を集中させる。

ファントムは被弾を認識すると、距離を取り獣のように花達の会を狙っているようだ。

シルキーの背面にローズを収容し、花達の会は後退をはじめる。


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